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師匠探し、美味そうな獲物

「強くなりたいんですッ!」


「と、言われてもねえ」


 冒険者ギルドに響く僕の声に、受付嬢のお姉さんが気だるげに返す。


「お願いします!どなたか強い方を紹介してください!」

「師事を受けたいってのはわかるんだけどさ、それなら衛兵隊に志願した方が良いと思うよ、冒険者なんてほとんどがガサツ者だし学もないしでまともに教育なんてできる奴はホントに一握りだけなんだから」

「でも衛兵になるのってすごく手間かかるんでしょう?」

「カネもね」

「それじゃダメなんです!できれば早く、強くなりたいんです!」

「そう言われていい先生紹介できりゃ、ウチ(ギルド)だってもうちょっと質の良い冒険者が増やせるんだけどねえ」

「うう~」


 強い冒険者に師匠になってもらおうと意気込んでギルドに来たけど、出鼻をくじかれてしまった。

 強くなって帰ってきますと先生とマスターに宣言した手前、師匠探しにすら苦戦していたら余計な心配かけてしまうしなにより情けない。


「そんなに稀少なんですか?師事できる冒険者は……」

「名誉冒険者がこの街に在籍していたら良かったんだけどねえ」


 『名誉冒険者』。

 どこかで聞いたことのある単語だけど……?


 あ!思い出した!


岩夫人(ミセス・ロック)!」

「なんだって?」

岩夫人(ミセス・ロック)が以前、僕に言ってくれたんです!『手助けが必要になったら言ってください』って!」

「アンタねえ、そんな社交辞令を真に受けるつもりかい?」

「岩夫人は簡単に言った事を取り消すような人とは思えません!彼女は今どこに!?」

「知らないよ」

「じゃあ調べてください!」

「しつっこいね!」

「必死なんです!」


「随分と熱心ですことね」


 ファサァ……!と、効果音が鳴ったかのように颯爽と登場したのは、(くだん)の岩夫人。


「夫人!お騒がせしてすみません!」

「いたんじゃないですか!しかもギルド内に!」

「うるさいね!ギルド慣れしてないどころか余所者のアンタがホイホイ夫人に挨拶できるわけ……!」


 言い争う僕と受付嬢の唇に、そっと夫人の指が触れる。

 いつそんな距離まで近づいたのか、口喧嘩のせいか全く気付かなかった。


「お静かに」


 夫人の一言に場が静まって、気恥ずかしくなってしまった。


「よろしくってよ」

「えっ?」

「師事を受けたいのでしょう?」

「えっ!」


 まさかこうも快諾してくれるとは思ってもみなかった。


「ありがとうございます、夫人!」


 僕は夫人の手を両の手で掴み感謝する。


「もちろんタダとはいきませんけれども、ね。それに……」


 急に、空気の重さが変わるのを感じた。

 『圧』は、夫人から発せられている。

 外野の受付嬢にもそれがわかるのか、怯えた目で僕らを見る。


「わたくし、中途半端は嫌いですの。『より早く、より強く』を望むなら、相応の覚悟をして頂きます」


 夫人の手は、強く、強く握り返してきた。

 僕の両手を砕いてしまいそうなほどに。


 冷汗が顔を伝い、顎に届いた時、僕はキッと夫人を睨む。


「ありがとうございます」


 感謝と反抗の入り混じる声で僕は言葉を返した。


「僕も、半端な気持ちで強さを望んだわけではありません」


 僕の頭の中で、今までの悔しい思いをした光景が、僕を心配してくれた二人の顔が映る。

 身体の奥で、何かが燃えた。

 熱の籠った両手で、夫人に強く強く強く握り返す。


「僕は、生きなくちゃいけないんです。生きるために!必死に生きなくてはならないんです!」

「何言ってんだこいつ……」


 受付嬢は呆れた顔をしていたが、夫人は口角を上げている。

 夫人の頬が桃色に染まり、手が、全身が少し震えたような。


「良い、眼を、しています……」


 夫人が(つや)やかな吐息のように言葉を漏らすと、僕の手から離れる。


「武具店に、練習用の木剣と盾が売っているはずです。それを購入したら街の西門を出なさい。すぐに指導します。返事は?」

「はいっ!!!!!」


 やった!岩夫人(ミセス・ロック)に認められたようだ!

 根拠はないけれど、きっと彼女なら、僕を強くしてくれる!

 待っててください、先生、マスター!

 嬉しさに弾むようにして、僕はギルドを出て、武具店へ向かう。


「夫人……ひっ」


 2人に背を向けた瞬間に聞こえた、受付嬢の小さな悲鳴と、響くような舌なめずりの音は、嬉しさでどうでもよくなってしまっていた。


高評価いいね感想、ぜひともぜひとも!

無いと生きていけないわけではありませんが、あればより一層、創作に力が入ります!!!

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