(6) 遊戯場
手を引かれ、プレイルームに着いた広人は窓の外を見た。
「星ってこんな綺麗だったっけ・・・」
窓の外には満天の星空と、天の川が流れていた。
古世もその横に並び、同じように窓の外を一心に見つめている。
「夏は天の川があるからキレイだけど、冬は星空全体がキレイなんだよ」
「全体?」
「ん。何ていうのかな・・・、冬は空が澄み切ってるって言うのかな」
「冬の空って・・・、何で知ってるの?星が好きなの?」
すると古世はくるりと星空に背を向け、しゃがみこんで壁に背を預けた。
そして寂しそうな表情で言った。
「入院生活が長かったらいつの空でも見れるからさ・・・」
広人は、頭をガンと殴られた気分だった。
「・・・いつから、入院してる・・・?」
「小学校の時から入退院繰り返してるんだぁ。すごいっしょ」
古世が広人の方を見上げる。
広人は、視線を感じながらも古世の方を向くことができなかった。
「知らなかった。ゴメン・・・」
「昨日知り合ったばっかなんだから、知らなくて当然だよ」
「そんなに、大変な病気なの?」
古世はうつむいた。
表情が読み取れない。
「よく分かんない。でもね、今まで何回も手術してるんだ」
広人は古世の隣に同じようにしゃがみこんだ。
「大変じゃん」
「もう慣れっこだから・・・。」
古世は、おもむろにパジャマのボタンをはずし始めた。
「ちょ、ちょっと何してんだよ!」
「何か勘違いしてるよ」
古世は全てのボタンをはずし、広人のほうに体を向けた。
「・・・!!」
言葉に、ならなかった。
パジャマの奥、古世の胸に数本の手術痕があるのが見えた。
古い傷、まだ新しそうな傷、痛々しかった・・・。
「この傷、一生残るんだって・・・」
「もういいよ・・・。もういいからボタンはめろって」
それ以上見ていたくなかった。
自分も、痛かったから・・・。
「ちょっと待った。じゃ、学校は・・・?」
「こんなんじゃ行けないよ。友達もできないし。寂しかった・・・」
ずっとずっと寂しかったっ!
そう言って古世は膝を立て、顔をうずめて・・・多分泣いていた。
「友達なら、ここにいるじゃない」
なんとフォローしていいのか分からず、今の広人にはそう言ってあげるのが、精一杯だった。
古世は顔をうずめたままだったが、はっきりとこう言った。
『ありがとう』