06.幸せに満ちている
無事出産が終わって、今日で1週間となった。
まだベッドから動くことは医師から止められており絶対安静と言われているけれど、家族が毎日揃って顔を見せに来てくれるので退屈しない日々を過ごせている。
キュリアスやネリッサを産んだ時とはまた違い、子供達と一緒に新しい家族の誕生を祝うことができて今までにない幸せの気持ちが溢れてくる。
生まれた時の目を開けず産声も上げず、生気を感じられないメリルを抱いた時は、私が命を奪ってしまったという自責の念が頭から離れなかった。
今こうして穏やかな気持ちでこの子の温もりを肌で感じることができて、本当に良かった。
あの時の光はなんだったのかしら?
私とネリッサの魔力が吸い取られるようにメリルの体に流れていったあの現象を、私は見たことも聞いたこともない。
魔力が集まるにつれて光の強さが増していったように感じた。私とネリッサの魔力・・・光属性の適正が高いことに関係している?
ネリッサは私の血を濃く受け継いでいて、3歳となった今年の年明けに行った魔法適正検査では、光属性という結果が出た。
キュリアスはマイスティラの血が濃いようで、水属性に秀でていたわ。
私はあの時治癒魔法を使っていないし、ネリッサもまだ魔法は使えないはず。
死者の蘇生なんて噂程度で実際に成功した事例はこの国で前例のないことで、仮に生きていたとしてもあそこまで衰弱した人の治癒は私でも不可能でしょう。
まぁ、娘が健康であること以上に大事なことなんて無いのだけれども。
私は腕の中で寝ているメリルの顔をしばらく眺めた後、視線をステータス画面へと移す。
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[名前] メリル・ワーグナー
[性別] 女性
[年齢] 0歳 (0ヶ月)
[HP] 15/15
[MP] 30/30
[STR] 3
[DEX] 1
[INT] 120
[LUK] 5
[祝福]
なし
[習得魔法]
なし
[特殊技能]
なし
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「やっぱり多いわよね・・・?」
私の記憶の中にある一番幼い頃の記憶でも、学園に入る前で[INT]の値は60を超えていなかった。
先日キュリアスとネリッサのステータスも確認したけれど、二人とも30台。これでも成長期を迎えていない子供としてはとても多い。
才のない一般人でも20前後、魔法に長けた人で100前後が平均といわれている。
このステータス画面が現れた日の夜は、それは屋敷の中が大騒ぎだった。
ワーグナー家きっての才女の誕生だとか、女神の生まれ変わりだとか。
将来どんな道を歩んでいくのかまだ想像もつかないけれど、この子には希望を感じずにはいられなかったわ。
この子の適正は何属性になるのかしら。3年後が楽しみね。
あなたのことは、私とマイスティラが命に代えても守ってみせるわ。
それにしてもどうしてステータス画面が出てきてしまったのでしょう?
本人の意思がないと出したり消したりすることはできないはず・・・。
こうして今も表示されたままの状態だということは、本当に偶然表示されてしまったということなのかしら。
でも、この子の成長を毎日確認できるというのはきっと面白いわね。
今日から成長記録をつけてみようかしら。
そしてメリルが生まれてからキュリアスとネリッサにも変化があった。
キュリアスは以前から自主的に勉強をしたり父親のしている領地の仕事に興味津々だった。まだ5歳だというのになんて偉いのかしら。
ネリッサには時折我が儘で振りまされているようだけれども喧嘩したり仲が悪くなることもなかった。
それがメリルが生まれてからは、兄としての自覚がちゃんと芽生えたようでネリッサの面倒を積極的に見る事が多くなったと侍女やメイドが誇らしげに話していた。
ネリッサはメリルが生まれる前は絶賛イヤイヤ期で、機嫌を損ねると家族以外に手の付けられない状態だったのだけれど、ここ数日は落ち着いておりメリルの顔を見に部屋に来た時はとても大人しくしている。きっとあの日の影響なのでしょうね。
子供達の成長を感じられて、今の私は本当に幸せね。この幸せを少しでも領内の皆にも分けてあげたい。
「体が元気になったら頑張るわ!」
今も政務でせわしなく動き回っているマイスティラを思い、ふと言葉が漏れる。
グレイシーは子供達や領地の未来に期待をかけて、心の中で固く決意するのであった。




