表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/68

決着、血戦、アイウート

「ドレイクの時と同じく、たとえ大型でも一匹じゃあコイツら仕留めきれねえな」


 アイウートは吐き捨てるようにため息をついた後、倒れた賊を踏みつける。


「なら手数で()し潰すまでだ」


 そう言って『血の鮫』の時と同様に、僕らに向けて指をさす。


「よく見ておけ……お前らが噛みちぎる肉の顔を……!」


 周囲に浮いている大量の『血の魚』が牙を見せてこちらを向く。

 こいつらがすべて襲い掛かってきたら、背負ってるマスターを守り切れるのか!?

 急速冷凍(フリージング)で一匹凍らせたところで攻め手は止まらないだろう。

 それにマスターの魔力も、魚を全て凍らせるほど残ってないのはず。

 同様の理由で魔法障壁も使えない。

 守りに入ってる余裕はないんだ。

 攻めなければ!

 しかし、僕らとアイウートの間にはかなりの距離がある。

 普通に突っ込んだのでは魚の餌食になるだけだ。

 どうする。



 と、背中のマスターが薬を取り出してグイと飲みだした。


「マスター!?」

「騒ぐな、ただの魔力補給の薬だ。とはいえ補給できる量は微々たるものだが」

「あっ、はい」

「ヤマガミ、お前も一応飲んどけ」

「良いのですか?」

「1人が大量に飲んだからって、すぐに全部魔力に変換されるわけじゃないからな」


 渡された薬を先生もグイと飲んだ。

 薬が苦かったのか、マスターが渋そうな顔をしながら他の薬を取り出す。


「お前も使え、重症治療のポーションだ。外傷用だが打撲にもそこそこ効く」

「……マスター、他に薬は?」

「賊相手に使った神経毒がまだ少し、あとは『微浮遊(レビテーション)』『生命感知(ライフセンサー)』『毒耐性(レジストポイズン)』『火炎耐性(レジストファイア)』……」


 色とりどりの薬液が入った瓶が並ぶ。


「ううむ、毒以外はどれも使えそうにありませんな……その毒にしたって術者にしか効果は……」


「……使いましょう!」


 僕は薬を指さして言った。

 そして、今ひらめいた作戦を2人に伝える。


「むう、これは……賭けになりますな」

「私は良い案だと思う!信じるぞ!マジロの方を!」

「お願いします、先生」

「……わかったよ、それしか案も無いしね」


 マスターを背中から降ろして僕らはアイウートの方を向きなおし、構える。




 一瞬の張り詰めた空気のあと、僕と先生は走り始めた。

 と同時に、アイウートも『血の魚』に命令して放つ。


「マスター!」

「おう!」


 マスターが薬の入った瓶のふたを次々に開け、魔法をかける。


霧化(ネビュライズ)突風(ガスト)!」


 薬液は霧となり、風に乗ってアイウートへ向かう。

 当然、マスターとアイウートの間にいる僕らも霧に包まれるが――息は止めない。


「なっ……!?」


 アイウートの動揺するような声がかすかに聞こえた。


 魚たちと僕らが衝突する前に、その周囲は色を持った霧に包まれる。

 魚は僕らを見失ってしまった様子だ。

 やっぱりそうだった!

 さっきアイウートが魚たちに『よく見ておけ』と言ったのは、魚が僕らを眼で判別しているからだったのだ。


 であれば、視界を遮れば避けることはできる!

 当然、僕らの視界も遮られるし、アイウートもずっと同じ場所には留まらないだろう。

 だけどこの霧にはさっきの『生命感知』の薬も混じっている!

 僕はスウッと息を大きく吸って、薬を体内に取り込む。


 ……感じる!

 床に転がる弱くなった生命とは別の、大きな生命を!


 襲ってくる『血の魚』が本物の生物であれば、薬の影響で僕らを見つけられただろう。

 けどそうじゃない、だから毒も薬も効果が無い。


 魚達の隙間を縫って、僕と先生はアイウートへ近づく。

 そして、僕らの攻撃が届く距離まで辿り着いた!


 僕は盾を構えて、剣を振り上げる。

 声には出せないが言ってやる!くらえ!!




 次の瞬間、僕の身体を無数の刃が切り裂いて、吹き飛ばした。


「がっ……!」


 床を転がる僕。

 切り傷と擦り傷で全身がズタズタだ。

 それでも顔をあげて、アイウートの方を向く。


 アイウートは、血液でできた鎌のような刃を、周囲にまとわせていた。


「学習してねえのか?それとも俺を学習できん奴と侮ったのか?なあ?ああ!?」


 この男と最初に戦った時に、こいつが先生に使っていた『血の刃』だ。

 それが大量に、こいつを護るようにして囲っている。


「お前らが視界を遮った時点で、『血の魚』の大多数を刃に変えて守らせた。今度は跳び蹴りを喰らわんように、大量にな……」


 ここでやっと、霧が晴れた。

 視界の奥の方で、先生もまた僕と同様に倒されていた。


「先生……!」

「こいつの魔法槍はさっき見た。要は斬撃を刃でいなして、火は血で消せばいい」



「この程度のちゃちな作戦しか思いつかない極小の脳で!よくまあ我が神(マイゴッド)に歯向かおうなんて思ったもんだなあ!!ああ!?」


 アイウートは僕の身体を何度も踏みつける。

 そしてその後、ナイフを取り出した。


「さっきも言ったが、お前らは苦しんで殺すぜ!……呪術に使う分の血は、俺が直接傷つけてできた血じゃないと使えないからなぁ……コイツで両手両足爪の間まで刺して!斬って!血を流させて、その血から魚を作ってじっくりと末端から食い破らせてやる……!!」


「ぐっ……マジロ…くん……!」


「ジジイ!てめぇもしっかり見てろ!仲間の死に様をなァーッ!!!」




「どうやらキミの…勝ちだな……!」



 ビュン!!

 と風を切る音がして、アイウートの身体に無数の矢が刺さる。


「あ…が……何が……」


 (うめ)くアイウート。

 号令が響く。


()てェェーーーーー!!!」


 賊の頭目の命令で、アイウートに追加の矢が突き刺さる。


 周囲を見ると、賊たちは立ち上がり、ボーガンを構えてアイウートを包囲していた。


「なっ!?てめぇら……俺が手足を斬ったはずだ……立つも打つもできる状態じゃ……!」

「そのはずだったがよォ、あの霧を吸った瞬間傷が塞がってよ…」

「!?」

「血ィたっぷり抜かれて、正直フラフラだが、もう痛みも治まりつつある…!この距離なら外さねえぜ……!」

「そ、そうかあの霧……!」


 先生が僕に肩を貸し、立ち上がらせながら語る。


「そうとも、あの霧には重症治癒のポーションも混ざっていた。霧に混じって奇襲する作戦は成功するとは思っていなかったさ。それよりもその奇襲を囮にして、賊たちが霧を吸って回復する時間を稼ぐ目的があった。……正直、賊がお前(アイウート)を優先して攻撃する事を優先するかは賭けだったけどね。私はそれより逃げるんじゃないか、と思ったが」


 アイウートの身体から血は流れなかった。

 矢は、刺された時じゃなくて引き抜いた瞬間に血が出るもの。

 だけど奴は痛みのせいか、それすらできる状態ではないみたいだ。


「人任せの危ないバクチというか、人を信じるマジロ君らしい作戦というか……」


 勝ったんだからいいでしょ、と言いたいけど、痛みで喋るのもつらいので、代わりに軽く微笑んだ。

 マスターが僕らに走り寄ってくる。


「大したもんだよ、君は。さ、少し離れよう」

「2人とも、生きてるか!?」


 やっぱり喋るのが辛いので、マスターの声にVサインで返事をした。



 アイウートが倒れる音が、聞こえた。


よければ高評価感想ブクマ、ぜひよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ