決断の時
放課後。旧校舎の薄暗い廊下を歩く僕の胸は、不安と期待でざわついていた。昼休みに届いたあの謎のメッセージが何度も頭をよぎる。
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ドアの前で緊張しながらノックすると、ゆっくり扉が開き、霧島が現れた。彼女の真剣な表情に、自然と背筋が伸びる。
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中に入ると、部屋には数人の部員が座っていたが、全員が異なるデザインの仮面をつけていて、顔の表情はまったく見えない。その神秘的な雰囲気に僕の胸はさらに高鳴った。
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「初めまして。私たちが青春シチュエーション創造部のメンバーです」
声のトーンや身振りから、彼らの個性が伝わるものの、正体は謎に包まれている。
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霧島がじっと僕の目を見据え、「風見くん、なぜ君に入部をお願いしているか、ちゃんと話すね」と話し始める。
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「この部活は単なる“青春ごっこ”じゃない。君には隠れた才能がある。観察力と発想力、そしてそれを形にする能力——それこそが、この部の活動に欠かせないんだ」
言葉に戸惑いながらも、僕は胸の奥に少し誇らしさが芽生えるのを感じた。
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「君の視点が加われば、私たちのシチュエーション創造はもっと豊かになる」
そんな霧島の言葉に、僕は言い訳を探してしまう。
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「……でも、僕は特別なことなんて何もできないよ」
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その言葉に霧島は柔らかく微笑み、少し身を乗り出して
「そんなことはないよ。自分で気づいていないだけ。それでね……風見くん、部に入ってくれるかな?」と続ける。
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その瞬間、部屋の空気が一気に張り詰め、仮面のメンバーたちがそれぞれ頷くのが見えた。
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僕の心臓は激しく鼓動し、迷いもあったが、胸の中で芽生えた「ここで何かを変えたい」という想いがじわじわと膨らんでいく。
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深く息を吸い込み、覚悟を決めた瞬間だった