6 入学
「にいに遅い」
「まっまってくれ……よ。長い長すぎる。どこまで続くんだこの道」
元気よく歩を進めるリリーとそのはるか後方、おそらく距離にして200メートルほど後ろでくたくたになりながら、汗で顔を濡らしてゆっくりと歩いている男がいる。ほかでもない俺である。
「まだ10キロくらいしか歩いてないよ。運動不足だね」
「いいや、もう15は歩いたね。それに数時間前の襲撃と、このリリーの荷物の運搬でかなりやられてるんだっ。あのパンチはかなり力込めたからな、それに何が入ってんだよこれっ」
リリーの荷物袋を思い切り地面に置き、中身を詮索する。
「あー駄目っ」
出てきた物は大量の着替え……これは仕方ない。女ならば着替えは大量に必要だ。それに軟膏、肌を白くするやつ、肌に潤いを持たせる薬、名前は忘れたが、こういった化粧品が詰められている、それに黒い染料?
「なあこの黒い染料は何に使うんだ?」
気づくと、リリーはすぐそばに来ていた。200メートルもの距離を一瞬にして走ってきたのだ。
「それは髪に塗るの。にいにと髪の色違いすぎるから色縫って誤魔化すのね、血縁関係の誇示。バロッドさんに言われた、リリー元奴隷だし、血縁関係がないとバレてそうゆう関係だと思われるからって」
「あのデブ……」
この黒い染料を髪に塗りたくったところでバレるに決まってる。くだらない事リリーに言いやがって。
「あのな、その話するとき、バロッドはどうゆう顔してた?」
「にたにた笑ってた」
「その話はなジョークみたいなもんだ。中年の男がよくやるジョークだ、糞下らんやつな。その手の話には大体下の話が入ってくる。性欲を持て余した中年の男がよくするんだ。
酒場のおっさんも、酒場に来る奴もよくそーする。若い女性に対してね、ばれない程度にほのかにな。そうゆう文化っつーか、しきたりみたいのがあるんだよな」
「へー」
そうこの国の男というかおっさんは軽い下ネタが大好物なのだ。なぜだか知らないが、いかにばれないように上手く下の話を会話に取り入れるかが自慢の一つになる。そうゆうしきたりがある。全く謎だが。
「あいつ……せっかくいいやつだなって思ってたのによー」
ため息を吐きながら袋の中を詮索していく。出てきたのは分厚い本の数々、それと瓶の数々、何本かは亀裂が入ってしまっている。まだまだ出てくる。
裁縫道具に、ライト、マッチにタオル、それとレンガ……レンガ?
「あ、あのな、どれも重要だよな。でもよ、少しばかり数が多くないか? あと、レンガはなんだよ、レンガを何に使うつもりだ?」
「襲撃撃退用兼護身用、あと疲れた時のための椅子にする。それお気に入り」
リリーはよく椅子を使わず、レンガや岩に座る。理由は定かではない。落ち着くかららしい。あんな硬いものに座らず、もっと柔らかいところに腰を掛ければよいのに。
「襲撃……きたでしょ? 今……疲れているでしょう? ほら椅子にして」
リリーはこちらを伺いながら、レンガを俺の尻の下に敷く。
「襲撃……来たけどさ。これ……役だったかな? あと普通に座り心地悪すぎるんだけど。このレンガ」
「腕のリーチが足りなかったね。あの襲撃者が近くにきていたら、このレンガで木っ端みじんに粉砕していたよ。奴の頭を、運がよかったね彼」
お前が先に奴のビームで木端微塵になっていただろうことは置いておく。あまりに重すぎる、リリーの気遣いも、もちろん袋の中身も。
「とりあえず、全部捨てるか。レンガと、瓶と黒の染料は。それ以外はまあしょうがないね」
「ええっ待って待って、もっと見てよ袋の中身、まだ入ってるから、重くなる原因、たぶんそれだよ」
袋の中身を詮索すると、四角い物体がある、つかんで引き出すとそれは写真立てであることが分かった。その写真にはまだ小さくてそっぽを向くリリーと、その横で肩身が狭そうにしている俺が移っている。おそらく6年ほど前の写真だ。
「これね、リリーの大切な物。これだけは持っておきたくて。駄目……かな?」
「……」
泣きそうになってしまった。なんていい子なんだろう。我ながらよくできた妹だ。もっと持っていきたかった物もあっただろうに、この写真立てのために……。
「兄ちゃんが悪かったごめんな。これ全部リリーの大切なものだろうにな。すまんな、全部捨てちまおうとして……」
「うんうん懲りればいいんだよ、反省して早く」
「でもさ……この写真立てが重くなる理由なわけないじゃん? これを意図的に見せようとしてたよね? あとリリー別にこの写真そこまで大切にしてなかったよね」
「いや宝物。ずっと」
「この写真を持っていけば許されると思ってたってこと?」
「正直に言うと……ね」
あきれた。だろうなと思っていた。この写真は宝物でも、思い出でも何でもなく免罪符だった訳だ。リリーの額にデコピンを食らわせた後、出した荷物をすべて袋に詰めなおしていく。
まあ、しょうがないからな。リリーだって持っていきたいもんがたくさんあったんだ。
必死に選別したのは事実だ。もとはと言えば、俺が勝手に彼女を連れてきてしまったんだ。少しのわがままくらい許されてしかるべきだろう。
「にいに……ありがと」
「いいよ。これくらい、先を急ごう。このままだと日が暮れちまうぞ」
「うん」
また歩を進め始めた。この先にはおそらく学園があるのだから。
「にいに……やっぱ遅すぎ……」
あれから1時間ほど立っただろうか。あれほどキメたことを言っておきながら、息を切らし汗を流している男が見える。他でもない俺である。リリーとの距離はおよそ300メートルほど。
「ああっはあ。おかしい、やっぱおかしい。もう……はあ、20数キロは歩い……たぞ」
「うーん確かに、さすがに広すぎかなあ。リリーもさすがに疲れてきたよ」
地面に大の字になって倒れる。息切れを起こし、熱心に息を吸う。汗が目に入って痛く、何度も目を袖で吹き、汗をぬぐった。リリーが先方で何と喋っているのかは分からないがおそらく愚痴か何かだろう。しかめた面で にいに遅すぎ― とか何だの話しているんだ。
「だああっもう俺は寝るっ。案外気持ちいいぜえこの地面。ほんのり冷たくて、絶好の寝床だな」
「あーんもうっ。にいに寝始めるし、根性ないなー」
「ああん? おいリリー、お前なんて言ってんだあ?!」
リリーは『五感強化』の能力を持っているから人より耳がきく。この距離でも俺の声を聴きとっているが、俺にはリリーの声は聞こえない。この能力のせいで、リリーの前では愚痴一つもはけない。
「この根性なしー、口だけー、クロカミー」
リリーが向こうから必死に大声を出して煽ってくる。黒髪は別に悪口ではないが。
「うるせえ! あーもうやる気なくした。今ので完全に無くなったなー。本当に兄ちゃん寝ちゃうからなー」
「えーいっ」
リリーが走って向かってくるのが見える。
「この光景、さっきも見たなあ」
ぶっきらぼうにこうつぶやきながら横を向くと、茂みの中に青く光り輝いている物があるのに気づいた。
「あーんだこれ」
茂みの中に手を入れてそれをつかもうとすると、リリーがこちらにやってきて、軽く俺の頭をぶった。
「いてっなにすんだよ」
「にいにがすぐ諦めるからだよ、そうゆうとこ、嫌いだよー……それ、何?」
「あーこれ、茂みの中にあっっっっっっ」
瞬間、俺とリリーの体が数センチ浮かび上がったかと思うと青く光り輝いていた宝石のようなものの煌めきが増していき、さらに青色を深くしていき、その青色が俺らを包み始めた。
眩しくて目を細めると、信じられないことだが、俺らは別の空間にいた。重厚な壁や小さな窓がある、室内だ。長い廊下が続いており、豪華で派手でいながらある種の落ち着きが見られる建築である。
廊下は等間隔に配置されたロウソクで照らされてはいるが、空が暗くなっているからだろうか? あまり明るくはなく恐怖感が煽られる。
「ねえ、にいに……どこ?ここ」
「さ、さあ分からない。でも、何かしらの能力だ。注意しろ、リリー。先ほどの襲撃者の仲間かもしれないからな……」
リリーは近づいて、怖がりながら俺の肩に手を置く。いつでも能力が使えるように右手を握り締めると、拳のなかから煙が昇ってきた。なにやら焦げ臭い。
「あっ能力が使えるぞ。そうなりゃこちらのもんだ。おい!! 出てこい!! 火あぶりにしてやるぜ」
大声で叫ぶ。俺の声がこだまし、廊下を響きまわっていく。沈黙、返答はない。
「随分、血気盛んな入学者だねえ」
声の方角、すなわち後ろを向く。そこには黒色のハット棒をかぶり、深い瑠璃色のロングコートに身を羽織る者がいた。暗くて見ずらいが、杖に両手を置いている。
「誰だよ……お前……」
「さあ、どう見える?」
杖を突きながらこちらに近づいてくる、透き通った声からは考えられないが、近づいてくるにつれて理解した、こいつはかなり歳がいっている。50ほどだろうか。
「隙だらけだぜ。お前は」
大きく身をねじった後に右手を相手に向かって振り切る。拳は相手の肩あたりへ迫っていき、ぶつかろうとしている、俺はひそかに決まったなと心の中で勝利を確信していたのだが、いつの間にか俺の右手首が、相手の手に掴まれていた。
掴まれた瞬間が視認できなかったので俺は頭にある疑問を浮かべ、その疑問をそのまま伝える。
「は? てめえ、能力を使いやがったな」
「なかなかいいパンチじゃない。木とかには上手く命中するんじゃないかな。動かないものにはね」
「何者だよっ早く離せっ」
右足で必死に相手の体を蹴ろうとするが、向かった足がどれもこれも、相手の左右にずれてしまい、空を蹴るのみだった。そしてまた、ずれた瞬間が視認できない。気づいたらずれている。
「右手を開いてごらんなさい」
「あー?」
言われたとおりに掴まれた右手の拳を開くと、そこには小さな紙がある。そこにはこう記述してあった。
学園最高権利者兼禁止区域調停人兼能力研究統括人以下略 ブルーハウダー
「よろしくねえ」
こう言ってウウィンクをしてくるブルーハウダ―。こいつ……婆だ。暗いところだし、ロングコートも男性用っぽかったから気づかなかった。
「あ、ああ。よ、よろしく……な」
ブルーハウダーは掴んだ俺の右手首を強く握りしめる。痛い痛い。
「よ、よろしくお願い……します」
帰りたい。貧民街にいた方がよかったかもしれない。そんな風に思うときが来るとは思わなかった。
「じゃあ、ブルーハウダーさんはずっとここで暮らしてるの?」
「そうだよ、私がリリーちゃんくらい小さかったときからずっと、私もそのころは綺麗な髪とシミ一つない美しい肌をしていてリリーちゃんみたいに別嬪さんだったのよ」
「別嬪さんって何?」
「すっごく綺麗な女性の敬称よ。もう本当、何でも聞きなさい。あなたを見ていると若かりし頃を思い出すわあ。あなたみたいに勉強熱心で、有り余る魅力を抑えて暮らしていたの。もう他の男子からもすっごく恋文をもらっちゃてねえ――」
「果たし状の間違いじゃねーの」
ボソッとつぶやくと。怒りを浮かべて振り向くブルーハウダー。俺はかなり嫌われているみたいだ。まるで俺が親の仇であるかのような鋭い眼光をこちらに向ける。正直怖い。
目をそらし、身体を肉食動物を目前とした小動物みたいにかがめる。これくらいの婆が苦手だ。
「うるさいねえ、あーゆう不愛想な男は……」
「しょうがねえだろ! いきなり飛ばされたんだぜ。襲撃者か何かだと勘違いするに決まってるだろっ」
「やーねえ、いきなりレディを殴りかかってくる男がどこにいるのよ。あんたたちが困ってるから、手を差し伸べってやったのよ私が、この私が」
私を二回も連撃するところにこの婆のプライドの高さが垣間見える。こうゆう婆は刺激するだけ無駄だ。それを本能的に悟っていた。貧民街での長年の暮らしが俺に与えた数少ない良経験である。
「にいにはかっこいいとこあるよ。ちょっとだらしなくて、根性がないけど」
「あー駄目よ。もっといい男はたくさんいるわ、この学園には。リリーちゃんなら選び放題よッ! 私が保証するわあ」
「ケッ 糞婆の保証書付きかあ。それダイジョウブ? 切符とかだったりして? 実は」
「いちいちうるさい男だねえ。小言はモテない男のすることだよッ。それにその切符はおそらく良い女の元へ誘ってくれる切符さ、極楽だね」
「ああ~そうだぜ。極楽へと連れって行ってくれるぜきっと、天国という極楽になあ。もう年だしな、ブルーハウダーさんもよ。ハハッ」
「この男ッ」
ゴツン。何かがぶつかった音がした。あれ、いつの間にか視界が回る。いや、俺が回っている。大きく回って、回って、止まったかと思うと天井が見える。顎がギンギンと痛む。
「げええ、気持ち悪いいいい。目が回るゥ」
顎を殴られたのだ。また見えなかった、否、奴の、ブルーハウダーの拳が飛んできたのだ。間違いない、奴はワープする。そうゆう力を持っている。
「さあ、行きましょうリリーちゃん」
「で、でもにいにが……」
「心配はいらないわ、数秒もたてば後をついてくるでしょう。あの手のチンピラは無駄に頑丈だからねえ
「あ、あの婆、あとで絶対殴り返してやる」
と心の中で反芻しながら、後をついていった。
うねりくねりしばらく歩き、階段を2つほどかけ上がった先に扉が見えた。奥からは、声が聞こえる。騒いでいる声がする。複数人いるのだろう。
俺はブルーハウダーが怖かったので数メートル距離を置き、殴られた顎をさすりながら後方を歩いていた。
リリーは相変わらず楽しそうにブルーハウダーと語り合っている。俺と違ってかなりブルーハウダーに気に入られたようだ。
そんなリリーの後ろ姿を見つめながらとぼとぼ歩いて行った。今日はリリーの後ろ姿ばかり見ている気がする。
「やっと着いたよ。ここが君たちの寝床と生活スペースさ、B錬の寮だよ。よく覚えておきな。5人の生徒たちがいる。まあ、一人欠席中だが、現状では男2人に女2人さ。全員お前たちと似たような年ごろだ。16歳から17歳くらいだな。皆、能力者だからね」
大きな扉を押すとギギギと軋んだ音を発しながら開いていく。中からは暖色の明かりが覗く。
内装は木造建築のようだ、下には茶色のタイルが敷き詰められている。階段を下りていくと、リビングルームが広がっていた。高い天井には光がともっている。
「注目~。生徒たち、こちらを見なさい」
バロッドが叫ぶと、場が静まり返りその場にいた5名の者たちがこちらを向く。その誰もがもの珍しそうな視線を向けてくる。
「この二人が先月から言っていた、新しい入学者たちだ。B錬で過ごすことになるからよろしく頼む、まず二人、自己紹介を」
ブルーハウダーは生徒たちの前では威厳ある様子で彼らに接する。普段はこんな感じなんだろう。堅苦しい。
「リ、リリーと言います。出身は……貧民街だけど……仲良くしてくれると嬉しいです。よ、よろしくで……す」
壮大な拍手が響く。リリーはかなり緊張しているようだ。それも無理はない、リリーはずっと同年代の若者と接していない、俺を除いて。近しい年ごろの女の子としっかり出会うのは始めたかもしれない。
「クロガミって名前だ。もちろんあだ名。本当の名前は知らない。このリリーと一緒の貧民街出身だ。よろしく頼む」
まばらな拍手が響く。あれ? 拍手の量少なくない? 気のせい?
「では、仲良くやるように。夕食は夜の8時から食堂があるからそこを使え。あと明日から授業が始まる。ちょうど新学期だからな、9時開始だ。時間は厳守するように」
「はい」
近くにいた5人が勢いよく返事を返す。
「また、明日」
ギギギと軋みながら扉を閉めていくブルーハウダー。バタンと閉まる音が鳴り響くと、皆一斉に騒ぎ出しながら、俺に近づいてきた。と思っていたが、俺をすり抜け、後方のリリーに群がっていく。
「ねえ、君どこから来たの?」
「貧民街出身て本当?」
「どんな能力持っているの? 見せて」
「凄い綺麗な髪だね、どんな手入れをしているの」
質問攻めをされたリリーはあたふたして困り果てている。どうしたらいいかという視線を俺に向ける。……知らん。分からん。頑張ってくれ。
残ったのは男二人、彼らは俺に話しかけてきた。女子は一切俺のことなど見向きもしないのに。
「なあ、クロガミっつうのかお前」
「ああ、そうだぜ。本名分からんからそう呼んでくれ」
「あとさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけどさあ」
「おお、何でも聞けよ」
男二人は双方から俺の肩に腕を組んできて部屋の端っこに移動すると、つぶやくように言った。
「お前さあ、あのリリーって子とどうゆう関係なんだよ」
「そうだぜ、聞かせろよ」
ああ、こいつらの興味対象も俺じゃなくてリリーだったらしい。奥手で話しかけられなかっただけだ、こいつらは。俺のことなんかこれっぽちも興味なさそうだ。
「いやあ、家族……みたいな……ね」
「嘘つけ、歳も近そうだし、仲良さそうだし」
「第一お前らてんで似てねーよ」
勘が鋭い、というか当たり前だ。白い髪に白い肌、大きく輝き透き通った瞳。俺はこのどれもを持っていない。むしろ真逆だ。黒い髪に、少し黄色がかった肌、一重で悪い目つき。疑われるのも当然である。
「別に……家族みたいなもんだぜ。関係ねーだろお前らは」
「関係ないわけねー、そこを有耶無耶にされちゃすごく困る」
「あーそうさ、リリーって言うんだっけか? いいなあ彼女。凄く純粋さを感じるよ」
「ははあ、お前ら。リリーに気があるんだな」
「ば、ばか違えぞっ。事実確認だ。困るんだわ、曖昧なことは。そうゆうのはっきりさせねえとムズムズする性でな」
「そうだそうだ」
こいつら……俺のことなんか見ちゃいない。
「ふん。お前らみたいな奴、リリーはこれっぽちも興味ないからな。今も、この先もずっとだッ」
「な、なにを。そんなこと分からねえじゃねえかっ」
「あいつはチンピラに興味ねえんだっ、お前らみたいな猿はな、相手にしちゃいねーぜ」
「……そっか、安心」
「だな」
急に肩から手を外して興味を無くしたかのように去っていき、クッションの上に寝そべるチンピラ二人。
「どうした……お前ら」
「チンピラに興味ねえんだろ? じゃあ安心だね。まだ」
「どうゆうことだ」
「お前、自分のことよくわかってねえようだな、お前のことだろ? それって」
そうゆうことか、この男たちはまったく単純で、おそらくこうゆう者たちを形容するに値する言葉を俺は知っている。それはおそらく二文字で動物の名前が入っている。馬と鹿。
「俺はホワイトって言うんだ。とりあえずよろしくなクロガミ」
「俺はマスタードね、よろしこ」
「あ、ああよろしく……」
「あー暇だからさ、賭け事でもするか? 負けたらリリーちゃんの趣味と好きな食べ物を教えてくれ」
「……やるかバカ。自分で聞け」
先が思いやられる。何でこんな奴らしか、俺の周りには寄ってこないのだろうか。
もしよろしければブックマークと感想をお願いします