背負う僕、切り分ける先生
「よし!作戦開始だ!」
ザン!
と剣と盾を構えた僕。
槍を構える先生。
そして僕の背にしがみつくマスター。
「マジロ、重くないよな!?」
「飛んだり跳ねたりはキツイですけど、いけます!」
「素直に返しよる」
「へ?」
「いや、いい。行くぞ!」
マスターの掛け声と、魔法障壁を解除を合図にして僕らは動き出す。
僕(と背中のマスター)は『血の鮫』に向かって直進!
先生は僕らの動きから一拍置いて鮫の横へ。
予想通り、『血の鮫』は僕を狙って牙を向けてきた。
やっぱり以前戦った時の『血の魚』同様、この血も単純な命令で動いているだけだ。
おそらく『術者が指定した方向にいる、一番近い敵を狙え』くらいのものだろう。
であれば攻撃自体を避けるのは困難でも、狙う相手を制御するのは容易だ。
攻撃方法も『噛みつく』以外には(たぶん指示されない限りは)やらないようだし、それなら!
僕は、鮫の口に腕を突っ込み、盾と剣を挟んで、開くように腕に力を込めて噛みつきを止めようとする。
が、ギギギギと鈍い音がしてゆっくりと盾と剣がへし曲がっていく。
鮫の噛みつきの威力は、その鋭い牙による所が大きく、噛む力自体はワニより劣るらしい。
だから恐らくは、こうすれば噛みつきを止められるはずだ。
と、先生は言っていた。
でもそれは現実の生きている鮫の話だ。
希望的観測だ。
僕の目の前には、剣と盾を噛み潰しそうな鮫がいる!
腕まで突っ込んでいる以上、もし噛み切られたら……!!
でも、それでも最悪じゃない。
時間は稼げている。
ほんの一瞬、マスターが鮫に触れるだけの時間を。
「急速冷凍!」
マスターが触れた鮫の頭部が、チリチリカキカキと音を鳴らしながら凍っていく。
その冷気が剣と盾にもうつった瞬間僕は腕を引き抜く。
これで鮫の噛みつきは封じられた!
だがそれでも、攻撃そのものを封じられたわけではない!
『血の鮫』は、先ほどマスタ-相手に披露した、体重を込めた頭突きで僕をふっ飛ばした。
いままでの人生で、自動車との正面衝突事故にあった事は無いけど、きっとこんなカンジなんだろう。
全身にヒビが入ったような骨の軋み。
そしてそこから少しして感じる痛み。
なんとか横倒れになって、背中のマスターにダメージが行かないようにするので精一杯だ。
そのマスターが僕を掴む力も弱くなっていた。
魔力の使い過ぎは身体にも負担がかかると聞いている。
きっと先程の鮫のタックルと魔法の連続で、マスターの体力はかなりギリギリなんだ。
体力にはまだ余裕のある僕が、マスターを背負って戦うという先生の案は的確だったと思う。
僕がマスターをしっかりとおぶって立つと、既に鮫が2撃目を加えようと向かってきていた。
避けようとするが、先程の頭突きをモロに食らった体では……。
クソッ!動け動け早く動け!動けっ!!
突撃する鮫の、凍った首に……文字通りの『横槍』が入った。
「先生ッ!」
「ずおおおおおおおおおっっ!!!」
先生の槍の刃が、鮫の首を、シャーベットをスプーンで削ぐように深く斬り込まれていく。
「魔法の矢が貫通したのを見て予想はしていたが、やはりだ!この鮫の身体は重いがそんなに固くない!おそらくだが血を固くするための呪力を牙に集中させていたんだ!」
刃がさらに深く鮫の首を切り分け、ついに鮫の首は完全に切断された。
切り落とされた首はビクンビクンと小さく跳ねるが、凍っているせいで体とくっつくことができない様だった。
首を失った鮫の身体がグムグムとうねり出した。
新しい頭部を作ろうとしているんだ!
やはり鮫なのは形だけの事、こいつの本質は血液と呪術の塊!
……だけど、変形しようとする今なら隙はある!
「マジロ君!」
先生が、懐に忍ばせていたナイフを僕に投げ渡す。
僕はそれを受け取り、大きく呼吸を整えて痛みに耐える。
そして、先生と一緒に鮫の身体をとにかく斬りまくった!
「「っだああああああああああああッ!!!!」」
そして鮫の身体にできた傷穴に手を入れて、身体を構成する血を掻きだす。
どういう理屈かは分からないけど、掻きだされて飛散した分の血は戻ってこない。
これもさっき魔法の矢が鮫を貫いた時に確認済みの事だ。
とにかく今は体力と気力の続く限り、攻撃あるのみ!
もっともっともっと動け動け勝つ為に生きる為に死ぬ気で動け!!!
呼吸もままならないほどに攻撃を続け、鮫は大型犬ほどの大きさまでしぼんだ。
血まみれの先生は槍を持ちなおして、刃を鮫に刺し、『竜頭』を発した。
鮫はもがきながらも沸騰して、蒸発して、さらに身を縮め、やがて……消えた。
「や…やった!」
つい、そう言ってしまった。
こちらも無傷とはいかなかったけど、あの脅威的な鮫を消し去る事に成功したんだ!
僕は……
「避けろ!!」
!?先生の声!
僕は右斜め前に向かって倒れるように伏せた。
瞬間、僕の上を小さな何かがかすめたような気配を感じた。
何が!?
その気配を目で辿ると、そこには『血の魚』がいた。
ハッと気づき、バッとアイウートの方を見る。
「『鮫が消えた』……だからどうしたってんだ……!」
『血の魚』が群れを成してアイウートの周囲を漂っている。
多い。
以前戦った時よりも、多い!
「こっちには血の詰まったクソ袋がまだあるんだぞっ!こいつらが出血多量で死ぬ前に俺を殺せるか!?ジジイ以外はもうボロボロみてえだがなあ!ああ!?泣いて我が神に許しを乞うか!?まあなにしようがお前らは殺すがよ!できる限り苦しめてサァ!!」
まだ……まだ終わってない!
分かっていたはずなのに、考えたくなかったのか、僕!
どうする……どうする!ボロボロの僕に、まだできる事はあるのか!?
勝てるのか!?生き残れるのか!?!?
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