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セツナワースト  作者: レッドキサラギ
第四話 喪う者
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003

「さて、行動方針としてはこれからどうしましょうか?」


「うーん……それが問題だよな……」


 新プロドシアとして、エフティシア占拠を決起したものの、具体的な作戦はまったく思いついていない。

 ただでさえ制限されていた行動が、人数が減った事によって更に制限されてしまう。それに、仙達さんの反逆が判明してしまった今、刑務官は他にも反逆者がいないか警戒している頃合だろう。慎重な策が求められる。


「い、今まで通り情報収集と人数集めから始めるというのは……」


「いや……それでは今までと変わらない。もっと違う作戦が良いと思うんです」


「もっと違う作戦……ですか」


 落葉さんは頭を抱える。

 やはり、今までと同じでは進歩が無い。次の一歩を踏み出すには、今までにやった事のない事をやらなければならない。

 発想の転換が必要だ。


「違うところと言われますと……やはり反逆の最もとした理由ですかね。人を集める上でも、大切な理由だと思われます」


「やはりそうだよな……あっ!」


 貴船の意見を聞いて、僕は声をあげてしまう。

 仙達さんの件があったから、すっかり忘れてしまっていた。


「ど、どうしたんですか喜多川さん?」


 隣にいた落葉さんは、背筋を伸ばして驚く。

 

「あっすいません……えっと、仙達さんのロッカーだよ!」


「せ、仙達さんのロッカーがどうしたんですか?」


「仙達さんは僕達に内緒で何かを探っていたんだ。おそらく、このエフティシアの極秘事項だと思うんだけど……その手掛かりが仙達さんのロッカーの中に無いかなと思ってさ」


「なるほど……でも刹那さん、その可能性の根拠はあるんですか?」


「正直言うところ無い……だが何かを仙達さんは残していると思うんだ……まあ、これも僕の直感でしかないんだけど」


 根拠も証拠も無い。しかし、だからこそ調べたい。

 仙達さんの事だ……いざという時の為に必ず何かを残しているはずだ。僕達を導いてくれる、何かを。


「……いいんじゃない?アイツの直感を信じてみてもさ」


 最初に答えたのは、糸島だった。

 

「そうですね。何も行動を起こさないよりかはずっとマシですよね」


「じゃ、じゃあわたしも賛成します!正直わたし……何も思いつきませんし……あはは……」


 糸島の一言で、みんなが賛同する。

 とりあえず、糸島に感謝だな。


「そうか……じゃあみんなが賛同したところで探してみるか!えっと、落葉さんロッカーの鍵はありますか?」


「あっ、えっと確かサブキーがあったと思うんですが……あった!」


 落葉さんが作業着のポケットから取り出したのは、鍵の大量についた、そのままの意味でのキーホルダーだった。


「量が多いな……探せるだろうか……」


「えっと……多分」


 とりあえず、僕はロッカーへと向かい、大量の鍵をただひたすら挿しては回す作業へと取り掛かる。

 

「これも違うか……これも……違うのか」


「むう……ちょっと貸してみなさい!」


 すると、僕の手際の悪さに腹が立ったのか、糸島が僕の手から鍵を奪い取る。


「こういうのはね、鍵と鍵穴を見れば大抵は分かるのよ」


「へえ……プロだな」


「プロだもの」


「プロなのか!」


「スラム街にいた時は色々やってたからね。まあ……色々とね」


「確信犯じゃないか……」


 スラムで何をしていたのか……は聞かないことにしよう。黒い情報が雪崩の如く開示されそうで何だか恐い。


「……あっ、開いたよ」


 ロッカーから鍵の開く音がし、糸島は扉を開く。

 仙達さんのロッカーの中には、一冊のメモ帳だけが残されていた。


「普通のメモ帳だね……」


「糸島、それ貸してくれないか」


「え?あっ、うん」


 糸島は僕にメモ帳を手渡し、僕はそれを開く。

 すると、そのメモ帳の中には地図のような物と、メモのような物が残されていた。


「地下施設にある……研究所?そんな物この島にあったか?」


「僕達の知っている限りは分かりませんね……あっ、地図持ってきますね」


 貴船はフロアへ地図を取りに行き、戻ってくる。

 この地図、どうやら仙達さんと坂田と池端さんが作った物らしい。このエフティシアの全ての施設、地形が細かく描かれている。

 もちろん、本部の地下施設もそこに含まれている。


「……無いな。研究所なんて」


「新設された施設では……」


「し、新設施設だとしても……記載されていると思うんですが……随時その地図は更新されてますから」


 貴船の指摘に、落葉さんは否定する。

 じゃあこの研究所っていうのは一体何なんだろう。


「そういえばメモに地図がありましたよね?見せてくれませんか?」


「あ……うん」


 僕は持っているメモ帳を貴船に渡す。

 

「この地図を見る限り……地下一階の下にありそうですね」


「となると……本部にあるという事になるのか?」


「そうなりますね。あくまで僕の仮説ですが、エフティシアの資金やエネルギー源はもしかしたらその研究所で使われていると考えられます。けれど……そんな秘密裏に何を研究してるのか……」


 貴船は仮説を淡々と語るが、頷ける部分は多々ある。

 今まで収容者を使って十分な資金は稼げているはず。それに、この島にはエキサホルムが大量に埋蔵されている。エネルギー源も十分だ。

 それを使うとなると、かなりレベルの高い研究が出来そうだ。でも、こんな監獄の島で一体何を研究するのだろうか?


「そういえば……聞いた事あるわ」


 すると、突如糸島が呟く。


「ある監獄に、巨大な兵器工場があるって……政府の管轄化にある兵器工場が」


「政府……ペンタゴンのか」


「うん……」

 

 ペンタゴンの兵器工場……気になるな。


「その武器工場を調査するっていうのはどうでしょう?エフティシアの機密事項でもありますし、ペンタゴンが絡んでいるとなると尚更握っておいて損はしない情報かと思うんですが……」


「そうだな……よし、やろう」


 危険なミッションである事は重々承知している。だが、ここで立ち止まる訳にはいかない。

 エフティシアの影。必ず僕達で見つけるんだ。

 仙達の成しえなかった事を、僕達で。 

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