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セツナワースト  作者: レッドキサラギ
第四話 喪う者
10/11

002

「せ、仙達さんが亡くなるだなんて……」


 落葉さんはショックの余り、涙を流しながら俯く。

 僕はメンバーに緊急招集をかけ、糸島を中心に仙達さんの処刑についての説明をした。もちろん、ショックを受けている者が多数だが、余りにも緊急だった為か、中には半信半疑の者もいる。


「仙達さんが……死体は確認したのですか?」


 坂田は糸島に詮索するが、彼女は首を横に振る。


「遺体の確認は今のところ出来ていないわ……確認出来たのは収容者リストでのみ……」


「……証拠としては十分ですが、しかし断定は出来ないと?」


「そう……なるわね」


「けれど、収容者リストにそう記載されてあるのならばほぼ確実だと僕は思うんですが……」


 そう言って、二人の会話に入ってきたのは貴船だった。

 確か、貴船が本部のメインコンピュータに潜入して、収容者リストを確認したんだったな。


「ふむ……ではやはり死亡の説が濃厚になってきますね……」


 坂田は腕組みをしたまま、目を閉じる。

 信じたくない気持ちは十分に分かるが、現状、仙達さんが処刑された状況が出来上がってしまっている。

 正直残念だが、こればかりは変わりようの無い事実。打開しようがない。


「……全員潰してやる……わたしが潰してやる!!」


 すると、池端さんは出口のある暖炉の方へと振り返る。

 悲しみの余り逆上したのだろう。このままでは本当に一人で本部に特攻しかねない。

 だが、そんな池端さんの肩を坂田が掴み、それを制止する。


「池端さん、あなたの気持ちは分かりますが、こんな時こそ冷静に対処しなければなりません。あなたが一人で突っ込んだところで本部を制圧出来るとは到底思えませんし、何よりそんな事をしたところで、仙達さんは戻ってきませんよ」


「……クソッ!じゃあどうしろって言うんだよ!」


「それは……」


 坂田は途中で言葉を詰まらせる。

 どうしろと言われても、どうしようもない。今のところ、打開策は皆無に等しいのだから。


「……とにかく、今の状態では僕達に勝機はありません。十分な戦力を手に入れる為には、それ相応のキッカケが必要なんです」


「……仙達が処刑されたからって理由じゃ駄目なのかよ!」


「それでは他の人間を集めるまでの理由にはなりません。もっと、万人に通用する理由が無ければならないんです」


 坂田は慎重な意見で、池端さんを諭す。

 だが、池端さんは坂田の手を振り払い、歩き出す。


「……だったらわたしが見つけてやるよ……その万人に通用する理由って奴を」


 そう言って、池端さんは暖炉を登っていく。

 僕はそれを、止めることが出来なかった。僕にそれを止める資格があったのか、分からなかったからだ。

 

「……まったく、これだからすぐ頭に血が上る人は困りますね」


 坂田はやれやれと首を横に振ってみせる。

 しかし、これでまた一人戦力を失ったことになるのか……泣きっ面に蜂といった状況だな。


「じゃあ……今後は五人で仙達さんの調査をする事になるな……」


 僕は大きな溜息を吐き、頭を悩ませる。だが。


「五人?ああ、僕も含まれているんですか?」


 すると、横から突っ込んできたのは坂田だった。


「せっかくなのですが、僕も抜けさせて貰います」

 

「えっ?」


 坂田の唐突な発言に、僕は呆然としてしまう。


「抜けるって……プロドシアをか?」


「ええ。僕が入ったのは仙達さんが率いていたプロドシアであって、今のプロドシアには全く興味がありません。それに、仙達さんがいなくなった以上、活動は不可能かと」


「……それは遠回しに僕がプロドシアを率いる器じゃないって言いたいのか」


「そうは言ってません。しかし、あなたのお陰で僕はこの監獄に来る事になったんだ。監獄にぶち込んだ相手を信用する人間なんてそうそういませんよ。僕だってよく出来た人間ではないんですから」


「…………」


 坂田の言っている事に、間違いは無い。

 坂田が僕を信用出来ない理由も頷けるし、プロドシアを率いる器かと言われると、それを肯定する事が出来ない。

 悔しくて、思わず歯を食いしばる。


「それに……彼女を野放しにしておくと何を仕出かすか分かりませんからね。だから頭にすぐ血が上る人は嫌いなんです」


「えっ……お前……」


「あなた達は好きに活動をすればいい。僕はその間あの人の説得でもしてきます。まあ……腐れ縁という奴ですよ」


 坂田は鼻で笑い、その言葉を残して暖炉を登って行く。

 僕は今まで坂田の事を勘違いしていたのかもしれない。正直な話、冷酷な人間だとばかり思っていた。

 しかし、それは一方的な僕の偏見だった。おそらくあの時の坂田と、今の坂田は違う。仙達さんの元で、坂田は何かを教わったのだろう。

 僕は僕を絶望する。余りにも、人を見る目が無い事に。余りにも、自分が未熟な事に。


「でも……どうしましょう……これで四人だけになってしまいましたね」


 落葉さんは作業着の袖で涙を拭きながら呟く。

 七人の時ですらまとまった行動がとれなかったというのに、四人だけでは更に行動が制限されてしまう。


「解散……なんですかね……」


「…………」


 何とも言えない。この場合だと、解散する線が本来濃厚なのかもしれないが、それでは仙達さんが今日まで築き上げてきた物が全て白紙と化してしまう。

 そんなの、あんまりではないか。


「……僕は刹那さんに着いて行きますよ。ここまで来て、離れる訳にはいきませんからね」


 貴船は僕の方を向きながら、首を縦に振る。


「あ……あたしもほら……アンタには幾つも貸しがあるからさ……今更抜け出す訳にはいかないでしょ」


 糸島はそっぽを向きながら、腕組みをする。

 コイツら……僕なんかの為に。


「じゃ……じゃあわたしも……喜多川さんに着いていきます!い、一応副リーダーですので、組織を守る役目がわたしにもあると思うから……」


 落葉さんは最初は勢いがあったものの、後半は口をもごつかせる。


「……そうだよな。僕も変わらないと……」


 今まで僕は、人が作ってくれた道をただひたすら辿ってきた。セツナドライブの時だって、記憶を失くした時だって、そして、今だって。

 だから、次は僕が道を作っていく番だ。今までの経験、知識、技術、その全てを生かして。


「……よし!今日から新プロドシアの結成だ!!」


 いつまでも嘆いていたって、何も始まらない。

 今こそ、立ち上がる時なんだ。  


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