決断の扉
放課後。校舎の廊下は日中のざわめきが消え、静寂が支配していた。教室を抜け、旧校舎へ向かう足取りは重い。胸の奥で、期待と不安が交互に波打つ。
部室の扉を開けると、昨日と同じ光景――仮面をつけた部員たちが机の周りに座っている。昨日よりも数が増えているような気がする。霧島が少し微笑みながら立ち上がった。「風見くん、来てくれてありがとう」
「……こんにちは」僕は小さな声で返す。
霧島は部屋の中央で両手を組み、仮面の部員たちに軽く視線を送る。彼らは一斉にうなずき、沈黙の中に一瞬の緊張感が漂う。
「風見くん。昨日話したこと、考えてくれた?」霧島の声は柔らかいが、どこか意思を押し通す力がある。
僕は深く息を吸い、意を決したように口を開く。「……はい。入部します」
部屋に一瞬、静寂が走る。仮面の部員たちが小さく頷き、それぞれの視線が風見に集まる。霧島の笑みが少しだけ広がった。「いいわ、待っていた答えよ。これから一緒に活動していくことになる」
「……よろしくお願いします」自然に出た言葉に、胸が少し熱くなる。未知の世界に足を踏み入れる覚悟が、今、ようやく形になった瞬間だった。
霧島は僕の隣に歩み寄り、低く囁く。「風見くん、覚えておいて。ここでの経験は楽しいだけじゃない。時には面倒くさいこともある。でも、その全部が“青春”になるの」
仮面の部員たちは静かに頷く。まだ素顔はわからないが、その場の空気は温かく、奇妙な一体感があった。
僕は椅子に腰かけ、部室を見渡す。机の上にはメモや小道具、見慣れない機材が置かれている。すべてが未知で、すべてがこれからの僕の青春に関わるもの。
そして、心の中で小さくつぶやいた。「……平和第一、でも青春は逃さないかもしれないな」
放課後の旧校舎に、風見の新しい一歩が静かに刻まれた。




