(8) 外泊・中編
古世が外泊した日のお昼過ぎ。
広人はプレイルームで、同じ病室の翔君と弥生ちゃんとトランプをしていた。
「お兄ちゃん、次お兄ちゃんの番だよ?」
トランプを持ったまま何かを考え込んでいる様子の広人を心配してか、翔君が声をかける。
「え・・・あ、うん」
「どうしたの?」
「広人お兄ちゃんはねー、古世お姉ちゃんの事が心配で心配で仕方ないのv」
いつからそこにいたのだろうか、酒向さんが口を挟んできた。
「そーなんだ」
弥生ちゃんが言う。
「ちょ、ちょっと・・・酒向さん何を」
「本音でしょっvさっきから焦点定まってないよ?」
確かに、出会って間もない女の子と楽しく話せていて、気になってはいた。
心配もしている・・・。
「心配・・・です」
「やっぱり。でも大丈夫!古世ちゃんは元気で帰ってくるから」
「はい」
その頃古世は、母と一緒に電車に揺られていた。
古世の家は病院の最寄駅から約20分ほどで揺られたところにある。
「古世、ごめんね。ちっともお見舞いいけなくて」
母親が申し訳なさそうに言うと、古世は優しく微笑んだ。
「いいよ。私も子供じゃないんだから」
「でも小さい子ばかりなんでしょ?」
「大丈夫だよ。私の事をお姉ちゃんって呼んでくれるし、何より」
古世は窓の外を見て、少し笑った。
「何より今は、同い年の子が一緒だから毎日楽しい!」
「そうなの!?良かったじゃない」
「うん。私の大切な友達なんだぁ」
「男の子?女の子?」
「男の子だよ。ヒロは優しいし、いい人だよ」
「そう。だったら頑張らなきゃ、ね?」
古世が不思議そうに母の顔を見る。
「何を?」
「古世も女の子なんだから、恋の一つでも・・・」
「やだぁ、そんなんじゃないって」
「でも、顔真っ赤だよ?」
「まぢ?」
「マジよ。大マジ!」
古世は慌てて俯いた。
「ヒロは本当に私の事良くしてくれるし・・・、一緒に話してると楽しいし」
「で、どうなの?」
「分かんないよ・・・。今まで友達すらいなかったのにどう思うかなんて・・・」
「でも、気になるんでしょ?」
「・・・うん」
「”誰かの事が気になる”っていう気持ちは大事なことだからね。自分にウソついちゃダメだよ?」
「うん」
私には友達がいませんでした・・・。
でも最近、気になる友達がいます。
その人は優しくて、胸の傷を見ても”友達”と言ってくれた。
私はきっと、
ヒロの事が好きなんだと思います。