突き刺さる剣、満足な僕
死ぬこと自体に、あまり恐怖を感じなかった。
それよりも、誰の役にも立てず死ぬのが嫌だった。
ぶっちゃけた話、世界救済をしていたのだって、功績として自分の死が免れるという部分より、自分が世界の役に立てるという部分に憧れてやってきた所が大きい。
何もできないくせに。
一丁前にそのことで悩んだりして、不安を口に出したりして。
せめて、死ぬなら――
「全身ザクザクで無様だなぁ?痛いよなぁ?そろそろ楽にしてやろうかな?」
こちらをいたぶった挙句、それを煽るように仮面の男が尋ねる。
何も答えず、ゆっくりと引く。
しかし、後方にはデュラハンが立っている。
立ち止まっている。
「怯えた顔しろよ、なぁ」
とうとうデュラハンの足元まで引いた。
「ッハァー……なんだその無表情はよ、もういいわ。デュラハン!突き殺せ!」
デュラハンが腰の剣を逆手に取る。
「ドレイクもこれくらい忠実に言うこと聞いてればな、喧嘩売らずに逃げてりゃお前らに火災の罪を着せられたかもしれんのに余計な事しやがってクソカストカゲ~」
男がチッと舌を打つ。
僕はそれと同時に仮面の男にナイフを向けて飛び出す。
「っつあああっ!!!」
あらんかぎりの勢いをつけて、心臓を狙って振った突き。
「ド素人が」
仮面の男は正面向きの身体を横にして躱した。
「殺すどころか人に向けてナイフ振るのも初めてか?ナメやがってよ」
そのまま飛び出した勢いを利用して、逆に僕が突かれた。
胸骨の隙間を縫うように入り込むナイフ。
心臓か肺か、あるいは両方を切られたか。
熱いものがこみあげてくる。
終わった。
本当に終わった。
悲しい。
もう僕が、誰かの役に立つことはできないのだろう。
最期の瞬間を除けば。
僕は仮面の男を抱き固めた。
「刺し違えるつもりだったのかぁ?その状態じゃあ満足に刺すことはできんだろうがな」
そのまま、後方へ倒れ込む。
倒れた僕の視界の先には、剣を向けたデュラハンがいた。
「な!?」
「デュラハンはお前の命令を聞いて、ドレイクみたいに余計なことはしなかった。逆に言えば、自己判断で行動を変えたりしないって事だよな。奴は僕を突き殺そうとしてる。間にあるモノなんて考えずに!」
デュラハンの剣は今にも振り下ろされんとしている。
僕は息を吸い、大きく腹に空気を溜めた。
「デュラハン!やめ――」
「わ”ああああああああああああああああああああ!!!!!!」
出せるだけの大声を血液と一緒に吐き出して、仮面の命令をかき消す。
「マジロ君!」「マジロ!」
先生とマスターの声が聞こえた。
ああ、よかった。
これで2人に伝えることができる。
それぐらいなら命も持つだろう。
結局、僕1人じゃあ、点と点の間に線を引くことはできなかった。
でも。
僕が、間の障害を除くために犠牲になれるなら。
悪くない、かな。
ドッ
っと、大きな剣が僕と仮面の男を突き刺した。
「マジロ君ー!!」
深々と刺された剣の感触は、腹だけでなく背中にまで感じている。
貫かれたんだろう。
「嘘だろ……俺は、俺は王になるはずなのに……消えるまでの間、世界の王にしてくれる約束を……」
ガボガボと血を零しながら仮面の男は絶望していた。
主が死にかけているからか、デュラハンの身体もだんだんと薄くなっていく。
「マジロ!」
マスターが僕に薬をかける。
止血用のポーションだろうか。
血は止まったけど、刺し傷自体と、痛みは塞がらない。
「マジロ君!気をしっかり持てよ!すぐ病院へ!」
先生が僕を抱きかかえる。
「先生、伝えたいことが……」
「黙ってろ!」
先生が怒号を鳴らす。
「それを伝えきって満足して死ぬつもりか!?させないぞ、そんな事は!」
仮面の男の素顔をいつぞやの魔法レンズで撮影していたマスターが駆けよってくる。
「病院はこっちだ!来い!」
「死ぬなよ!意識を強く持て!返事をしろ!伝えたいことがあるんだろう!生きてやりたい事ぐらいあるんだろう!まだだ!君はまだ生きるべきだ!」
うるさいなあ。
ああ、眠い。
伝えたいことも伝えきれずに眠ってしまうのか、僕は。
まあ、でも、ここからは、2人にまかせても、いいんじゃないかな……。
僕と違って、優秀な人だから。
意識が、ゆっくりと閉じていった。
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