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地下墓地の奥、シジル、禁じられたもの

 ようやく地下墓地(カタクーム)蔓延(はびこ)る脅威が片付いたようで、グールの件から先はこれといったことは起こらなかった。

 しかしそれでも、迷宮のようなこの道は一苦労。

 途中にあった白骨のそばに置いてあったマップを発見しなければさらに時間を食われていただろう。


 マップに書いてあった一番大きな部屋へと僕らは辿り着く。

 そこは、墓地のソレとはまた異質な、妖しくて怪しい装飾で飾り付けられた調度品(ちょうどひん)のようなものがゴテゴテと並ぶ、儀式のために(あつら)えられた部屋。

 まさしく『祭壇』だった。


 室内にはこびりついて落とせそうにもない、乾いた血の跡がそこかしこに見える。

 地下墓地全体にほのかに漂う、お香や生臭い匂いと相まって気分が悪くなった。



「部屋の様子からして、儀式はもうすでに完了した後みたいだね」


 先生が辺りを見回しながら言う。


「『悪魔召喚の儀式』ですか?」

「きっとね。部屋の血痕は、生贄(いけにえ)も使ったのかな?」

「例の、誘拐された人達を、か!?」

「いや、調度品にかかった砂の被り方から推察するに違うでしょうな」

「えっ?どういう……」

「ほら、魔法学校の教頭が言っていただろう。誘拐事件はつい半年ほど前から始まったって」

「ああ、そういえば」

「この砂の被り方は半年かそこらの経過にしては積もりすぎている。それに、人間を運ぶならあの門番の男についでに運ばせていると思うんだ」

「じゃあこの血痕は」

「血の量から考えても小動物くらいの生贄じゃないかな」

「だったら誘拐された人はどこへ行ったんだ?」

「それはわかりませんな、もうちょっと調べてみないと」




 僕達は罠や不意打ちに警戒しつつ、さらに調査する。

 部屋の中心には、なにかの「記号」が描かれた緑色の板があった。

 輪の中にゴチャゴチャと何かを入れたような(しるし)


「先生、これは……魔法陣、ってやつですか!?」

「ちょっと違うね、これはシジルと言って、悪魔を象徴し、召喚するための記号だ」

「この右を向いたカバの絵みたいなのが、か?」

「ええ。この中に召喚された悪魔は基本、この記号の外には出られず、だからこそ人間が交渉したり制御したりできるんです」

「へえ~」

「悪魔自身に世界をどうこうするほどの力は無いって言ったのは、そういう意味だったんですか」

「うん、と言ってもこれは我々の世界での話で、この世界でも同じだという保証は無いですが、ね」


 そう言いながら先生は、懐から黒革の手帳を取り出す。

 それをパラパラとめくりながら、シジルと手帳を交互に確認していく。


「これだ!ソロモン72柱の66番、『キマリス』!」

「それが、呼び出した悪魔の名前ですか!」

「うん、この悪魔との契約で得られるものは……ふーむ」


「何を読んでるんだヤマガミ、なんだその見たことない文字は」

「え、マスター読めないんですか?あっそっかコレ日本語で書かれてるんだ」

「ニホン、ゴ?知らん、異世界の言語か」

「ええ。……よく考えたらなんで僕らは異世界の文字や言葉が分かるんだろう」

「神からの贈り物ってやつじゃないのか?流石にそれくらいは貰わんと異世界で生活できんだろ」

「どうせならもっと色々欲しかったんですけどねえ」



 呑気な会話を挟んでいると、眉間にシワを寄せた先生がマスターに質問した。


「マスター、この世界には様々な魔術があるようですが、中には禁止されたり唱え方を抹消された魔術なども存在するのでしょうか」

「なんだいきなり。……詳しくは知らないが、あるという話は聞いたことがある」

「その中には、世界そのものをどうこうできるような術も存在するのでしょうか」

「いやだから詳しくは知らないんだっての。何が言いたいんだ、要点を言え!」


「『キマリス』は、文法や論理学を教授する他に、『失われたもの』『隠されたもの』を見つけたり教えたりできる、そうです」


 急に、ヒヤッとした空気が流れた、気がした。


「その、いわば『禁術』と言えるものを悪魔が教えた、と?」

「私はそう考えている」

「なるほどな、そのための儀式だったわけだ」



「しかし、具体的にどういう術なのか知らない事には対策も……」

「むう」

「なら、次の目的地は決まったな」

「マスター、なにかアテが?」

「図書館だ。禁術の唱え方は載ってなくても、どういう禁術があったかぐらいは調べられるかもしれん」

「図書館、なんてあったんですか」

「ある。ラウホステインにな。いや、正確には『図書室』と言うべきか」

「図書室、ってことは、その場所は……」

「ああ、魔法学校の……地下だ!」


高評価ブクマ感想レビュー、ぜひよろしくお願いいたします。


本当に。

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