表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
せいしゅん部〜演出過剰につき〜  作者: まどろみ=アオ
6/10

仮面の視線

旧校舎の廊下は、外よりもひんやりしていて、歩くたびに軋む床板が耳に残る。扉を開けると、昨日と同じく薄暗い部屋。その奥で待ち構えるのは、仮面をつけた数人の部員たちだった。目の部分だけが切り抜かれた無表情な仮面。その視線が一斉に自分へ向けられた瞬間、背筋に小さな冷気が走る。


「――風見くん」

先に声を発したのは、霧島だった。彼女だけは仮面をつけていない。白い指先を組んで机の上に置き、穏やかに微笑む。

「昨日の話、考えてくれた?」


風見は口を開きかけ、言葉を選んで閉じる。確かに考えた。だけど答えは簡単に出せない。曖昧な沈黙を察したのか、別の仮面の部員が低い声を落とした。

「口外すれば、君の日常は壊れる。選択肢は二つだけだ」


「入部する」か、「秘密を守り続ける」か。だが後者を選んだところで保証はない――その空気が伝わってくる。


「……僕が入ったところで、役に立つとは思えないけど」風見は小さく言う。

霧島はすぐさま、穏やかな笑みを深めた。「役に立つとか、そういう基準じゃないの。必要だから呼んでるの」


必要、という言葉が耳にひっかかる。

「なぜ僕なんですか?」

問いかけると、一瞬の沈黙。仮面たちが互いに視線を交わす気配。


霧島がゆっくり口を開いた。

「あなたは、“見つける”人だから」


意味が掴めず、眉を寄せる。

「……何を、ですか?」

「それは部に入ってからのお楽しみ。でもね、風見くん。あなたはすでに、気づかないうちにこちら側に足を踏み入れてる」


その言葉に、喉の奥が詰まる。記憶を探る。最近の奇妙な出来事――ふと耳に残った校内の音、あの違和感。けれど確証なんてどこにもない。


「僕に拒否権は……」

言い切る前に、仮面のひとりが口を挟んだ。

「あるさ。ただし、拒んだ場合は――君の平穏は保証されない」


脅しめいた響きに、鼓動が速くなる。静かな部屋なのに、心臓の音だけがやけに響く。


霧島が立ち上がり、そっと一歩近づいた。

「風見くん。あなたは“青春”を他人事だと思ってる。だけどね――その立場だからこそ、ここで果たせる役割がある」


彼女の瞳が真っ直ぐに射抜いてくる。逃げ場はない、と直感する。

風見は深く息を吸い、言葉を吐き出した。

「……まだ、答えは出せません」


仮面の部員たちがざわりと身じろぎする。だが霧島は、笑みを崩さず首を縦に振った。

「いいわ。放課後までに決めて。次は待ってくれないから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ