またも再会、そして成長
頭目の叫び声が響いた後、スッと人影が姿を現した。
痩せこけてギョロリとした目の男。
あの呪術師だ!!
服と手に持ったナイフには返り血が付着していた。
鮮やかな赤色は、その血がたった今流れたものである事を示している。
恐らくさっきの叫び声は切られた時の悲鳴だったのだろう。
でも、なぜ頭目を切った……?
「ただの逆恨み野郎じゃ仕留めきれんか、ケッ」
マスターの毒霧で動けなくなった賊の頭を、呪術師がボール遊びみたいに蹴り飛ばしながら言う。
「貴様、たしか『アイウート』と言ったか」
「チッ、あのデブ仕留めそこなった上に情報まで吐いたのか。役立つどころか足引っ張るカスめ。やはり金で雇われた連中や、こいつらみたいな逆恨みで動く奴はダメだな……我が神を思う気持ちと使命感が足りないからこうなるんだ!低俗なんだよなあ、俺以外どいつもこいつもォ!ああクソ!イライラするなああーーッ!!」
先生の問いに答える気は無さそうだ。
急にキレだしたアイウートは、そのナイフで賊を切りつけ始めた。
「このっ!カスが!クソが!底辺が!無能が!」
賊の悲鳴と血が流れだす。
さっき頭目を攻撃したのも、単にうさばらしだったのか!?
賊も悪党、とはいえアイウートに裁く権利があるわけじゃない。
「やめろ!」
僕の声を聴いて、こちらをギョロリと睨みつけた。
「そもそもがお前らだ!なんでまだ生きてんだ!お前ら殺すのにどんだけの手間と人を割いたと思ってんだ!その上なんで我が神を追うようなマネをしやがる!?ビビって逃げるって選択をなぜ取らない!?……まさかお前ら、我が神の目的に気づいているのか!?」
僕らは黙って戦闘態勢を取る。
「否定しないってことは、肯定してるのと一緒だ。……そうかお前ら、我が神の邪魔をしようっていうんだな」
アイウートの顔がさらなる怒りで歪む。
「改めて誓いましょう!我が神のため、俺の安寧のため!!お前らは殺す!!苦しませて殺してやる!!」
爆発するかのような殺気が飛んでくるのを感じた。
アイウートは両手に力を込めて何かを呟く。
呪術か!?
いや、しかし……。
そういえば、以前奴自身がズタズタした右腕は、自由に動いている。
傷跡こそ残るものの、今現在は血の一滴も流れている様子は無い。
『呪術は血と痛みを使うもの』とマスターは言っていた。
この状態でも使える呪術があるのか!?
と、地面にこぼれた賊の血がビクンと跳ねた。
「まさか!?」
マスターが驚くと、その血は『血の魚』の形に変わった。
「呪術は、術者の血と痛みを用いる術のはず!?」
「反省して、深く学んだんだよ。『術者以外の血と痛みを利用する呪術』をな……。今まで俺が出張らなかったのは、回復もだが修練に時間をかけていたからだ。もう二度と、我が神にお手間をかけさせはしない。あの時かけてくれた『慈悲』……あれだけで俺は戦える!この身消滅する、その時まで!!」
さっき頭目や賊を傷つけていたのは、憂さ晴らしだけじゃなかったんだ!
「少しくらいは役に立って貰おうか!!」
賊の身体から湧いた『血の魚』はどんどん数を増えていく。
そしてその魚達は、粘土を転がすかのように混ざり合っていき、一つの形を成していく。
魚より大きく、見るからに凶暴な牙を持ったその形。
これはまさしく、『血の鮫』!
…正直言うと、僕は高を括っていたのかもしれない。
『敵』はきっと『悪』だから、強欲で、怠惰で、高慢な奴らだと。
成長なんてしないものだと思っていた。
だから、成長し、学び、強くなっている僕らならきっと勝てるって、楽観視していた。
でも違った。
世の中はそんなに単純な善悪に分かれているわけじゃないし、敵だって成長していたのだ。
僕らは、僕は、この男を超えられるほど、成長していたのだろうか!?
『我が神』を崇拝する、濁り無く黒い意志の元で培った成長を!
「全員とまでいかずとも、まずは1人!ブッッッ殺してやる!!!」
『血の鮫』が、僕らに向かって襲い掛かってくる!
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