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せいしゅん部〜演出過剰につき〜  作者: まどろみ=アオ
10/10

初めての片鱗

肩がぶつかった瞬間、思わず息を呑む。

「……わっ、ご、ごめん!」


相手は一瞬よろめき、そして立ち止まった。

手には、先ほどぶつかった衝撃で落ちた僕の本を持っている。


「大丈夫?」

声は柔らかく、落ち着いているけれど、どこか好奇心が混じっている。

見上げると、彼女の目はきらきらと光り、自然に視線が合った瞬間、胸の奥がざわついた。


――これが、意図的に作られた青春体験なのか。

一瞬の接触で、心がこんなに動くなんて、予想もしなかった。


「え、あ、はい……すみません」

動揺して言葉がうまく出ない僕に、彼女は微笑みながら本を差し出す。


「はい、落ちたわよ」


手渡された瞬間、ふと何かが僕の中で光った気がした。

本を受け取る動作一つにしても、バランスや反応の速さ――

沙月の言う“素材”としての資質が、無意識に表れていたのかもしれない。


「いいわ、その反応」

後ろから聞こえる沙月の声。

「風見くん、あなたにはまだ自覚のない才能があるわ。さあ、これから少しずつ引き出していく」


胸の奥のざわめきとともに、初めての“青春っぽい感覚”がゆっくり染み込む。

戸惑い、少し恥ずかしさを感じながらも、確かに自分の中で何かが芽生えた――

そんな瞬間だった。


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