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騙す者、騙される者

お読みくださる方へ感謝を。

新規で評価、ブックマーク、誤字報告、感想をくださった方へ重ねて感謝を。

「……以上をもちまして、ご挨拶に替えさせて頂きます」

 堂々とした語り口が終わると、周囲からは大袈裟なほどの拍手が響いた。


 バーモンが壇から離れると、彼に向かって人が群がる。

 老人が彼の背を叩く。

 白いあごひげを蓄えた老人。

 バーモンとは、やけに親しげだ。


「連盟支部長だ。彼にとってもDBWの社長は『大切な友人』らしい」



 引力。


 大きな『ちから』を蓄えた人間は、本人の希望や彼我(ひが)の善悪に関係なく、他社を()きつけてしまう。

 まるで、惑星が引力を持つかのように。

 バーモンの周囲に集まる人間を見ると、その権力(ちから)の大きさが嫌でも分かろうもの。

 彼は、今、この会場において、空間の中心――太陽のような存在だった。



 つまり、何が言いたいのかと言うと


 僕みたいな根暗には眩しくて熱くて近寄りがたいって事ですよぉぉぉ!!


(固まってる場合じゃないぞマジロ!ホラ行け!)


 マスターがひそひそと声をかけつつ、文字通り僕の尻を叩く。


(ここまで来て逃げるのは男らしくないぞマジロ君!)

(今は女です)

(そういう言葉遊びはいいから覚悟をキメたまえ!)


 先生まで急かしてくる。

 ええい、死ぬのに比べればためらうようなモノじゃない!

 僕らはバーモンに近づく。

 人と人の隙間を縫うようにしながら。


 そして彼の前にたどり着き、大きくお辞儀をした。


「初めまして、バーモン社長」


 声の出せない僕の代わりにマスターが声をかける。


「ん?おお、初めまして、お嬢さん(レディ)。連盟に貴女のようなお若い女性がおられるとは思わなかった」

「ふふっ、アネッツァ・インテナードと申します。バーモン社長には以前よりお会いしたいと思っていました」

「それはそれは光栄ですな。バーモン・マキャベリ・ダッチです、よろしくどうぞ」


 2人がサッと挨拶を交わす。

 両者とも手慣れた様子で、所作に迷いなく爽やか。

 (はた)から見ても良い印象を持ってしまう。


「こちらは執事のヤマガミと……私の友人、マデロです」


 マスターが僕らの紹介を始めた。

 こちらに向けられるバーモンの視線と目がかちあう。

 うう、人に注目されるのは慣れていない。

 思わず顔に血がのぼり、目を伏せるように深く深くお辞儀をしてしまった。


(マジロ君、目を伏せていては始まらないぞ!自分からアッピルを!)


 わかってはいますけど、ちょ、ちょっと緊張して……。


 そうこうしていると、バーモンが言葉を漏らす。


「いい……」


 !?

 思わず、彼の顔を覗いた。

 若干の恍惚が見える。


「ああいや、失礼。どうもワタシの周囲には積極的な女性が多かったからか、マデロさんのようなシャイな方が新鮮で。いやしかしお綺麗な方だ。どことなく中性的でありながら線の細さを感じるセクシーさと、赤くなったお顔のキュートさが相まって……」


 どうやら僕の姿や挙動が、バーモンの性癖に深く刺さっているみたいです。


「どうですか、マデロさん。よければウチに来てお話など」


 すごいグイグイくる!

 行動力ありそうな人だとは思っていたけどすごいな!

 でもお話って、喋ったら流石にバレるのでは……。


「少しよろしいでしょうか?」


 そう言ってマスターが僕を掴んでコソコソと何かを取り出す。


「『鳴きマネ』の魔法薬だ、これを使えば女性の鳴きマネ……もとい声マネができる。ただし効果時間は十数分だけだ。その間になんとかしてバーモンから『購入者目録』を引き出させるんだ。こちらもできる限りのサポートはする」

「マスター……僕にそんなトーク力があるとでも?」

「うじゃうじゃ抜かすな!失敗してもいいからとにかく行動せい!自信はそうやってつけるものだろ!」

「うぐ……おっしゃる通りで」



 そんなわけで懇親会からしばらくして、マスターと先生から離れてバーモンの屋敷へ。

 会場の目と鼻の先に屋敷があってよかった。

 時間がかかるようなら移動中無言にならざるをえない所でした。


「……とまあ、そんな事がありまして……」

「ハハハ、マデロさんは変わったお方だ。だからこそ惹かれているのかもしれませんなあ、ワタシも」


 道中、嘘の話のタネで嘘の花を咲かせていました。

 この世界に来る以前、飲み会上司の質問攻めに対応しつつ、プライベートを晒さないために鍛えた嘘エピソード(りょく)がこんな形で活きるとは思わなかった。



 屋敷へ辿り着き、さっそく私室へ……って、いくらなんでもスムーズに行き過ぎてないです?


「いやはやレディを歩かせてしまって申し訳ない、ワインで喉の渇きを潤してください」

「……お気遣いありがとうございます」


 毒を盛られる可能性を警戒したけど、ワインはコルクを抜くところからでした、ふう。

 一応グラスを確認。

 フチに異常はなさそうだ。


 アルコールは苦手だしあまり積極的に飲みたいとは思わないけど、ここで断るのも失礼かなあ。

 どうもこういう社交辞令的なヤツは苦手……。

 全部グイッと飲むと男らしすぎるので一口分だけ。


 しかしここからどうやって目録を引き出すというのか?

 ええいままよ、自信をもって挑め!


 とりあえず……涙を流す!

 顔を隠してあくびを嚙み殺して、出た涙だけを見せる!


「マ、マデロさん!?どうしたのですか!なにかワタシが粗相を!?」

「いえ、バーモンさんに罪はありません。むしろ罪深いのはこの私……」

「どういう意味です?」

「実はバーモンさんに近づいたのは理由があるのです。とある杖の購入者目録を見せてもらいたいのです」

「目録を?」

「はい、私には生まれたころに離れ離れになった父がいるのです。今まで彼の名も知らないままで生きていきましたが、彼が私の生まれた年にDBW社製の杖を購入していたと聞き……」

「なんと」

「バーモン社長、許してほしいとは言いません、ですがどうかお願いします!目録を見せてください!」


 我ながらコテコテの嘘と思うし、矛盾が無いわけではないけど今はこれが限界。

 これ以上できることは全力でかわい子ぶる事!

 いままでの人生で愛嬌を振りまいたことのない僕の愛想をくらえっ!!


「うむ……個人情報の保護は顧客との信頼に関わる大事なことではありますが……」



「まあ、顔も知らない者に見られるわけではないし……他言無用でお願いしますよ」


 やった!話の分かる人と言うべきか、もっと警戒すべきというべきか。


「ありがとうございます!このお礼は……」


「お気になさらないでください」




「お礼はすぐに頂きますので」


 えっ


 どういう……と立ち上がろうとした途端、脚が上がらなくなり倒れる。

 床にカエルみたいに倒れて手足が動かない。


 ど、毒!?

 しかしそんな様子はまったく!


「いやあ、よかった……毒入りのワインを業者から買っておいて本当によかったよ」


 業者がそもそも毒入れてんの!?そんなのアリ!?

 そしてそれを購入するアンタもアンタですよ!

 やけにスムーズに事が進むなと思ったらこれが狙い……!

 騙そうと思ったつもりが騙されていたのはこちらの方だったッ……!!


 まさか、バーモン社長が『敵』だったなんて!

 このままでは僕の命が!


 と、思いきや。

 バーモンにそのままベッドに運ばれ、乗せられる。


 そのまま服を一枚一枚丁寧に脱がされていく。


 ……これ、もしかしてヤバいのは命ではなく貞操なのでは……????????


『これは僕が、凸凹の凹にされかけた時の話なのですが……。』

お読みいただきありがとうございます。

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