表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/68

これまでと、これから、いっしょ

 答えるのを少し躊躇(ためら)っているのか、あるいは言葉を選んでいるのか。

 先生は、僕の問いにすぐには答えなかった。


「……平和な日本、か。マジロ君みたいな子がそう言ってくれるなら、私のやってきたことも無駄ではなかったのかもしれないね」


 どういう意味だろう。

 自衛隊員だったとか?

 いや違うか。

 僕と同じように、死の間際に異世界へ飛ばされたのだとしたら、それにしては恰好が紳士的すぎた。

 それにその答えでは、悪魔の知識について説明がつかない。


「マジロ君」


「はい」


「悪魔は、いたんだ」


 先生の口ぶりは、真剣そのものだった。


「比喩的な――」

「いや」


 まるでこの返しを予測していたかのように先生は即、遮って返事をする。



 悪魔が、存在した。


 いきなり知らされた、僕のいた世界の真実。

『いやまさか』『ありえない』『気は確かですか?』

 とは、言えなかった。

 先生は突拍子の無い事をする人ではあるが、この状況でふざけ倒す人ではない。


「驚いているね」

「あっいえ!その……」

「いや、いいんだ。私だって信じていなかったさ。この目でその姿を、その所業を見るまでは」


 先生の顔が、みるみる険しくなっていった。


「悪魔の所業をこの目で見た日から、私は奴らに対抗するための知識を蓄えていたんだ」

「先生の悪魔の知識は、そこからだったんですね。それからずっと、悪魔と戦って……」

「悪魔とも、ね」

「『も』?」

「悪魔は強大な力を持っている。が、悪魔が単体でできることはたかが知れていた」

「……」

「力のある者の元には、それに(すが)る者、それを利用しようとする者、それに魅入(みい)られた者が集まる」


 先生の手が、ぐっと握られた。


「私はそういった者達を何度も目にしたが……奴らの中に善き人と呼べる者は1人もいなかった。それどころか、悪魔の為、悪魔を利用した願望の成就の為ならば、殺しも(いと)わぬ奴は大勢いた」


 先生の声に、冷淡さが含まれていく。


 僕は恐る恐る聞いた。

 聞きたくない返事がくるだろうと、分かっていながら聞かずにはいられなかった。


「人間、ですか」

「そうとも」

「……先生は、彼らを止めたのですか」

「ああ。世の中に甚大な害を成す者と判断すれば、命を奪ったことだってある」


 やはり、そうだった。

 先生の強さは、実戦、本物の殺し合いの場で(つちか)われたものだったのだろう。

 更に言えば、ジョジュアさんとの戦いで見せたあの容赦の無さと判断の早さは、『正義を成すための殺人』をも経験し、その葛藤を克服した人間だからこそ持てるものだったのだ。


 だけど……。


 それでも自分の事情を語る先生は、悲しげに見えた。



「悪魔や怪異や秘密結社について備えれば備えるほど、世間とのズレは深くなる。狂人と呼ばれたことだってあった」

「あ……」

「それでも構わなかった。理解ある戦友に出会えた事もあったし、人々を護る為と思えば。若い頃から父のすすめで習っていた武道を活かして、私は文字通り命を懸けて戦ってきた。だがやはり、いつまでも戦い続けられるものではなかった」

「それって、死の直前まで来たって事ですか。僕と同じように……」

「下水道で『ブエナフット』と呼ばれる怪物と戦っていた時に、下水の急流にソイツもろとも流されてね。流石に死んだかと思ったんだけど、不思議な声が聞こえて、気が付いたらココにいたってわけさ」

「そういう経緯だったんですね……」




「それで」


「え?」


「軽蔑するかい?人殺しの私を」


「……いえ」


 唐突な質問に、すぐに返事はできなかった。



 先生の事情は知れた。

 だけどそれはきっと、複雑な事情の、簡単に伝えられるほんの一部なんだろう。


 僕はまだ、先生を知らない。

 それなりに長く一緒に生活したつもりだけど、何を考えているのか分からない時は今だって、ある。


 でも。


「先生、ありがとうございます」

「えっ?」

「先生が人知れず戦ってきたから、今までの、平和ボケした僕がいたってことですよね」

「えっああ、えと」

「だから、ありがとうございます」

「……マジロ君、語った私が言うのもなんだけどね、もうちょっと疑った方が」

「いいえ!」


 先生は悪い人じゃない。

 それは分かる。

 いや、分かっている。


 それに――


「信じるって、決めてましたから。最初に出会った時に」


 先生が驚いた顔をして、そのあと何かを諦めたような顔をして言う。


「君も相当変わり者だね」

「先生には負けますよ」


 僕がニカッと笑うと、先生もつられて微笑んでくれた。

 これでいい、これでいいんだ。


「さ!帰りましょう先生!あんまりマスターを待たせてもいけませんしね!」

「あっ、そういえばそうだった!いかんいかん、別行動も大概にしないとだ、ぐっ!」

「先生!?」

「い、今になって無理した反動が…あだだ!年寄りの冷や水とはよく言ったもんだ…!」

「あはは…今日は僕がマスターに付き添いますから、先生は休んどいてください」

「お、お言葉に甘えようかな…」

「ええ、これからは、もっと」

「……なんだいその気持ち悪いくらいのやさしさは」

「ひ、ひどっ!」

「やさしさを越えてやらしささえ感じるよ」

「やらしさ!?」



 これから先に待ち受ける困難を打ち破るためにも、僕は歩まなくてはならないだろう。

 マスターと、そして『悪魔先生』と一緒に。

 彼らを信じて、自分を信じて。

…言っておきますが別にこれで第一部完とかそういうのではないので!

書いてるうちにそれっぽくなっちゃったけど!


それはそれとして応援よろしくお願いします!

これからも頑張ります、頑張りますけど…やる気の燃料が欲しいです!

あと感想!マジで今後の指標が欲しいので!

「ここが面白かった」を端的に書いてくれるだけでもありがたいですので!

ぜひよろしくお願いいたします!!!!!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ