竜頭、自動、ハイエナ
「ハイハイハイハイハイハイ!」
先生が槍の魔法を連続して放つ。
地面に。
出しては足で火を消し、消しては出す。
いわゆるマッチポンプ。
「何やってんですか!」
「いやだって火の出しっぱなしは良くないって注意されたからすぐに消せるように地面に……」
「そもそも使わなきゃいいでしょ!なんなんですかその魔法!」
「竜の頭骨から出る魔法だからそのまま『竜頭』と名付けたよ」
「名前を聞いてんじゃないですよ!!!用途を聞いてるんです!!!」
「怒鳴ってると体力使うよマジロ君、防御に集中したまえ。全員くるよ」
はい?と聞く前に周囲のスケルトンが全員こちらに武器を向けた。
どっちかと言えば先生の方に近いスケルトンまでもがこっちを向いている。
「こ、これは!?」
「魂の匂いを嗅ぎつけているってわけじゃないねコレは、魔力だけに反応してるみたいだ」
僕が守り、先生がスケルトンを壊す形になりながら相談を続ける。
「魔力だけに、か。なるほどアタシの魔法障壁が薄くなっても攻めを継続しなかった理由はそれか」
「目が見えてない耳が聞こえないって証拠だね。状況をまったく把握せず、ただ魔力の多い方向に攻撃を仕掛けるだけだ」
「生きてる人間は魔力が他の動物や物体より豊富だからな、そう命令しておけば侵入した人間を真っ先に攻撃するだろう、と」
「ずさんな命令ですねえ」
「盗掘目的や好奇心で足を踏み入れた奴を怖がらせて追い払うならこれで充分だと思ったんだろうね。実際この世界の人間はビビってたわけだし」
「こっちを見るなこっちを!」
「ところでマジロ君、『自動で動く』『対象を攻撃』『命令に融通が利かない』……何かを思い出さないかね?」
「あ!」
「なんでしたっけ?」
あ、先生がガクッと崩れた。
「なんなのかねその思わせぶりな『あ!』は!!!」
「上司の言うことをきちんと理解しないまま、理解したような返事をする時ってありますよね」
「一番厄介な部下ムーブやめたまえ!!」
「呪術だよ!呪術!」
「えっ呪術!?たしかにあの呪術師……『アイウート』でしたっけ、アイツが使ってきた血液ピラニアに動きだけは似てますが」
「呪術は血と痛みを使って行う術だ、痛みはともかく血がぜんぜん無いぞ?」
「以前語った覚えがあるけれど、血液は骨からできるんですよ。なのでまあ、血液=骨、と言えるのではないかなと」
「あいまいな線引きですねー」
「私じゃなくて呪術のルール決めた人に言ってくれたまえ」
「しかしそうか、魔力に反応するんだな。だったら……」
魔力が少し回復したマスターが力むと、杖の先からもやもやとした何かが出て、地下墓地の横穴に向かってふわふわと飛んでいく。
スケルトン達はそれを追いかけてどこかへと行ってしまった。
「あるだけの『魔』を熱や力に変換せずにそのままひり出して飛ばしておいた。しばらく戻ってこないだろう」
「大丈夫なんですか?魔力使い切ったら防御もできないのでは……」
「そういう時のお前らだろうが、『ここは僕達にまかせてください!』くらいの意気込み見せろ!」
「え、僕の事頼ってくれるんですか!?」
マスターは、『そんな質問が飛んでくるとは思わなかった』と言いたげな驚き顔を見せた後、すこしテレて言う。
「…ま、さっきのスケルトンの攻撃もしっかり防いでたしな。強くなったことは認めるべきだろう」
その返事に僕はついつい嬉しくなってしまった。
「任せてください!しっかりお守りします!!」
「よしじゃあ早速頼んだぞ」
え?
進行方向の奥を見ると、スケルトンとは別の人型の何かが2体、近づいてくるのが見えた。
「人間の体に、犬の頭……コボルドってヤツですか!」
コボルドたちはクチャクチャと肉を噛みながらこちらを見ている。
こんな場所で食える肉がなんの肉なのかは、想像するまでもない。
とっさに剣と盾を構えて敵に向かおうとする僕を先生が止める。
「先生!?」
「マジロ君、物事はもっとしっかりと観察すべきだ」
「え!?」
「あの頭は……犬じゃなくてハイエナだ」
「あんま変わらないじゃないですか!」
「何を言うマジロ君!ハイエナは分類学上はネコに近い動物なんだぞ!見たまえあの短めの鼻面に丸くて大きな耳!垂れぎみの目!」
「どうでもいいー!」
そうこう言ってる内にハイエナ獣人は剣を構えて近づいてくる。
「どうでも良くはない!つまりアレは……コボルトじゃなくて、屍食鬼だ!」
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