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3/10

参話


……結論から言うと、バス停に行く必要はなくなった。


 どうやら、ゲームの登場人物――主人公たちは、現時点で不在のようだからだ。


 いないのなら、合流を急ぐ意味もない。

 なら、フラグ管理に集中して、トゥルーエンドを目指すべき――


 ……って、おい待て!?


 トゥルーエンドの条件には、霊能力必須のイベントと、ヒロインの生存が絶対条件に入ってるじゃねーか!


 いや、落ち着け。

 トゥルーエンド以外にも、脱出ルートは複数ある。


 たとえば、最短クリアルート。

 廃坑を抜けて海岸に出て、そのまま隣町の漁村へ移動するルートがある。


 ――が、問題はその漁村。

 “ヒラメ顔の人々” が暮らしていて、彼らに保護してもらうところで、場面が切り替わって終わるという……ノーマルエンド。


 だが、「どう考えても “冒涜的なアレな村” だろ? バッドエンドじゃね?」って意見がネットでも多数だった。


 うん、これはダメだな。バッドエンド濃厚。


 だがノーマルエンドは、他にもある!


 線路を歩いて隣駅「如月駅」に辿り着くルート。


 下水道に潜り、白ワニを退けた先の旧日本軍の隠し部屋から地上へ脱出するルート。


 エレベーターを特定の手順で操作して異界へ移動し、異界を徘徊してる謎のおじさんに現世へ送り返してもらうルート。


 ……いろいろあるにはあるが、どれも「本当に現実か?」と疑いたくなるエンディングばかりだな、おい!?


 やはり、“赤い霧を晴らして元の道を辿って帰る” トゥルーエンドルート。


 それ以外は全部バッド扱いって気がしてきた……。


 マズい。

 じわじわと、詰みフラグの匂いが漂ってきてる。


 ここは主人公たちが来るのを待つか?


 ……でも、いつ来るかもわからないし、サバイバル生活なんてまっぴらだ!


 これがクリア後の世界なら諦めもつくけど――

 ここには “セーフポイントすら存在しない”。


 つまり、ゲーム開始前。

 少なくとも、メガちゃんが“まだ来ていない”のは確定ってことだ。


 何故かって、このゲームにおけるセーフポイントって、メガちゃんの手製なんだよな。


 本人曰く、「龍脈を利用したピラミッドパワーによる結界陣」


 四方に赤・青・緑・黄の石を配置して、遠目にはワイヤーフレームに光るピラミッドに見えるというアレなデザインだ。


 ネットじゃ「雰囲気ぶち壊し」「胡散臭さMAX」と酷評されてたが――


 今となっては、無いことの方が困るんだが!?


 ゲームでは、セーブ可能地点で、メガがちゃんによる、ヒントメモと救援物資まで揃った安全地帯。


 現実化した今こそ、超貴重な拠点なのに!


 だが、現実はいつも非情。


 場所は間違ってない。

 でも、セーフポイントは存在しない。痕跡すら、何も無い。


 つまりやはり、ゲームが始まる前の状態と考えるべきだ。


 元のゲームでも、メガちゃんの動向フラグでセーフポイントが増えていく仕様だった。


 だから、“まだ設営されていないだけ” の可能性も――あるにはある。


 ……でも望みは薄いな。


 ここはスタート地点の近く。

 もし彼らがすでに来てるなら、セーフポイントが無いのは不自然すぎる。


 ――あ、いや、待てよ?


 バス停に行く意味がなくなったと思ってたけど……

 もし主人公たちを待つつもりなら、スタート地点で待つのがベストじゃないか?


 今まさに向かってきてる最中――なんて可能性もゼロじゃない。

 ならば、確認に行くべきだな。むしろ行かない理由がない。


 となると、ルートの選択肢は二つ。


 廃交番を抜けるか、廃駅舎を通るか。


 ……すれ違いになったら笑えねぇな。


 ああでも、もしメガちゃんが今から設営に来るなら、ここで待つってのもアリか?


 ――いや、やっぱりナシだな。


 状況が不明すぎるこの状態で、“確認もせずに待つ”のは時間の無駄だ。


 しかも、ここは安全地帯ですらない。


 なぜなら――姦姦蛇螺が居るからだ。


 この世界における “ワンダリングボス”。


 セーフポイント以外のどこででもランダムエンカウントする、嫌がらせの極致。


 倒すことは頑張れば可能。

 でも、イベントで止めを刺さない限り、何度でも復活してくる。


 だから戦うより、逃げる方が正解。


 しかも、同じエリアに一定時間以上滞在すると、確定で出現する仕様なんだよな……。


 ゲームでは、それを逆手に取って、安全に戦える場所でわざと出現させて撃破→リポップのクールタイムを利用し、難所でのランダム遭遇を避けるテクニックもあった。


 実際、低確率とは言えど、赤青マントみたいなギミックボス戦で乱入されたら最悪だったから……あれは、ほぼ必須テクだったな。


 ――まあ、そんなわけで。

 ここでメガちゃんを待つのは却下。


 主人公が不在なら、やるべきはただ一つ。


 廃交番ルートを通って、スタート地点を目指す。


 そっちなら上手くいけば、最強武器も手に入るしな。

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