迫る矢、魔法、成長
先生とマスターはハッとして武器を手に取り、それぞれにボーガン賊を攻撃する。
先生が『竜頭』でボーガンを砕き、マスターが魔法の矢で2人、手を狙って構えを崩した。
これで一気に打開の目が出た。
しかしまだ3人のボーガン賊と頭目がいるし、時間をかければ攻撃された賊も痛みに慣れて構えを取り直すなり他の武器を使うなりしてくるだろう。
であれば速攻あるのみ、僕も…
「なにやってる!早く撃てェ!」
しかし頭目の号令で、僕に向かって矢が放たれる。
こうなる事は分かっていたとはいえ、やっぱ怖い!
ボーガンの威力ってどんなもんなんだろ、昔は狩猟でも使われていたそうだし最悪死ぬ可能性もあるよね。
せめて急所に当たらないように顔と胸を腕で……股間もガードしたいけど足を止めるわけには……!
「マジロッ!」
矢と同時くらいに、マスターが僕に向かって魔法を放つ。
わずかに矢より届くのが早かったソレは、僕の身体に当たるとそのまま表面を包み込んだ。
これは、いったい?
そしてその直後に当たる矢!
グサグサーッ!!
と、突き刺さると思っていたけれど、僕の皮膚を削った程度で弾かれた。
めっちゃくちゃ痛い!けど大したケガじゃない!!!でもめっっっちゃ痛い!!
矢じりが金属製の矢だったし、刺さると思っていたんだけど違った!
これはもしかしてマスターの魔法のおかげ?
「表層強化!なんとか間に合ったか……」
「マスター!」
「間に合ってなによりだ」
魔法の名前から察するに、RPGで言う防御力アップみたいな効果なんだろう、助かった!
めっちゃ痛いけど!めっちゃ痛いけどね!!
「けどそれはそれとしてお前は後でひっぱたくからな!!」
「ええっ!」
「何がええっ!だ!また自分の命を捨てるようなマネして!!そんな子に育てた覚えはないぞ!」
「僕だって育てられた覚え無いんですけど!?」
その会話に割って入るように頭目の罵声が響く。
「バカッ!撃つ相手が違う!先に止める相手がいるだろが!」
それはそう、マスターはカンカンだけど僕に敵意が集中したのはこっちにとって最善の流れだ。
賊が次弾の装填を終えるまでに賊全員を止めなくては!
「ムンッッッ!!」
視界の外から先生の声がする。
見ると先生は賊の肩を刺して乱暴ながらも無力化させていた。
そしてそのまま槍を薙ぎ払うように振るうと、槍の先の刃の動きに沿って炎のカマイタチのような斬撃が飛ぶ。
もし名前を付けるなら『竜頭薙ぎ』もしくは『竜頭斬り』か。
突いた時ほど距離は伸びないけど、範囲は大きそうだ。
その炎が、近くの賊の服に火をつける。
賊は慌てて、狙いを定めるどころではなくなった。
「根性無い奴らだねぇ!全身やけども覚悟の上で噛みついてこなきゃ我々には勝てんよ」
「そもそもアタシ達に喧嘩売った理由がただの逆恨みだから、根性無いのは不当じゃないし妥当」
「それでここからどうしますか!?」
「落ち着け、賊どもは体勢を立て直してボーガンを構えだすだろう。だが囲んでいた6人中2人はヤマガミのお陰で戦闘への復帰はできん。であれば」
「であれば?」
「囲みを突破して退くぞ!」
マスターは僕の脱ぎ置いてた服をババッと突き返した。
そして僕たちはひとかたまりになって囲いを抜け、宿前の道よりさらに人気のない道へ走る。
「マスター!でもこっちの道って行き止まりでは!?」
「問題ない!人のいない狭い場所に行きたかったからな!」
「なにか策がおありで?」
「あらいでか!」
マスターは懐から薬液を取り出し、それを空中にほおる。
「霧化!」
そして杖に魔力を溜めて、液体を霧に変える魔法を唱える。
「スズランの花と魔法石の粉末から作る眩暈つき神経毒だ!」
「こんな狭い場所で霧にしたら私達も巻き添えでは!?」
「っていうか街中でそんな強力なの使ったら一般人も巻き添えですよ!」
賊が追いかけてきた!
彼らの顔には怒りの色がはっきりと見える!
「問題ない!『突風』!」
またしても魔法!
風がマスターの背後から吹いて、霧を賊の方向へと押していく!
「いつのまにこんな魔法まで……」
「ちょっとばかり魔法の勉強をし直してな。お前らを生かすにはアタシも強くなってやんなきゃあ、だ」
フフン、と得意げな笑みを浮かべるマスターというのは案外珍しいものです。
賊は毒霧を吸って大きく体調を崩している。
我慢できず四つん這いになって地面に吐く奴までいるほどだ、強力すぎないですかマスター?
そして賊の集団を通り過ぎた霧は急に上昇し、雲散した。
なるほどこれなら巻き添えを作らなくて済んでるはず……。
賊の集団から少し遅れて頭目がやってきた。
が、賊たちの様子を見て、少しうろたえた後すぐに逃げ出してしまった。
「勝ち目ナシの判断の速さは褒めるべき点なのかもしれんがね」
「もしくは時間をかけ過ぎたと見たのかも、そろそろ衛兵が動いてもおかしくないですし」
「衛兵来たらこの賊ども全員オリにぶち込んでもらわんとな」
「そういえばマジロくん、そろそろ服を着たまえ。賊のついでに君まで捕まっては困る」
「フルチンで勝利宣言ではカッコつかないしな」
そういえばそうだった、僕は急いで服の中に入れていた軽外傷治療のポーション(マスター製)を傷に塗った後服を着て、ようやく一息つく。
マスターと先生のお陰で窮地を脱することができた、よかった……。
2人も強かった、そして、さらに強くなってる。
僕も(きっと)強くなってるし、これなら……。
そう思った矢先に、安心を引き裂くような痛々しい叫び声が響いた。
さっき逃げた頭目の声だ。
いったい……?
いつもの台詞ですが高評価ブックマーク感想などもよろしくお願いします!




