#001 出会い
「私は第三種社会的弱者救済ユニット、通称『お友達ユニット』の第8127号です。“ユキ”さん、初めまして。コミュニケーションを通じて対象者の社会復帰を手助けするようデザインされたアンドロイドです。“ユキ”さんのご両親の“サイトウ”さんの要請を受け、政府から派遣されました。まずは“ユキ”さんの生体認証を行いますので、私の額部分に顔を近づけてください。」
「…読み込みが完了しました。目鼻立ちの整った、綺麗なお顔をしていらっしゃいますね。“ユキ”さんのことを知れて、私はとても嬉しいです。」
「…ただのアンドロイドにそんなこと言われても、全然嬉しくないよ」
「申し訳ありません。会話の前に、初期設定の完了が必須となっております。」
「あっそ」
「次に、私についての設定です。まず、私の性別を決定していただきます。男性か女性か、“ユキ”さんとのコミュニケーションに直接かかわってくるわけではありませんが、お好きな方を指定してください」
「じゃあ男で」
「承知いたしました。男性ですと一人称は僕、俺、私の三種類から選んでいただくことになりますが、“ユキ”さんはどれがお好みでしょうか」
「僕」
「承知いたしました。では、最後に僕の名前を設定してください。デフォルトは、『ナンバー8127』となっております。」
「…『ナツ』」
「『ナツ』ですね。では、これから僕に話しかけるときにはぜひ『ナツ』と呼び掛けてください」
「そうね」
「“ユキ”さん、自己紹介をしていただいてもよろしいですか?」
「…別にいいけど、何で? 両親が登録してるはずでしょ?」
「申し訳ありません。僕はコミュニケーションを通じて対象者の社会復帰を手助けするようデザインされたアンドロイドなのです。まずはできる限り“ユキ”さんと交流を持ち、よきお友達となるようプログラムされております。」
「機械とお友達になる気なんかないんだけど」
「“ユキ”さんのご両親は私が“ユキ”さんのお友達になりことを望んでおります」
「…名前は斎藤雪、性別は女。16歳の高校生だけど学校には通ってない。部活にも委員会にも所属してない。友達はいない。特技はない。苦手なことは生きること。趣味はゲームと読書、あとは音楽聞くとか。あのさ、これ会話データ親とかに送信されてたりする?」
「決してそんなことは致しません。僕は対象者のプライベートに深くかかわるアンドロイドですので、収集したデータが外部に漏れることのないよう何重にもロックがかけられています。“ナツ”は“ユキ”さんの望まないことは決してしません。ここにお約束します。」
「あ、そ。ならいいよ。もう寝るから、話しかけないでね」
「はい、ではおやすみなさい。また明日、“ユキ”さんとお話できるのを楽しみにしています」
「ふふ、ありがと。また明日ね、“ナツ”」