志月 第1
【村本志月】
キーンコーン・・・・・・・・
お昼休みだと告げる中学校のチャイム音。
そのチャイム音と同時に沢山の人が席を立つ。
皆がバラバラの方向へと歩いていく。
校庭に行く人、中庭に行く人、「暇つぶしにちょうどいいから」と保健室へと向かう人に、図書室へと向かう人。
それぞれが違う場所へ向かっている。
でも、私だけは違う。
私は皆がいかない、裏庭へと足を運んだ。
大きな木で囲まれている場所。
とても静かでのんびりとできる。
教室を出て、廊下を右折。
右折したらそのまままっすぐ進んで、小さな古びた鉄製のドアを開ける。
キィィ…と、金切り声のような大きな音をたて、ゆっくりと開くドア。
ドアの向こうからそよそよと心地よい風が自分の頬を撫でる。
上履きのまま、センセーに内緒で外へと出る。
緑色が太陽に輝いている。
ふと、少し遠くの木の幹のそばに人影があることに気が付いた。
…誰…?
この場所に自分以外の人がいることは珍しい。
誰か気になる…
ゆっくりと近づいて、ようやく幹まで近づいた。
男子…!?
眠っている…見覚えのある顔。
自分と同じクラスの人…だよね…えっと…名前は確か…
思い出そうとするのだが、なかなか思い出せない。
同じクラスなのはいいが、全く興味がない人間だから、覚えることもなかったのだ。
「えっと…………」
自分がえっと…といった瞬間、眠っていたはずの男子が目を開けた。
「…?あれ、お前、確か、同じクラスの…」
自分のことを知っている!
話したことは…1度もないはずなのに…
「ぁ…、村本…志月…デス。」
ぎこちなくなってしまった…
「そうだ!それそれ!!村本志月な!!…同じクラスだろ??」
「えっ、あ、う…うん。」
それそれって…人をものみたいに…
私、村本志月は男子が得意な方ではない。
むしろ苦手なのだ。
「俺は、天野。天野空。」
天野空…思い出したかも。
この人は…男子の中でも一番嫌いだ…
嫌い…ではない。イメージが…怖いというイメージが私の脳裏に焼き付いてしまっている。
その理由…それは…
「うっし、んじゃ、俺はそろそろ行くな。」
「ぁ…天野君…」
「んぁ?」
思い切って…言っちゃえ!!!
「背…高いね…」
そう、私が天野空を怖がっている理由は身長だ。
「背?まあな、179㌢あっからな」
「ひ…ひゃくななじゅっっ!?」
179㌢…私と約20センチ差…?
「そーいえば…村田さんはちっせえよな、何センチだ?」
ちっせえ…ちっせえ…
これでも身長伸びたのに!!!
でも、自分が聞いておいてから教えてもらったのに教えないわけにはいかない。
「ひ………151㌢…」
恥ずかしくなってきた……
「151っっ!?はっ、ははははははっ!!ちっせええええ!!!」
笑いながらこっちを見てはごめんごめんと言っている。
絶対悪いと思ってない!!
そう思っているのに、なぜか不愉快ではなかった。
ただ一つ、私の中で何かが変わった。
それは――――――……
さあさあ、これはまだ初めの方ですよ!!
続くんだからっ!!