校門、侵入、全身タイツ
地下墓地の光景を一通り、魔法レンズで撮影し終えた僕らは、魔法学校の門前に来た。
夜に。
「なんで夜なんですか!しかもこの格好!全身タイツって!」
「静かにしたまえマジロ君、せっかくの全身タイツが台無しになっちゃうぞ」
「台無しにしたら勿体ないようなモノですか!なんでこんな……」
「現実はステルス・アクション・ゲームとはわけが違う、見張りが耳をすまして気配を感じようとした時、衣擦れの音すらヒントになる可能性もある。衣擦れの音一つ立たない全身タイツこそ隠密に適した格好なのだよ」
「そもそもなんで隠密するのかって話ですよ!」
「薬品研究棟の利用許可を貰った翌日にその棟が破壊された事態。校内での我々と校長教頭の会話を盗み聞きしていなければああもタイミングよく行動は起こせなかったと思う。それに学校の門番が敵組織の者だったりと、魔法学校には怪しい部分が多々ある。生徒や、校長教頭を含む教師などの中にまだ敵が混じっている可能性がある。だのに無警戒にホイホイ図書室利用の許可を貰いに行ったら、今度は図書室の本と一緒に地下で焼かれるかもしれん」
「それはそうとマスターの恰好、普段とそこまで変わらないですな」
「ほっとけ!」
「…だからって不法侵入なんかしてバレたら今後出禁になっちゃうかもですよ!?」
「初犯なら多めに見てくれるんじゃないかな?」
「あまりにも希望的観測~~~~」
「こっちには元生徒もいるからまあギリ許してくれるだろ、それに今回は不法侵入のプロも呼んでるしな」
「だれがプロの不法侵入者だ」
「うおっ!」
ジョジュアさんだ、久しぶりに見た。
何故か僕らと同じく全身タイツを着ている。
「お前らワタシの事をただのコソ泥と勘違いしていないか?」
「ハハハそんなまさか、もっと厄介な暗殺者だと思ってるよ」
「ヤマガミは相変わらずジョジュアを突き放すなあ」
「私達との出会いが不法侵入からだった以上そういうイメージ持たれるのは自業自得ってもんです」
「ハア……だったら和気あいあいとおしゃべりしてないでさっさと済ませてさっさと解散するぞ」
「そうだぞマジロ君」
「ええっ僕のせい……いやまあ話を切り出したのは僕ですが……」
どことなく理不尽さを感じながらさらに門へと近づく。
門周りの茂みから顔を覗かせると、門番がいた。
と言っても例のマスター達を狙ったあの門番とは別の人だが。
「もう新しい門番を雇ったのか、やけに早いな」
「誘拐事件の真っ最中だからねえ、いないままにするわけにもいかなかったんでしょう」
「随分とラフな格好してますね、身だしなみも雑というかみすぼらしいというか……」
「日雇いの労働者なんだろう、とりあえず誰でもいいから見張りを置いておきたかったって風だな」
「つまり見張りとしてはド素人ってわけだ、これならいけそうだな」
「とはいえどうやって侵入します?塀は案外高くて、登ろうとしたら目立ちますよ」
「夜とはいえこの周辺も人通りが無いわけではない、できるだけ早く通過したい」
「やはり門から通るしかないね、できれば暴力に頼らずに行きたい」
「うむ、そうだろうと思ってアタシは良い物を用意しておいた」
マスターがゴソゴソとタイツの内側を漁る。
「『眠りを呼ぶ魔笛』~!」
「おお、いかにもってカンジの魔法道具ですな!?」
「これをどう使うんですか?」
「うむ、この笛はな……」
「はい」
「いざという時、吹き矢としても使えるんだ。ハイこれ眠り薬塗った針」
「『魔』要素はどこ行った!?」
「お前ら吹き矢なんて使えたのか」
「え、笛はともかく吹き矢はアタシ素人だぞ」
「僕も」
「私も」
「……自分が使えないのになんで持ってきたんだ」
「家にあったから……役に立つかなって……使える人いるんじゃないかって……」
「ワタシも使った事は無いぞ」
「マスターなんとかできませんかな?矢ですよ?祖先にエルフがいるならイケるんじゃないですか?」
「む、そういうエル差は良くないぞ」
「エル差……」
「一番肺活量ありそうなマジロ君、やってみたらどうだ」
「僕ですか、うまく当てれるかなあ……」
とりあえず吹き矢に口をつけて構える。
「間接キーッス!間接キーッス!」
マスターが急に頬をポッと染める。
「初老の男性が小学生男子みたいな煽りを入れるんじゃないよッ!あとマスターもなにポッとしてんですか!いい年して!」
「お前らそろそろ殴ってもいいか?」
フッ!フッ!
うーんよく見えないけどたぶん当たってない気がする。
「貸したまえ、私もやってみる。フッ!……うーん見えないけどダメそうだ」
「次はアタシだな、フッ!フッ!フッ!……当たってないんじゃないかな」
「ワタシにもやれというのか?はあ……フッ!フッ!見えんが失敗だろう」
なかなかむずかしいなあ。
「ほら見ろ、何も起こらなさすぎて、とうとう門番が寝てしまっているぞ」
「うーん困りましたな……」
……ん?
僕は一応持ってきていた双眼鏡で門番を見る。
一瞬、言葉を失った。
「みなさん、もう通っても大丈夫だと思います」
「え?」
みんなに双眼鏡を貸す。
僕が見た門番は、顔面に針が2、30本刺さった門番の姿だった。
「ウヒーッ!」
「よく門番も気づかなかったな……」
「こういうホラー映画のバケモノ見たことがあるよ!ヘル……ヘルなんとか……」
「名前はどうでもいい!とにかくさっさと通るぞ!」
門番のオジサン、申し訳ない……恨むならこんな仕事を引き受けた自分の不幸を恨んでください。
そんなわけで、無事に夜の校内へと潜入できたのであった。
ギャグ回。面白かったら今後もギャグ多めにするかも?
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