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絵に描いたぼた餅  作者: ギリゼ
本編
3/13

第3話ハギミー


 常識と程遠い内容です。



 呪詛師(担任教師)呪術師(三中)の、内輪しか内容を理解出来ない()()()()()は、生徒の大半が(非術師)のせいか、すぐ笑い話となる。


 電磁波攻撃、DS同様、真剣に捉えた時点で、周りから危険人物の烙印を押されてしまう。妄想癖を持つ人間達の三文芝居、下ろされた幕の内側を覗く必要が無い。


 特定の姓を精神異常者の代名詞に使われるきっかけとなった事件以降、担任教師の妄想、『巡夫婦譚(めぐりふうふたん)』は誰も嘲笑しなくなる。


 死刑囚にならなければ他者から興味を持たれない家庭環境で育ち、6歳の頃、彼女が特殊な素行不良へ走った。白く、儚い雪を体現しているような少年と出会い、彼に温かい愛情を求める。


 優しい少年と遊び、それが満たされていくと、次は無意識に彼の()()()()()()()。『()()()()()()()()()』を著しく冒涜している。


 少年の両親に()()()と勘違いされていた萩宮巡(はぎみやめぐり)ちゃんが、『くすぐったくなってしまう行為』を覚えて、しばらく1人で行う。


 物足りなさを感じ始めた頃合いで、『創世記』のアダムか、『日本書紀』の伊邪那岐(イザナギ)か何かと錯覚している少年を誘う。


 入浴を済ませて、全裸のまま、トイレに入り、()()()()()を行った。しかし、扉の施錠と点灯を忘れた事で開けられてしまう。


 少年のシフトレバーをアイスクリームのように舐め、巡ちゃんは黄泉の門に人差し指を潜らせていた。まだ12歳の少年は一切の希望を捨てていない。


 驚きのあまり、彼が左脚を伸ばしながら片膝を突く。彼女を指差して叫んだ。すっかり人間を捕食する怪物と認識していた。


 『俺の傍に、近寄るなぁぁぁ!』


 整った顔立ちながらも強い眼光を持つ彼は、性被害少年の従兄だ。謝罪せず、巡ちゃんが扉を閉めて施錠する。原罪をまだ背負っていないのか、6歳の男女は行為の恥じらいを知らなかった。


 後年、その出来事を性加害者から聞かされ、被害者がピロトーク中のように憫笑する。長い年月、数多くの性加害と暗示を受け、重度の巡依存症となっていた。


 三中の手によって茉理のメンタルケアを行われている為か、被害の声を上げない。懲戒処分を免れ、担任教師は数日後の卒業式も参加する。


 その夜、石津がベッドの上に伏せながら無線綴じ冊子漫画を読んでいた。萩宮巡を後世の5000円紙幣の肖像に採用させようと、作者は彼女の物語を作る。


 容赦無い性描写、暴力、精神的苦痛を引き起こす狂気が含まれており、新手の洗脳器具だった。彼の精神は徐々に鬱の底無し沼へ沈んでいく。


 正午前に帰宅してから今まで、3冊構成の第1部『萩原家ピューマ』を読む。高校時代、美術の授業評価が5だったと自慢するだけあり、綺麗な絵柄だ。


 コマ割りも読みやすく、緩急を付けている。何かの影響を受け、漫画制作に情熱を注いでいた時期は間違い無くあるだろう。


 3冊目が途中まで2人の幸せな日々を描いているだけに、その終わりへ近付くと、また石津は精神的な苦痛を受けた。


 青年に成長している『兄様』は受験生として当たり前の提案をしたが、巡の怒りを買う。憎悪を抱く彼女は陰湿な報復を行った。兄様の毒殺だ。


 巡が仲直りの贈り物と偽り、『ヨウシュヤマゴボウ入りオムライス』を彼の家へ届ける。それによって、味見した『兄様』の母親は生死を彷徨う。


 大事な家族を傷付けられ、彼が大号泣する場面は石津もいたたまれなくなった。しかし、泣き終わると『兄様』が家中に隠している武器を集め出す。


 「ヤ、ヤバい。ハギミーを殺す準備していたのかよ」


 十手らしき物や、刃付き指輪らしき物など、忍者のような武器を仕込んだ、薄汚いコートをマントのように、彼は羽織った。1振りの刀を握り、巡の家へ向かう。


 萩宮邸の玄関前で、彼女の実兄らしき男と真剣勝負に発展する。抜刀し、剣道の構えを取った相手と違い、彼は左斜め下に刃先を向ける構えだ。恐らく剣道以外の手解きを誰かに受けていた。


 巡が見えない所で鍛錬を重ねているようだ。石津は彼女から理不尽な扱いを受けた三中に、同情を寄せる。巡の実兄が左小手打ちを行い、三中は横から先端付近を押さえ付けるように振り落とす。


 素早く刃を右手首の下へ入れ、内回りの半円を描くように動かした。抜き、体勢を崩してしまう男の項へ刀の底を叩き付ける。更に、尻へ前蹴りまでした。


 刀を置いて、降参の意思を示す男を尻目に、土足で中へ押し入る。鬼気迫った表情で薙刀を斜め上に構える巡がこちらへ走って来た。最愛の『兄様』を手に掛ける為、胴着姿だ。


 黒の袴と白の足袋から洗練された美しさを石津に感じさせる。怪物はこの時だけ、三中の大切な妹へ戻っていただろう。


 ()()()の弱さを除けば、簡単に恋愛出来そうな女の子だ。彼女の『兄様』は右手をコートの裾へ入れ、逆手で小型クナイを取り出すと同時に投げる。


 リーチと構造上、不利な戦況と彼が理解しており、()()()()()()()のような行動は取らない。


 しかし、巡がマジで『兄様は正面から打ち込んで来ますわ!』と思っていたようだ。そして、優勢を取れている事に、驕った。()()()()()()()()だ。


 右湶に突き刺さり、彼女は倒れ込む。三中が刀の先を左斜めへ傾けて構え、距離を詰める。起き上がろうとした彼女の顎を蹴り、すかさず右手で刺さっているクナイを掴んで真横へ斬った。


 大量出血する胸を押さえ、巡は泣き叫ぶ。襲撃者の目的が終わって安堵していたのか、実兄や両親は様子を見に来ない。悶え苦しみ、彼女が何度も謝罪する。


 『こんな(お前)、ちぃとはワシの腹ん中、考えてもバチが当たらんと思うがのう?』


 『しばらく会えんなったら今までの愛は()うなる。そないな事、誰が決めたんじゃ』


 刀を背後に置き、三中は巡の隣で横たわる。彼もまた涙を零しながら抱き締め、彼女へ愛を囁く。巡と三中の争い、『萩三(はぎみ)抗争』が終結する。


 最後の1ページに作者は製本協力者を紹介していた。彼らと仲が良いのか、SNSに投稿するような文章だ。

 

 『竿ねンだわネキ、オヤコンガニキ、才の無いアホニキ、ちーちゃんの素晴らしい〇ン〇ンものニキ、広告へぺトナス!』


 『〇ン〇ンもの、ご機嫌やさかいなぁ、指、2本で許したるわ』


 ページの左端に、全ての犯罪行為は示談を済ませている旨が明記していた。警察はこの作品を証拠として事件捜査する程、暇で無い。フィクションも織り交ぜており、信憑性に欠ける。


 茉理を精神的に苦しめた、呪詛に関する情報が第1部のどこにも無かった。少し興味を持っている石津は作中の三中へ感情移入したせいで、憂鬱な気分となる。


 兄様が記憶を失っていた現在、それを信用の担保としている担任教諭は疑心暗鬼だ。もし、戻らない場合、彼がまた愛してくれる確証を持てない。


 「そうか、まあ、そうか。別にハギミーで無くても不安だな」


 石津は本を閉じ、枕元に積んだ本の山へ載せる。担任教師の思考が大体分かり始めていた。怪物から()()()に認識は変わりつつある。


 一部客向けキャンペーンの景品として、定期的にケーキ屋でこの作品を貰えた。全3部構成のうち、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 茉理はその理由を以前、バイト先の先輩に質問したようだ。存在を認めつつ彼女が教える。


 萩宮家の都合で勃発した所謂『第二次萩三抗争』を作者は第2部、『萩宮家 激突編』のモチーフに使う。一家のお荷物だった長女が、ようやく両親の期待を背負う転機を迎える。


 それと同時に、彼女の実兄は理想的な縁談を貰う。どちらの好機も逃したくない彼が『対三中対策』を講じる。作品のモチーフとして、かなり美味しい出来事だった。


 その当時、萩宮家の一大好機を三中は自分の事のように喜ぶ。敵視されようが、争わない態度を取っていた。しかし、巡の実兄は『対三中対策』が引き金となり、虎の尾を踏む。


 ()()()()()()()はダンプカーを盗んで、萩宮邸へ突っ込んだ。暴力団同士の抗争以外でほとんど見かけない光景だった。


 その結果、萩宮家の一大好機を逃す。巡の実兄が墓穴を掘る形で『第二次萩三抗争』は終結した。萩宮一家が三中を『名前を呼んではいけないあの人』同様の認識を持つ。


 警察や当事者達の反感を避ける為、第2部だけデジタル原稿のままだ。第3部『萩宮ピューマ 完結編』は第1部の内容から11年の月日が経っており、間の必要性は無かった。


 その情報を石津が一昨日、茉理にLIFEで教えて貰う。三中の災いは()()()()()()()()()()



 タイパ重視する読者向けに内容の解説を載せておきます。

 〇呪詛師、呪術師、猿

  巡と三中の行動、それを理解出来ない外野を『呪術廻戦』に見立てています。

 〇DS

  『闇の政府』、アメリカ合衆国内に蔓延する陰謀論です。

 〇萩宮巡をからかえないきっかけとなった事件

  犯人の行動を作者は一切擁護する意思を持っていません。しかし、その事件以降、妄想癖関連の事件と結び付ける風潮が出来た事もまた事実です。

 〇巡夫婦譚

  俗説『仲の良い夫婦は来世、兄妹として生まれ変わる』を基に、巡が作った妄想です。依存相手、三中を『兄様』呼びするきっかけでもあります。2人共、同年齢です。

 〇よいこのおやくそく

  学校の先生や両親から教わるモラル教育です。

 〇くすぐったくなる行為

  自〇行為を指しています。

 〇黄泉の門

  女〇器の隠語です。

 〇一切の希望を捨ててない

  トイレの扉を地獄の門に見立ている表現です。

 〇『俺の傍に、近寄るなぁぁぁ!』

  『ジョジョの奇妙な冒険 第5部黄金の風』のオマージュ。

 〇原罪

  知恵の樹の果実を食べ、羞恥を覚える事です。

 〇巡依存症

  『ストックホルム症候群』の一種です。

 〇ヨウシュヤマゴボウ

  ブルーベリーと似ている猛毒の実です。

 〇十手らしき物

  正確には『釵』です。三中がこれを別作品で使用します。

 〇忍者のような武器

  外国のステレオタイプの忍者は良く『釵』を使います。しかし、実際の忍者が使用した根拠はありません。

 〇薄汚いコートをマントのように羽織る三中

  『実録 柳川組』シリーズのオマージュです。

 〇使わない武器を携帯した理由

  どのような状況でも対応出来る為です。

 〇三中が剣術を使う理由

  作品の都合上、明かせません。

 〇髷の無い時代劇

  着流しを着た主人公の『任侠映画』を指します。

 〇三中が似非広島弁を急に喋った理由

  感情を昂らせると、彼は一定確率で口調を変えます。

 〇竿ねンだわネキ

  副店長です。男装が趣味だからです。

 〇オヤコンガニキ

  三中と巡の兄貴分です。三者面談で母親に遅刻された彼の経験から付けています。

  名前は有名女性声優の裏垢疑惑が浮上した『ド〇コンガ』のパロディ。

 〇才の無いアホ

  副店長の配偶者です。『俺の傍に、近寄るなぁぁぁ!』の少年も彼です。好きな事で生計を立てられない自虐ネタから

  名前は作者のサークル名『才の無い箱』のセルフパロディ。...活動休止中です。

 〇ちーちゃんの素晴らしい〇ン〇ンもの

  三中の親友です。作中に登場する忍者みたいな武器を揶揄しています。

  『サウスパーク』シーズン8の挿入歌をオマージュしています。その回は忍者にまつわる内容でした。

 〇広告

  製本代をカンパして貰った見返りに名前を紹介する仕組み。

 〇ヘペトナス

  『ありがとう』という意味。元ネタは『龍が如く0 誓いの場所』の専門用語です。

 〇ご機嫌やさかいなぁ、指、2本で許したるわ

  元ネタは『龍が如く極』の台詞です。『広告主名に下ネタを入れるんじゃねーよ!』と三中は遠回しに伝えています。

 〇バイト先の先輩

  〇ン〇ンものニキの妹です。

 〇第二次萩三抗争

  『愛している人は近くて、遠い』の第4章、第5章で描く予定の出来事です。

 〇『萩宮ピューマ 完結編』

  茉理ちゃんが所持しています。内容を知りたい方は石津か三中を通して頼んで下さい(冗談)


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