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女装作戦、準備中

 先生が宿の一室の窓を空けて、曇り空の下で走る風を室内へ取り入れる。

 すると、外気がふっ、とヒゲを撫でて挨拶した。


「今日は少し肌寒いね……」



「つまり絶好の女装日和な訳だ」

「女装に日和もクソもあるもんですか!なんですかこの前フリ!」

「知らないのかいマジロ君、女装は冬の季語だぜ?」

「堂々と大嘘をつくな!!」

「いや待てマジロ、あながち頭から否定できた話でもないのかもしれん。『季語』というのが季節を示す言葉だというのなら、一考の価値はあるぞ。知っての通り女装をする時の注意点として『骨の露出を抑える』というのがある。喉頭結節(のどぼとけ)、肩、膝、指などが特に目立つ点だな。本格的に女のフリをするならこの辺りを隠しておかないと見破られやすい。体のアウトラインをごまかしやすいモコモコのタートルネック+ロングスカート+手袋の組み合わせは女装においてベターな選択肢と言えるだろう。しかし陽気あふるる春や夏にそんな恰好をしては別の意味で変わった格好をしていると怪しまれるだろう。つまり寒い時ほど骨をごまかしやすい格好がしやすくなり、一番寒い季節は何かと言われればもちろん冬なわけで、結論として」


「掘り下げるような話題じゃないでしょ!!!正気に戻れ!!!」

「マジロ君こそいいかげん観念したまえ!君の女装に世界の命運がかかっているかもしれないんだぞ!」

「不甲斐なさすぎるでしょ世界!」



 室内にじゅうぶんに行き渡った寒気に怒気が混ざり熱を帯びる。

 しかしそれ以上に僕のアタマがフットーしそうなんですが。


「下着まで女物にする必要ありますゥ!?」

「いいかマジロ、お前は女を装わなくてはいけないんだ。それは身体だけじゃなくて一挙手一投足に至るまでも、ということだ。動作まで、動作を決める意識まで、意識を決める心まで女になりきらなくてはいけないんだ。女の心を知るのに下着が男のままでいいわけがあるまい!下着をナメるな!ちゃんと履け!」

「パンツは譲歩できても……ブラは要ります!?」

「パッドを入れて豊かな乳を演出するために要る!大きな乳は女の欠点を隠すためにあるもんなんだ!(※諸説あり)これで大部分の男っぽさは誤魔化せる!」

「大概の生物は本能的に揺れる物を注視するものだよマジロ君、巨乳の女の子ばかり出るゲームでゲームシステムや世界設定をなかなか覚えられないのと一緒さ」

「何をとは言いませんがそれだいぶ愚弄してませんか!?」


「いやしかしマジロは骨格がだいぶ女の子なんだよな、尻のハリも良かったし。声聞くか性器の大発見かをしてなければ女と勘違いしてもおかしくないくらいに。あまり着飾らなくてもいいのは本当にありがたい」

「女性になるのを助成する手間が省けるね」

「うまい事言ったつもりですか」

「古来より東西を問わず中性的であることは神秘的であるとされていた。悪魔や天使は性別を持たないか両性を持つかが多かったし、ヤマトタケルは女装をして敵を襲い、アマテラスは男装をして戦いに挑んだ。ヘラクレスはアキレウスだって女装をしていたという記録もある。女装が似合う事はもしかしたら英雄であることの条件の一つなのかもねえ」

「世界史に思いをはせている場合ですか!わかりましたからもうさっさと着替えてさっさと済ませましょう!」


 毒も喰らわば皿まで。

 女装もすれば下着まで。


 マスターに命令され、嫌々ながらも女装が完成しました。


 肌露出の少ないシックなドレスに長手袋、ウイッグに帽子。

 化粧はファンデーションに薄めのリップにアイライナー。

 我ながら、よくもまあこんなにおめかししたものですねと。


「いやあ~やっぱ素材がいいからあんまり余計な手くわえなくても全然女っぽくなるな!なんでこう他人の化粧ってこんなに楽しいんだろうな?自分のはかったるく感じるのに」

「そういや今更ですけどマスター、化粧とかオシャレとかちゃんとできる人だったんですね」

「そらそうよ、アタシだって着飾らなきゃならん時があるからな。それにアタシは見た目が他より若く見えるから。あと美人だから。研究のため生活のためには魅力だって利用するさ。今回のパーティーみたいにな」

(したた)かな人だ、文字通りに……」

「さ、見せてみよう!」


 マスターが僕の手をとって、別室で待つ先生の元へ引っ張った。


「じゃーん!どう、どう?だいぶ綺麗になっただろ?」


 はしゃぐマスターとは裏腹に、僕を見る先生の顔はボーッとしていました。

 まさか……見惚れた!?

 いや違うカンジがする。

 呆然(ぼうぜん)、という言葉の方が似あう顔。


(やはり……似ている……)


 唇の動きは、そう言っている様でした。


「感想くらい言えよォ!ヤマガミぃ!」


 今まで聞いたことないくらいウッキウキなマスターの声で先生も気が付いたようで、


「あ!ああ、うん。充分騙せると思うよ!」


 と慌てて返していました。

 似ている?誰に?

 と、聞いて、いいものか、否か。


 質問をためらっている内に、マスターが僕らの背中を叩いて発破をかけてきました。


「よし、マジロに女子の心構えを教えたかったが、残念ながらそろそろ出発の時間だ!女装したマジロでDBWの社長を堕とす作戦、略して『マジロメス堕ち作戦』!気合入れてけー!」

「応ッッッッッ!!!」


「その名前は語弊があると思うんですけど」




お読みいただきありがとうございます、お疲れ様です!

次回もなるべく気持ち早めにお出しします

ちょっとでも楽しめた方は応援してくれると幸いです!

ブクマ、高評価、評価、感想などみなさん感謝です!

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