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せいしゅん部〜演出過剰につき〜  作者: まどろみ=アオ
9/10

青春の舞台、はじめの一幕

正式に入部を決めた翌日、僕は放課後の旧校舎へと足を運んでいた。

昨日と同じ部室。けれど、扉を開ける手はほんの少し震えていた。


中に入ると、例の仮面をつけた部員たちが待ち構えていた。霧島は相変わらず落ち着いた笑みを浮かべている。


「さて、風見くん。今日から君も部員よ。記念すべき最初の“シチュエーション”を体験してもらうわ」


「……体験?」


「ええ。“青春”は机上の空論じゃない。実際に作ってみて、そこに飛び込むことが大事なの」


霧島の合図で、仮面の部員たちが立ち上がる。彼らは机の上から何枚もの紙を広げ、役割分担のメモを確認しているようだった。


「今日のテーマは……『廊下での偶然の衝突から始まる恋』」


僕は思わず顔をしかめた。「はぁ!? なんですかそれ?」


霧島は涼しい顔で説明を続ける。「青春の定番シーンよ。漫画やドラマでよくあるでしょ? 本当に偶然で起こることは少ない。でも、私たちの部活なら――演出できるの」


僕は半分あきれながらも、妙に胸が高鳴っていた。

演出? 本当にそんなことをやるのか?


仮面の部員のひとりが紙袋を持って近づき、中から本を取り出した。

「じゃあ風見くん、これ持って廊下を歩いてね」


「……え、まさか」


「そう。その角を曲がったところで、わざとぶつかる“役”の子が待ってるわ」


僕は本を抱えながら深いため息をついた。

「俺、なんでこんなこと……」


霧島は楽しげに笑う。

「大丈夫。青春は、照れと戸惑いから始まるのよ」


廊下に立たされ、本を抱えて歩き出す。

角の向こうには誰がいるのか、もちろんわからない。

心臓がやけにうるさく感じる。


――曲がり角の直前。

僕は小さくつぶやいた。

「……平和第一、なのになぁ」


次の瞬間、角を曲がったところで「ガツン!」と衝突する音が響いた。


「きゃっ!」


目の前で、長い髪がふわりと揺れる。

本が床に散らばり、視線が交錯した――。



まさか、これが僕の“青春の一幕目”になるなんて。


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