第七話
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「練習中にごめん、知念さん。」
僕たちは一番初めに女子バスケットボール部のキャプテン、知念美幸さんのところを訪ねた。最初は二年二組を訪ねたが、もう部活にいったと聞いたので、女バスが練習している体育館に向かった。僕は正直、昨日光から言われたことを気にしていたので、女バスにはできる限り近づきたくないと思っていた。もし体育館で藍沢さんを見つけてしまったら、動揺が光にばれてしまうかもしれない。その動揺を気づかれて、またからかわれるかも、と思うと、できる限り近づきたくないと思ったのだ。
僕はそんなことを考えながら、光と一緒に校舎からの渡り廊下を通って、体育館を訪ねた。
「今は基礎練だから大丈夫。どうしたの?高城くん。体育館なら今週はちょっと無理よ?」
ダムダムと、腰を落としながら足元でバスケットボールをドリブルしている知念さんは、ほがらかに答えてくれる。知念さんは体育館の入り口のところにわざわざ来てくれた。その位置は体育館の中が見えづらい位置で、僕は正直ほっとした。
「いや、違うんだ。まぁちょっとそれもお願いしようとはしてたんだけど…。明日雨なんだよね。体育館ダメかな?」
光は、キーボックスの質問をする前に、知念さんがふってきた話題を継続することを優先した。体育館の利用申請は、キャプテン同士の交渉によって、その権利が得られるらしい。
「実は先週の金曜日もバドミントン部に譲ったのよね。それで全然練習が足りてなくて。週末に練習試合があるから、本当に、明日は、ダーメ!」
知念さんはそう言って、バスケットボールを胸の位置に持ってきて、光に向かってパスをした。
「そっか、じゃあ仕方ないな。次は賄賂を持ってくるよ。」
そういって、光がボールを知念さんに返しながら、嫌味のないウインクをすると、知念さんは、ボールを受け取りながら「それは楽しみ!」と言って、くしゃっと笑った。
「で?この用事がメインじゃないんでしょ?」
知念さんは、光の後ろにいた僕をちらっと見ながら、本来の目的へと話を戻してくれた。光は、僕を振り返ったあと、知念さんに向き直り、質問をした。
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