第六話
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僕が携帯を取りに行っている間、職員室の外で待っていてくれた光に事情を説明すると、「それはミステリーだな。」と言って、興奮しはじめた。
僕が、あの携帯がなくなることに関して、特に感情を持っていないことを伝えると、光は少し考えて、僕に詰め寄った。
「ちょっと待て、薫。あの携帯が行方不明のままだと、ゲームの引継ぎができないぞ?」
光の詰め寄り方が、少し怖くて後ずさりながら、それもそうかも、と僕は思った。最新機種に変更できるかもしれない、という期待の方に気がいってしまっていたが、言われてみればその通りだった。あのゲームは、光から誘われて始めたゲームだったが、無課金でコツコツと頑張り、今ではそこそこのレアアイテムが集まっていたのだ。
「あー、忘れてた。あのアカウントを無くすのは惜しすぎるな。」
「そうだろ?俺たちも探そうぜ?」
「僕たちで探すのか?」
「そうに決まってるだろ。俺たちで探したって別にマイナスにはならないんだから。むしろ情報がより集まるんだから、プラスにしかならないってことだ。そうと決まったら聞き込み調査だ!」
光はそう言って、くるりと振り向いたかと思うと。職員室に背を向けて歩き出した。
僕はやれやれと、思う。光が張り切る時は碌な事がないのだ。
「俺、遺失物ボックスの鍵の場所、知ってるぜ?ていうか、生徒で知ってる奴、結構いっぱいいるんじゃないか?」
「え?そうなのか?」
僕は、職員室から教室に戻る途中の廊下で、さっきのクマ先生との会話の内容をそのまま光に話すと、意外な答えが返ってきた。
「あぁ、職員室の入り口横のキーボックスあるだろ?あそこ。別に遺失物ボックスの鍵としてわざわざ教えられないんだけどさ。鍵に名前が書いてあるから、わかる。」
「そうなのか?でもあのキーボックス自体に番号式の鍵がかかってるじゃないか。」
僕は、職員室の壁に設置してあるキーボックスを思い浮かべながら、鍵の場所がわかっていたところで、「誰でも鍵を使える状態」ではないことを強調する。だが、光の話はそれだけではなかった。
「休日に学校を使う部活のキャプテンだけ、先生からそのキーボックスの開錠番号を内緒で教えてもらうんだよ。」
そう言って、野球部のキャプテンでもある光が衝撃的なことを言った。
「そうなのか?!」
「あぁ、休日に学校を使う部活は、たまに顧問の先生より早くきて部活の自主練を始めたりするからな。野球部と女子バスケットボール部と吹奏楽部とバドミントン部のキャプテンが知っているはず。手芸部とかは平日しか活動してない。」
光は松原中学の部活で、休日に活動している部活を指折り数えて教えてくれた。
「意外に少ないんだな。」
「あぁ、基本的に顧問不足だから、休日の部活動は強豪の部しか許されてないんだとさ。それに、鍵の番号は一年に一回更新されるから、当代のキャプテンしか開けられない。じゃあ、まずはそれぞれのキャプテンに話を聞きに行くか。」
そういって光は、校舎の二階の二年生の教室に向かっていった。
今はちょうど三年生が部活を引退して、高校受験に専念している時期だ。多くの部活がキャプテンを二年生に引き継いでいるという。僕たちは、野球部のキャプテンである光を除いて、女バスと吹奏楽部とバド部の三人に話を聞くことした。
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