拾弐話
廃病院を後回しにして、産廃場に向かう。
ここには、トゥルーエンドに必要なアイテムが眠っているからだ。
それは……[壊れたラジカセ]
そう、なんの変哲もない、ただの壊れたラジカセだ。
MDプレイヤーでもりんご壺でもなく、昭和の遺物のラジオカセットレコーダーだ。
ゲームでは、これを廃神社で手に入るカセットテープと組み合わせて使うと赤い霧を晴らす「鎮魂の歌」が流れるという、重要アイテムだった。
だが、現実は違う。
ラジカセが壊れてるのに、なんで歌が流れるんだよって話だ。
……まさか、ラジカセを鳴らすのに霊力が必要とか?
──それだと詰むんだが!?
まあ良いいや、後々考えよう。
今は、そんなことより現物確保が先だ。
ここ、産廃場なんだよな……。
ゴミの山。鉄屑の山。
ゲームだと、ただのフィールドオブジェクトだったけど……。
現実だと、悪臭と錆と埃まみれの、とんでもない場所だ。
足元も悪いし……破傷風も怖いから、触るものにも気を使わないと。
足場が悪くて、ただでさえ危険なのに、ゴミの中に、付喪神が紛れてて、迂闊に触れると襲いかかってくる始末だ。
とは言え、付喪神はスマホカメラを通せば見えるので、発見からの回避は難しくない。
しかも、コイツラは亡霊とかと違って “観” ても無反応だ。触らない限り問題ない。
その代わり、数がメッチャ多いがな!
……と、文句を言いながらも、なんとか目的地に到着。
お目当てのラジカセは……あった。
ゴミの山に埋もれて、汚いったらありゃしない。
でも、これがトゥルーエンドに繋がるアイテムなら、汚くても我慢するしかない。
そうして、掘り起こそうとしてたら……。
「オイっ!?」
──いきなり声をかけられた!
生存者か? それともキョウスケ達か?
……いや、答えは決まってる。
ゲームでの吠え声と同じだからな。
しかし、ココでランダムエンカウントの人面犬を相手するのはキツいな……。
足場ヤバすぎなんだが?
しかたない、姦姦蛇螺は論外として、テケテケよりマシだと思いたい。
何せ人面犬は、その顔面が弱点で、正面からオイオイ言いながら、噛み付いてくるから、カウンターも入れやすいザコオブザコだからだ。
──さっき作った、金属バットお札付きが無ければ、詰んでたけどな!
備えあれば憂いなしってな、後は足場と位置取りさえ間違わなければ余裕だろ?
……?
──襲って来ないんだか?
まさかゲームと挙動が違う!?
そんな、戦慄して辺りを見渡すオレの目に飛び込んで来たのは……ゴミ山に足を取られ転落して、崩落したガラクタに埋もれた人面犬の姿だった。
……どうやら、吠え声ではなく、断末魔だったらしい。
色々と込み上げる思いがあるが、ソレを振り払い、気を取り直して、ラジカセを掘り出すとしよう。
多少手間取ったか、どうにか拾い上げて、ベルトポーチにラジカセを突っ込む。
──当然、はみ出る。
仕方なく、手に持って歩くことに。
ラジカセの持ち運び方も、リアルだと不便極まりないなぁ。
まあ、これも生き残るためだ。
さて、次はどこへ行こうか?
廃旧校舎に行くか?
廃校舎じゃなくて、廃旧校舎の方だ。
……紛らわしいし、いちいち “廃” って付けるのがうっとおしくなってきたが、それがゲームでの正式名称なんだから仕方ない。
廃旧校舎は、廃校舎の近くにある。
廃校舎と違って、図書館に入ることができ、様々な資料と攻略のヒントが手に入る。
障害として、二宮金次郎の代わりに、初代校長のブロンス像があるが……こっちは目と頭が光るだけで、実害はないから、どうでも良いんだが……。
問題は、そこに徘徊してる、旧日本軍兵のゾンビなんだよな……。
銃剣突撃してくるゾンビって……殺意高すぎじゃね?
走るゾンビじゃなく、全力疾走で特攻してくるゾンビは反則としか思えない。
「……」
いや、やっぱり、テープを取りに廃神社に行こう!
ビビってるのかって?
むしろビビらない方がオカシイだろっ!




