第十六話
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僕は、バドミントン部が練習しているグラウンドの端に向かった。今日は女バスが体育館を占領しているので、バドミントン部は外のグラウンドで基礎トレーニングと素振りをしているそうだ。
「ごめん、清水さんを呼んでくれないかな?」
僕は、近くにいた部員に清水さんを呼んでくれるように頼んだところ、呼ばれた清水さんはびくっと体を飛び上がらせ、こちらを振り向いた。
呼び出されると思っていなかったからか、焦りで口をパクパクさせながら、早足でこちらに向かって歩いてきた。
その後、清水さんと僕は、体育館裏の人気がない場所に移動した。そこにある大きな木の陰には、光と剛田くんが隠れている。ここなら会話は聞こえないだろう、というところで止まって、お互いに向き合いながら話をした。
「何かしら?」
清水さんは僕と目を合わせることなく、下をむいて答える。
「僕の携帯、持っていたら返して欲しいんだ。黒いケースに、アイドルのステッカーが貼っているやつなんだけど。」
僕は、前置きもなく単刀直入に呼び出しの目的を伝えた。清水さんは、僕が携帯を探していることを知っていたはずだから、きっと何もかもわかっているに違いない。
「……。」
永遠に感じられるような数秒間の沈黙の後、ようやく清水さんが僕と目を合わせた。
「なんで、私が持っているってわかったの?」
少し震えるような声から、清水さんが勇気を絞り出しているのがわかる。もしかしたら泣いているかもしれない、と思わせるほど、小刻みに肩が揺れている。
「ごめん、泣かせるつもりはなかったんだけど…。二限目に剛田くんが遺失物ボックスに僕の携帯があることを見ていたんだ。それで、盗んだ人は昼休みにキーボックスをあけた女バスの知念さんか、五限に開けた清水さんのどちらかに絞られた。それで…」
清水さんは、もしかしたら本当はそれを望んでいなかったかもしれないが、僕は推理を続ける。
「それで、遺失物ボックスから無くなっているのは僕の携帯だけじゃなくて、マジックに似たリップグロスも無くなっている、ということに剛田くんと光が気付いたんだ。知念さんは遺失物ボックスにマジックがあったかも、と証言していた。だから、清水さんが怪しいと気づいたんだよ。それに、さっき僕と光が一組の教室に行ったとき、もしかしたら僕たちの姿を遠目でみて、急いでトイレに駆け込んだんじゃないかな。そして、出てきた時には少し唇が光っていたように思ったんだけど…。」
「していたわ…トイレでグロスを塗ったの…。」
清水さんは観念したのか、真っ赤になりながら、消え入りそうな声で認めた。
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