落ちて、滑って、転んで
~引き続き、『敵』視点~
ここからなら脱出できる!
さっき見つけた『コゲ』だ!
燃えた木製の床は当然だが脆くなっている!ここをぶち破れば抜けられる!
とはいえさっきコゲから出た火は炎になって広がっている。
ハンマーや足で、太い俺の身体を通すだけの穴をチマチマ開けてたら炎が体に燃え移ってひでえ目にあう。
もっと硬くて重くてデカいもの……。
ハッと思いついて、バッと振り向く。
ジジイの石像!
クソッ、やっぱり重ぇ!
だがここでやらねば死んじまう!めんどくせぇがやるしかねえ!
「ぐお~!」
クソが漏れそうなくらいリキんでやっと持ち上げられた。
これをこのまま、炎の中心に、叩きつける!
バギバギバギ!と音を立てて穴が開く。
そしてその穴に、石像を叩きつけた勢いの乗った俺がそのまま落ちる。
よし!脱出できた!
うまく着地できず、1階の床に、うつぶせのような形で腹を打ち付ける俺。
!
「痛っでええええええええ!!」
床に打ち付けられた痛みとはまた別種の痛みが俺に刺さった!
破片、鏡の破片だ!
焦りで引いていた俺の血の気が、脱出できた愉悦と怒りで滾っていた俺の血の気が、体からタラタラと流れ出ている!
あのガキ~~!!
チャチな罠仕掛けやがって!こんな傷で人が殺せるとでも思ってんのか!!
刺さる痛みを抑えて、俺は辺りを見回す。
ガキは!!……いたぁ~!!
2階へ続く階段の前にいやがる!
俺がガキを見た瞬間、ガキも視線に気づいて、ヒッと声を出す。
逃がすかよ!!ブッ殺してやる!!
ガキが、こっちに向かって魔法の矢を飛ばす。
ケッ!俺が痛みでもがいてる間に魔法で攻撃って算段か!
ハァ~~……カスがよ~~!!
罠は痛い以上の意味は無いようだし、魔法も俺の唱えるモノと比べると未熟!
ナメてやがるのか、クソガキがよ!!
俺は魔法障壁を張って防御し、ガキ以上の大きさの魔法の矢を放つ。
ガキも魔法障壁で防御できたようだが、俺の魔法の威力にビビったのか2階へ逃げ出した。
魔法学校あがりのガキの魔法なんざその程度なんだよ!
こっちにはボーガンもあるんだ!それに人質の石像もいる!いざとなればこの石像を盾にして戦えば有利は変わらねぇ!
ハア~~~~~~~!!!
随分と手間かけさせてくれたが、結局は無駄な努力なんだよ!
あのガキも含めて、魔法学校に入れるようなガキはみんな裕福そうだったなあ~……!
いかにも愛されて幸せに育ったってカンジの奴らばっかりだ!
かたや俺はそのガキの面倒を処理する係!めんどくせえ!!
なんで勝ち組のガキのケツを!顔も、裕福さも、親も負けてる俺が拭ってやんなきゃいけねえんだよ!
ああハラが煮えたぎってくる!!
「お前らみてえな幸せそうなガキは!!俺みたいのが2、3人殺してやっと平等になれるってもんだ!そう思うだろうがよ!!!思え!!」
おまけにこいつら殺せばカネが貰えるってんならヤらねえ理由はねえ!
俺はやっとこさ立ち上がって、歩く!
ぐぐ、床がヌルヌルしている!
床に洗剤まで撒いて!そんなに俺に鏡の破片を刺したいのか!?
洗剤が撒かれたゾーンを抜けて俺は階段の前に立つ。
階段の先にはあのガキがいた。
ガキは扉の南京錠を急いで開こうとしている。
自分で掛けたカギが自分の首を絞める形になったわけだ!
ハハハハハハハハハハ!!
もう終わりなんだよ!
俺はボーガンを構えながらズンズンと階段を上り
こけた。
階段に洗剤が…撒かれていたわけではない。
その辺は警戒していた。
なのになぜ!?
「ぐっ…!」
立ち上がってもう一度階段を上ろうとしたが、そもそも立てない。
おかしい。
視覚的には床はまっすぐのはずなのに、まるで床が蠢いているかのように不安定に感じる。
なにが!なにが起こったんだ!!
「図体デカいだけあって」
ガキがなにか呟きながら階段を下りてくる。
「薬が回るのにも案外時間がかかったな」
「来るなっ!」
叫んで魔法の矢を放つが、全部が的外れの方向に飛んでいく。
気持ちが悪い、馬車酔いをしたかのような気分に……。
「まさかお前……!」
「やっと気づいたか、アホめ。三半規管を狂わせる毒、『酔毒』だよ」
「い、いつ俺に毒を盛った!?吸ったり飲んだりなんてまったく……」
「たっぷり塗っておいたからな、傷口からどんどん入っていった事だろう」
「! あの鏡の破片……!」
「ただ痛がらせるだけの罠だとでも思ったのか?侮りすぎてないか」
じ、自分が仕掛けた罠と同様の罠にかかるなんて…!
ガキが、俺の被っていた覆面を無理矢理奪う。
「アタシを知っているような喋り方だと思ったら、魔法学校の門番じゃないか」
「ぐぐっ!お前こんなことをして無事で済むと思うなよ!俺は今石化解除の薬は持ってねえ!お前らの仲間どもの石が解除されるまでどのくらいかかるかな!その間に俺の仲間が」
「製法は知ってる。むしろ今、薬が無いならそのほうが都合がいい」
ガキは俺の脚に、俺の持ってたボーガンを数発撃ちやがった!
俺の脚がどんどんと石になっていく!
「ああ~!あ!やめろ!ああ~!」
「やっぱり大事そうに持ってたボーガンの矢に石化毒を塗ってたのか」
「ああ~!!!」
「お前の口を割らせるのは後にするとして、今は一言」
「ああああ~~!!!」
「人を殺して平等とかほざく奴は、なにやっても幸福になんてなれねんだよ」
そして、俺は意識を失った。
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貴方の一動作で救われる作者がいます。




