(4) トモダチ
「古世っちの病院めぐりツアー!行ってみよ〜!!」
病院内にはさまざまな施設があり、古世はまるで子供のようにはしゃぎながら案内していった。
長期入院時のための理髪店や美容室、あまりにも品揃えが薄い売店、医師や看護士の聖地である食堂まであった。
中でも一番驚いたのは、小児科の入り口にプレイルームという遊び場があること・・・。
病院内をトコトコ歩き始めて1時間くらい経っただろうか。
突然古世が口を開いた。
「・・・ヒロ」
振り返った顔は笑顔で満ち溢れていた。
「ねえ、これからヒロって呼んでいい?」
「いきなり何だよ」
「だってさ、かしわばらって長いんだもん。舌噛みそう・・・」
もちろん呼んでもらえるのは嬉しい。でも抵抗もあった・・・。
僕には、友達がいなかった
だからもちろん、愛称と言えるものが無かった
呼ばれたとしても”カシワバラクン”
男からも滅多に呼ばれないのに、
女の子から”ヒロ”
「何でそう呼びたいの?」
「同じ病室の仲間・・・?違うな・・・」
そして古世は、はっきり言った。
「友達だから!」
トモダチ・・・
とてもいい響きだった。
「ありがとう」
「いえいえ、どーいたしまして。その代わり、私の事も名前で呼んでよ?」
「それはちょっと・・・」
「だめ!友達だったらそのくらいして当然でしょ」
そう言うと、古世は広人の肩をぐっとつかみ、そのぱっちりした瞳で見つめられた。
「さ、言ってみ」
「・・・・・・古・・・世」
「ぎこちないぞ!」
「・・・古世・・」
「んvよくできました!」
古世は微笑みかけてきた。
こうして、広人にとって実質初めての女友達ができたのだった。