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回帰列伝  作者: 鹿十
第一章 異能学園編
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3 新たな目標

 燃え盛る炎と、崩れていく木片。ただ少年だけが形を保ったまま存在している。

 覆面達は火で燃やし尽くされ、何もわからず、何もできない無力な少年だけが茫然と立ちふしている。

 いや、正確に言えば、無力だった少年だ。今は理解のしれない力を手にしている。


「ハア……ハア……、殺したんだ、俺が。人を……それも三人も」


 息を切らしながら、罪悪感を感じている様子を見せるクロガミ。発火を促した自分の右手を見つめる。何の変哲もないただの右腕だ。皮と骨だけで、筋肉などついていない。


「ざ、ざまあみろ、お前らなんか、焼かれて当然だっ。火葬にしてやったんだぜ。少しは感謝すべきだ」


 罪悪感など感じていない。体は自信と興奮で満ちていた。今まで感じたことのない高揚感。どれもこれも能力のおかげだ。

 どんな能力かは定かではないが、明らかに俺は能力者になったんだ。これで下民生活ともおさらばだ。


「いよっしゃあ、早くリリーに知らせねえと、これでこの腐った街から抜け出せるっ」


 急いで寝床に戻った。胴体と首がしっかりつながっている。生きている。、その事実がたまらなくうれしく感じた。そして何より能力者になったことを一刻も早くリリーに伝えたかった。

 お前と同じ景色が見える感覚を共有したかった。

 いや、そうやって体よく理由をつけているだけで、本当はすぐにその場から立ち去りたかっただけかもしれない。

 振り向いて、焼け焦げた店を見て、死んだキリーさんとおっさんを確認したくなかっただけだろう。

 彼らが死んでしまったという事実を受け入れられそうになかった。


「速く、速く。もっと、もっと速く」


 必死に駆け出した。もう何も考えないように、何も気づかないように。立ち止まって確認してしまったら、もう俺は、耐えきれない。

 大きい翼が生える能力を心の底から欲しいと願った。その翼で飛んでいきたかった。




 血だらけのまま寝床の戸を開ける。ただの倉庫だが使い勝手がよく、中々小綺麗にされていたので、それを勝手に寝床として使っている。きしんだ音を発しながら扉が開く。中には心配そうにこちらを見つめるリリーがいた。


「にいに?! 何してるの、ケガが凄い。これは一大事」


 リリーの驚いた顔を見ながら思い切り前方に倒れた。倒れた体をリリーが支える。


「ああ、ご自慢の顔がぐちゃぐちゃだ。特に鼻血が止まらねえ。これ、折れてないかな」


「見ればわかるよ。どうせ火事を見に行ったんでしょ」


「い、いいや違うぞ。あれだ、少し喧嘩をしてきたんだ。相手が鼻ばっかり責めてくる奴だったんだ、執拗に、何度も」


「へえ、じゃあ何で服のところどころに黒い焦げがついているのかな? 」


 リリーは俺の顔の手当てをしながら半信半疑な様子で語りかけてくる。返す言葉もない。返答に困る。話題を変えなければ。


「そうだ、リリー。凄いことがあったんだ。聞いて驚くなよ? 」


「はいはい、言ってみ。どうせそうゆうこと言うとき、大した話出てこないのリリー知ってるから」


「いいや、違うぞ。今回のはとんでもなく驚きに満ちた話だ。今から言うことはおそらくインド人もびっくりすることだぞ! 」


 リリーが困り切った顔でこちらの目を見てくる。すると首を傾げ、こうつぶやいた。


「インドジン? インドジンって何? リリー初めて聞いた。気になる」


 今度は打って変わって、リリーの目が好奇心であふれていて、自分の顔を俺に近づけ、息を上げている。


「はあ? え? 俺今インドジンって言ったか? 本当に? なんだそれ。俺はそんなことは言ってねーぞ。頭何回も打ったからな。俺はもっと馬鹿になっちまったのか? それは困る。」


「ねえ、インドジンって何? リリー全然知らない」


「イドジンやらインドジンやらの話はもういいんだっ。それよりな、驚いて腰ぬかすなよ? 兄ちゃんな、ついにな……」


 大きく一呼吸おいてからしゃべり出す。リリーは俺の手当てをやめ、俺がこれから何というかを期待している様子だ。


「能力者に成っちまったんだぜェーこりゃビックリ仰天もんだよなァー」


 場がしらける。リリーはがっかりしながらため息をつき、包帯を俺の腕に巻き始めた。


「ええ? 嘘だろ? なん、なんでリリー、どうしてだよ? 兄ちゃんお前と同じになったんだぜ。てことはよお、俺たち、ここから抜け出せるってことじゃねえかよ。思いっきり騒いでいいんだぜ? 拍手しようが、奇声を上げようが、そこら中に放尿してもいいぜ。オラ、喜べ! 」


 リリーの肩をつかみ揺らしながら熱心に語る、がリリーの耳には届いていない。


「あのね、にいに、すっごく申しにくいんだけどさ。あのさ、能力ってものはねえ、生まれた時についてくるものなの、神様からの贈り物みたいに、命とともに送られてくるものなの」


 リリーはまるで赤子に語り掛けるように優しく話す。


「にいには、能力以外でも、いいところ、たくさんあるでしょ。その黒い髪も、なかなかチャーミング。あとは……喧嘩っ早いところとかもあるよね」


「喧嘩っ早いことは誉め言葉じゃないぞ」


「だ、だから、リリーとは違くても、無能力でもいいって言ったでしょ? 無理して強がる必要はなし。それより早く寝てください。治療は終わりました」


 リリーはそう言って立ち上がりハンモックに戻っていった。大きなあくびをしている。


「そんなア、そりゃないよ。俺だって……使えたんだ、信じてくれよ、なあ」


「明日にしてね。リリーもうこりごり、寝る」


「ちっ、つまんねーの。俺の言うことを素直に聞いて喜んでいたリリーはどこにいっちまったんだ」


「さあ、元からそんな人いないよ」


 リリーの精神的成長をひしひしと感じながら、寝床についた。また明日から代り映えのしない毎日が続きそうな予感がしている。

 

 いや、そうであることを期待した。しかし、俺の日常はもう戻ってこないことを知っていた。俺の日常は明日には必ず転換を迎えるだろう。

 おっさんとキリーさん、どちらも8年余りの付き合いだ。

 そしてどちらも、親のいなかった俺の親代わりになってくれていた人だった。

 

 おっさんから言葉を学び、キリーさんから生活術と一般常識を学んだ。いや、それだけじゃない、もっと多くの物を彼らから渡された。

 それは希望だったり、愛情だったりする。

 

 人が死ぬのは慣れっこだ、もう何人も亡くなっていく人を見てきた。

 この前話した者が、一か月後には路上で死んでいたりしたこともある。友や、知人になった者の半数以上は死んでいったか、消息不明になった。

 だから、誰とも極力触れ合わない生活を送っていこうと努めた。

 

 キリーさんと、おっさん、それにリリー。この三人だけで十分だったし、それだけで俺の人生は完結していた。

 

 しかし、その三つの重要なピースの内、二つが一夜にして消え失せた。一ピースのみではパズルは完成しない。だから、ほかのピースを探しに行かなければならない。

 今までよりもっと壊れにくくて丈夫なピースを。

 

 その決意を、俺はしなくてはならなかった。


* * * * * * * * * * * * * * * * * *


 夢を見た。壮大な夢だった。

 俺は山の頂上にいて、傍らには聖杯があり灯が凛凛と燃えている。何より驚くべきことは目の前の風景にある。

 堂々と開けた視界の内にはありったけの人々が詰め込まれており、その誰もが頭をたれている。


 彼らは聖杯に向けて頭を垂れているのか? それとも俺に対してかしこまっているのか?

 何万? いや何十万の人々がいるのだろうか。

 疑問は止まらない。

 山の頂上には祭壇があり、その祭壇の上に俺がいる。これは本当に俺か? 顔を触り確認する。

 目があり、口があり、鼻があって髪の色は黒色だ。しかし、パーツのどれもが俺の物とは違う。俺と似ている外見の特徴をしているが、俺ではない。

 

 動揺を隠せずにいると、祭壇に一番近い位置にいる聖職者のような身なりをした少女が覆面を取り口を開いた。


「業火様、我らを導ください、我らには救世主が必要です。啓示を、結束を。しかるべき調停を。その燃え盛る炎を司り、栄光の平和を勝ち取り、はてには罪深い我々に贖罪を約束してください」


 一瞬で理解した。このわけのわからない文体を用いる者たち、謎の覆面。調停会の連中である。これだけの人数がいるとは。ますます得体のしれない集団だ。


 少女が顔を上げる。声が出なかった。覆面を外した顔はあまりにもなじみ深い顔が見えたからだ。

 

「……リリー?」


 白い肌に、青色の瞳、あまりにも似すぎている。これは現実か? そう錯覚してしまうほど緻密に細部まで彼女に酷似していた。


「業火様、啓示を」


 俺の手を取り、握り締めるリリーに似た少女。彼女たちは全員、俺に何かを望んでいる。しかし彼女たちに与えるべきものを俺は持ち合わせていない。金? 名誉? 財宝? 何を与えれば彼女たちを満たすことが出来る? 返答できない。ただ、一つだけ、彼女たちに不足しているものが分かる。それはたった今、俺が失ったものでもある。


「何も、何を与えればよいか分からない。でも……」


 大きく息を吸う。


「帰ろう……あるべき場所へ……僕らには居場所が必要だろ?」


 気づいたら、声を出して語りかけていた。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * * 


「かっああっ」


 痛みにもがくかのように起き上がった。睡眠中に唇を噛み切ってしまったのか、口元は血で赤く染まっていた。


「にいに、うなされてたよ。やはり後遺症? 頭でもぶったのかな」


「だああ、なんなんだよっ、昨日からっおかしいことばっか起こりやがる!」


 リリーは薪火をつけようとしていた。


「な、なあ俺、何も変わってないよな? 俺は俺だよな?」


 リリーは振り向いて俺の顔を見つめる。3秒ほど見つめた後ため息を吐く。


「何も。傷がついてることと、頭がおかしくなっちゃったこと以外変わらないよ」


「じゃ、じゃあリリー。お前、覆面をかぶったりとか、大勢で山を登って、意味の分からないことをつぶやいたりとかしないよな?」


「近くに山なんてないよ、フクメン?フクメンって何? リリー聞いたことないな。気になる」


 リリーは好奇心にあふれた顔でこちらを問い詰めてくる。こいつはいつもこれだ。言葉を覚えてこなかったリリーは、貧民街に来てから、捨て本や難解な辞書を読んで言葉を覚えた。

 だから聞いたことのない言葉を聞くと彼女は過剰に反応する。


「ねえねえフクメンって何?それはイケメンと何が違うの? 」


「あー、えっと、イケメンの類義語みたいなもん……たしか」


 だからこうやっていつも誤魔化す。この子の知的好奇心は凄まじい。もっと勉強をさせてあげたい。


「あの、それよりもな、昨夜も言ったようにな、俺、能力が使えるようになったんだぜ」


 先ほどまで輝いていたリリーの顔が一瞬で曇る。


「だからさ、能力はさ、羽みたいなもんなんだよ? 空をとぶにはさ羽が必要でしょ?持ってない人がいくら頑張ったって、羽は生えてこないの。リリーもさ、羽が欲しかったけど、我慢してるの。だって願っても無理だもん。だからリリーは空を飛ぶことは諦めて、手を使って料理を学び始めましたとさ」


「えーい、うるさい。そんなに言うなら見せてやるっ、おら、離れてろよ、この薪に火をつけてやるから」


 薪を一本手に取り、床に置く。大きく息を吐いた後、目をつぶり、右拳に力をこめる。


「はああ、みなぎって……きたな。見てろよリリー、ハアッ!」


 薪に向かって思い切って拳を振りかざす。ゴンと鈍い音が鳴る。火の粉一つも生じない。


「ええっいってえ、糞がっ。こいつ」


 何度も何度も右手で薪を殴る。しかし何度殴っても火は生じない。


「ふふっふっふふ」


 しびれを切らして笑い始めたのはリリーだった。


「にいにの能力ってのは、右手を赤くする能力のことね。把握。もういいよやめて。まあまあ面白かったよ。」


 リリーは完全に俺がふざけていると思っているらしい。兄としての面目をつぶされた俺は、とぼとぼとハンモックに戻っていく。


「ちえっマジなのによー。確か業火とか言ってたぜ、俺の能力のこと」


「はいはい」

 

 リリーはもう冗談だとしか思っていない。まじめに取り扱う気はないようだ。そんなリリーを横目に見ながら、もうひと眠りつこうと思っていると、ドアがノックする音が聞こえた。


「すいません、軍の者なのですが。クロガミと呼ばれている方でしょうか? 連合王国軍から通達が届いております。」

 

「リリー出るなっ、俺が行く」


 連合王国軍からの通達? やばい予感しかしない。ひょっとして俺たちここで消されるかもとまで覚悟して、恐る恐るドアを開けた。


「へえすいません、私、連合王国軍第二区域所属のパロッドと申すものですわ」


 ドアを開けて現れたのは大きく、太っている男だった。威圧感はあったが、物腰が柔らかく、優しそうな印象である。くせ毛なのか髪の毛はウェーブがかかったアフロの形をしており、黄色がかっている。

 

「軍のお偉いさまが、こんな貧民に何の用だよ? 飯をくださいってか? あいにくお前の腹を満たせそうなものはねーんだわ。他をあたってくれ」


 バロッドという男は、にっこりと微笑み、首を振った。


「いやいや、そんなそんな。なんかくれるっつうならもらいますけどねえ。そんな用じゃなくてですね。クロガミさん……で、あってますよね? あなたに異能学園への入学義務が課されていましてねえ。どうやら能力が開花したようでいらっしゃるので、いやーめでたいことだ」


 バロッドは出産を祝う親戚のおじさんのように喜んで拍手した。


「異能学園? 俺は能力が使えるようになったなんて、誰にも言ってないぜ」


「いやいや、はっきりと昨夜、あなた様の知り合いを名乗る者が伝達をしたそうですよ。たしか……舞踏様と名乗る方ですわ。クロガミという男は火を操るだとかなんだとか」


 舞踏? 舞踏武道……あいつだ。いったい何がしたいんだ? なぜ伝達をした?


「いや、なにはともあれめでたいことですわ。これが通達書です。あなたの能力は 第一領域 に分類されています。とりあえず準備を。まあ特に、持っていくものはないでしょうが……」


 バロッドは俺らの寝床を見渡して言った。失礼な奴だ。まあ実際、何も持っていくに値するものはないのだが。


「俺はァ能力なんて使えねえぜ。それにクロガミっつうのは俺じゃねえしなあ」


「え? にいに、クロガミって呼ばれてるじゃん? なんで嘘つくの?」


 リリーが口を出した。嘘はいけないって教えたのがあだとなった。


「ばかっ、話をあわせろ!」


「いや、ここらで黒い髪をしているのあなたしかいないから、バレバレですよ? それより後ろの子は? 彼女さんですか? 」


 バロッドに簡単に見破られた。完璧にだませると思ったのに。


「いや、妹……みたいな。ははっ血は繋がってねーんだけど……、それより俺を異能学園に入れる必要はあるのか? 今の暮らしでも俺は十分、幸せなんだけどなァー」


「そうそう、幸せ幸せ。それに、にいには能力使えないのほんとだよー? ゴーカとか、インドジンとか、意味の分からないこと、口走ってたけど。多分そうゆうお年頃なだけ。もう17歳なのにね。困っちゃう」


 リリーは俺の後ろに隠れながら、ちょくちょく言葉を発する。そうゆうお年頃はもう過ぎてるし、俺が能力を持ったこともやはり信じていない。


「そうですか。妹さんですか。異能学園には無能力者は入学できません。そうなると厳しいですかね、入学は」


 バロッドは少し悲しそうにうつむく。


「リリーは能力使えるよ?」


 リリーがまた口を出した。俺の肩に手を置き、顔を飛び出してバロッドに話しかける。


「ええっ? それは好都合ですねっ。二人一緒に入学。宿泊施設、大浴場、三食付きの生活ができますよ! それに大量の能力開発書、最先端の研究、学びが得られます! それに学費は無料です! 教材代はかかりますけどね」


「え? 学べるの? リリー少し興味あるんだけど」


 リリーはまた目を輝かせ始めた。確かに、今よりいい暮らしが無料でできるのなら願ってもない事、しかもリリーに勉強させてやれる。好条件すぎる。しかし如何せん、あの舞踏武道が推薦したという事実が引っかかる。何か、悪いことが起きそうだ。


「ね、ね?どうでしょうか? 軍の立場としてもですね、能力者は多く確保できるに越したことはなくてですね? こちらの体裁のためと思って……ぜひっ」


「あー、やっぱ無理、無理。きな臭くてしょうがなねえ」


 舞踏武道、ひいては調停会が関わっているとなると、行くのは危険すぎる気がした。俺の身ではなく、リリーの身に何か起こったら、たまったもんじゃない。


「さあ、帰ってくれ。バロッドつったっけ? そのまま回れ右して帰還してくれ」


「……やはり、そう言うと思いました」


 バロッドはにやりと笑う。何やら企んでる様子だ。


「舞踏様から、ある伝言を受け取っています。クロガミ様、あなたはつい先日大切な人を無くしたらしいですね? 」


 顔がひくついた。あの糞舞踏。そんなことまで伝えているとは。


「異能学園は様々な能力者が集います」


「あ? 何が言いてんだおめー」


「噂なのですが、『適者生存』という能力を持つ者が異能学園に在籍しているそうなのです。

彼か彼女かはわかりませんが、そいつは人を生き返らせることが出来るとか……」


 つばを飲み込んだ。リリーはわけがわからなそうに首を傾げている。


「まっ噂ですがね。僕が異能学園に在籍していたのは7年前ですからねー。詳しいことは知りませんが……行く価値はあると思いますよ?」

 

「……」


 言葉が出ない。テキシャセーゾン? 人を生き返らせる? そんな能力が本当に存在するというのか?


「3割程度の希望と7割の絶望が入り混じった可能性だと、舞踏様はおっしゃっていらっしゃたそうです」


「……」


 キリーさんに酒場のおっさん。彼らが生き返ったとしたら。俺はどれほど喜ぶだろうか。いや、どれだけの感謝を伝えるだろうか? 伝えたいことは山ほどある。そしてその可能性が目の前を転がっている。


「にいに?」


 リリーが心配そうに話しかけてきた。


「リリーごめんな。兄ちゃん少し、お前を危険な目に合わせちまうかもしれねー。でも、そうだとしても、やってみたいことが出来たんだ」


「おいバロッド! いつ出発だ? 」


 バロッドはにやつきながらお辞儀をし元気よく言う。


「いつでも! 準備ができ次第、出発いたします」


「リリー、行こう。新たな目標が出来た」


「うん! どこへでも行くよ。そうやって決めてたもん」


 新たな目標ができた、失敗を糧に、俺らは進まなくてはならない。


「おいバロッド、俺の能力火が出る程度のもんだぞ? あとから文句言うなよな」


「はい、わかってますよ。それを承知で訪れたんですわ、何故だが上のお偉いさんは、炎の能力者を欲しがるんですよねー。たいして使えない能力なのに……ああ、いえいえ、忘れてください」


 いつも一言余計だ、このバロッドという男は。


 


 


 




 


 

 



 

 

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