第十一章――命令
恐怖と不安は、夜のあいだじゅう私につきまとった。
ときおり風が砂漠を吹き抜け、そのたびに冷気が身にしみた。疲れ切っていた私は、やがて意識を失うように眠った。夜明けとともに目を覚ますと、マリアナがそばにいないことに気づいた。彼女は山々を見つめていた。
「よく眠れた?」
私は尋ねた。
「眠れなかった」
彼女は答えた。
「どうしてあなたが眠れたのか、わからない」
「あなたは休まないと」
私は言った。
「夜になったら山へ向かう。昼は無理よ。岩のあいだで身を隠しましょう」
彼女はどこか違っていた。私はそれを疲れのせいだと思った。私たちは岩の裂け目に入り、そこで日差しを避けながら過ごした。
風がやめば、砂漠は静まり返る。私の腹が鳴った。空腹は痛みに近かった。こんな感覚は初めてだった。町の人たちは、毎日こうして生きているのだと思った。
そのことが、前日の出来事を私に思い出させた。地球に来てからずっとそうしていたように、私は盗聴器を起動した。マーランが何を企んでいるのか知る必要があった。部屋にはキストがいた。
「化合物の生産は進んでいます」
彼が言った。
「三か月もすれば、キリマールの住民はその物質を摂取して病み始め、やがて死にます。皮膚病の薬だと信じ込むでしょう」
「素晴らしい」
マーランが答えた。
「街は我々のものになる。あの惨めな連中と分け合う必要はない。そのあと、別の街も手に入れる。アカデミーは再生する」
私は吐き気を覚えた。彼らは、自分たちを迎え入れてくれた人々を皆殺しにしようとしていた。だが、恐ろしいのはそれだけではなかった。
「キリマールの指導者たちは明日来ます」
キストが告げた。
「ソリマールを見張れ」
マーランは命じた。
「それから、エメをその場に近づけるな。あいつが普通ではないことを、連中に気づかせてはならない」
「部屋に閉じ込めておきます」
「いや。始末しろ。もう制御が難しい。役に立たない」
短い沈黙があった。
「それに、自分より賢い人間がそばにいるのは気に入らない」
「私がやります」
私の体は硬直した。血の流れる音が耳の奥で脈打っていた。私は動けないまま、その先も聞き続けた。
「マリアナも同じようにしろ」
「あなたの恋人を?」
「うっかりあいつに毒のことを話してしまった。そのあとで嘘はついたが、エメが消えれば、話をつなぎ合わせるかもしれない」
「承知しました」
私はベッドに腰を下ろしたまま、痙攣するように震えていた。体はどうしようもなく揺れ続けた。呼吸を取り戻すまでに、長い時間がかかった。どうしてそんなことが可能なのか、理解はできなかった。けれど、肝心なことだけはわかった。
あいつは、私を殺すつもりだった。
ようやく少しだけ自分を取り戻したとき、決断はすぐに下された。黙って殺されるつもりはなかった。そんなことは許さない。
私は立ち上がり、マリアナの家へ向かって走った。




