第✕✕✕話
前回のあらすじ
真の敵を知り、作戦実行に向けて準備をしていく日々を過ごしていく栄光と緋色。作戦当日、緋色の裏切りによって、自壊者と天界者は力を合わせざるを得なくなった。人類は物語の真相を暴くことが出来るのか…!?
ダスボが殺されたことによって、一般市民の街にも天界者や自壊者が今までよりも彷徨くようになった。立ち入り禁止区域や、常人には行けないような場所ほど、厳重に調査されることになった。
緋色の家は自壊者も天界者も手掛かりがある可能性があると言い、押し入ろうとしたが、栄光が「市民にも迷惑がかかる」といい、辞めさせた。
市民にも事の重大さを実感させるために、伝えはしたものの、市民自体は何かが変わる訳でも無く、いつも通りの日々が続いた。
自壊者や天界者も次第に熱が冷めていき、「あちらが攻撃してこないのなら。」という理由でいつも通りの平和を取り戻して行った。
だがその平和も束の間、ある日世界が震撼する事件が起きた。
数日後のある時、自壊基地にいた自壊者数名が同時に保管所に戻ると、そこには二人の人間の姿があった。
織田緋色と血塗れで倒れている後藤栄光だった。
「う…うあああああああああああぁぁぁ! 」
大声で叫ぶと、巡回中だった頼光が、鍵のしまった扉を吹き飛ばして入ってきた。
「どうした!っ…!てめぇ織田緋色かァ!」
頼光が我を失ったかのように目を血走らせて突進するも、顔面を吹き飛ばされ、本体に戻った。
「また蘇りゃいいんだよォ!」
後ろから緋色に攻撃しようとするも、逃げられた。
「ッソォォォォ!あの野郎ォォォォ!」
二日後には栄光の葬儀が行われ、自壊者、天界者、市民の全てを含めた、約五万人が参列した。
「………緋色。」
葬儀中、外には織田緋色の姿が会った。外に出ていた将太は緋色に会ったが、攻撃はしなかった。
「………仕方なかったんだ。………だからもう…」
「………泣くな。」
将太、そして秘書はこの本当の作戦の『全貌』について知っていた。
「はい。分かってます。僕はやらないといけない。」
こうして緋色はまたどこかへ消えた。
───栄光が死んでから何時間経っただろうか。俺が栄光を殺した。だからもう後戻りはできない。
緋色は頭の中でそんなことを考えていた。手と足が震えてきた。制御が効かなくなっていた。緋色の物語の全貌は儚いものだった。
緋色は前天界ボスの『アイイロ・オダ』の継承者として生まれた。無自覚の上で。
ある時緋色は自壊者となり、天界基地に赴くことになった。そこで継承者について聞き、自身が継承者だと言うことを思い出した。
だが継承者にはある呪縛がかけられていた。
『自壊者に殺されなければならない。さもなくば、一ヶ月後体から最悪の魔物が生まれ、自壊者を滅ぼすだろう。』
その後緋色は栄光に相談し、ある作戦を立てた。ダスボを殺したフリをする。
そうすることで自壊者からは裏切り者として扱われ殺される。その際にクローン化を解いてもらう。そうすれば殺された際に死ぬ事が出来る。
だが、それだけではまだ足りない。なので心臓病を患っている栄光を自壊者の目の前で殺し、確実に敵対させる事が重要だと思った。
だがこの呪いはまだ終わらなかった。
『十日後から徐々に魔物に近づいていく。』
そう、緋色は凶暴化していた。ギリギリの理性で栄光を殺し、周りの自壊者や天界者の本体を傷つけないように逃げてきた。
そして現在に至る。体は白色になっていき、炎のように熱く燃えていた。そして人間を喰ってやりたかった。まるで本物の『人喰い』のように。
第✕✕✕話 【終】