第九章:空の向こうにポンデは飛ぶ
暁と禊がポンデ教団本部を半壊させてから、数日が経った。
あの一件で、教団は拠点を失い、信者たちは泣きながら逃げ惑った。
───が、それでも教団は解散しなかった。
「我々には、まだ……ポンデの理想があるッ……!」
ボロボロの灰色スーツを着直したゴッドエンゼルは、廃ビルの一室を新たな拠点とし、再び立ち上がった。
「東京を、ポンデ一色にする!」
「主食とは輪の形である!」
「穴が空いている、それが神の証!」
信者たちがポンデを掲げて唱える中、彼らは何度もポンデ支配計画を実行した。
───しかし。
ことごとく、阻止された。
第一の計画:
都内全域の学校給食をポンデドーナツにすり替える。
→禊が現れ、ポンデ教団が管理するポンデ保管建物ごとタックルして倉庫を破壊。
ゴッドエンゼルは空高く舞い上がり、そのまま成層圏近くまで飛ばされた。
第二の計画:
街頭の広告モニターをジャックし、「ポンデ教の経典映像」を流す。
→偶然通りかかった暁が、朝の登校中に食パンを二枚咥えて走っていた。
それを追いかけていた禊が全力疾走で曲がり角を曲がった瞬間───
ちょうど映像配信中だったゴッドエンゼルと激突。
彼はくるくる回転しながら壁に激突し、後に救急搬送された。
信者たちは、彼の無様な姿を見て、思わず手に持っていたポンデを落とした。
第三の計画:
地下鉄をポンデドーナツ型車両に改造し、乗客に布教する。
→なぜか乗車していた禊に無言タックルされて中止。
ゴッドエンゼルはまたもや吹っ飛び、地下鉄の風圧に乗ってホームの奥へ消えた。
結果、ポンデ教団は毎回散々な目に遭っていた。
だが、それでも彼らは───
やめなかった。
「……主食が、ポンデになるまで……私は死ねない……」
倒れたままのゴッドエンゼルが、空を見上げて呟いた。
「先生……肋骨が八本……」
「その痛みもまた、輪の象徴……!」
こうして、ポンデ教団のポンデ活動は、今も続いている。
世界のどこかで、誰かがふと感じる“ポンデの視線”。
それは、彼らがまだ諦めていないという、狂気と情熱の証であった───。