表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗殺者は世界に恐怖を知らしめる  作者: 永山ぴの
1章『殺し屋と女子高生』
6/59

1章6話

6話~互い~




 「──何か、大きな隠し事がありますよね?……犯罪並みの」


ユズは今、屋上でそう言った。

俺に向かってだ。

 ──どこかで何かヘマをしたか。

俺が暗殺者だと見抜かれてしまうような言動をしてしまったかのか。

 そう思ったが、そんな心当たりなどない。

運動神経が良いような場面はあったが、俺が何かを隠しているような素振りをした覚えはない。

なら、何故ユズはそう問うのか。

 ほんの数秒だけでそう考え、目の前で両手を握って返事を待つユズを見る。

 ──いや、気付かれていない。

俺が暗殺者という事実は全く知らないという顔。

ユズは不安そうに、こちらの返事だけを待っている。

ここで、「ない」と言えばそのまま引き下がってくれるだろう。

ただ、知っているのは俺に聞いたこの質問だけで精一杯なのだろう。

だが、ここで俺が暗殺者だと気付かれたら作戦失敗だ。

どこでそんな事に気付いたかは不明だが。

 「ええと……何で犯罪並みなんだよ」

なるべく焦りを悟られないようにしながら、ユズの目を見つめ返す。

すると、彼女は一瞬だけ目を伏せたが、すぐにまた答える。

「あんまり人に言ったことないんですけど……なんと言うか、ですね……嫌でも人の感情が目に見えるんです」

 どうやら自分でも鬱陶しいくらいに人の心が読めてしまうらしい。

何があってそうなったのかは分からない。

ユズなりには〝嫌でも見えてしまう〟と言うのが、その才能に苦しんできたように見える。

 「……そうか。」

ひとまず、そう言うとユズは1歩前に出てきた。

「ユキトくん、何か私に向かって隠してますよね?私、何でも聞けますし嫌味なら慣れてます!だから、会ったばかりの私でも……大きな事でも………教えてくれたら……」

「そのうち、嫌でもわかる」

「へ?」

俺がボソリと言った一言。

 ユズは言葉を止め、見つめていた。

何を考えているのかはわからない。

だが、今俺が言えるのはこれだけだ。

「ユキトくん。あの、それってどういう意味で…」

 目の前のユズが何かを言おうとした時だった。


「ユズ!」


屋上の扉がバンと音を立てて開き、そこから1人の生徒が飛び出してきた。

 制服はこの学校の生徒で、サイドテールの女子生徒。

少しだけ息を切らしながらズカズカ寄ってくる。

 「もう、ユズ!こんなとこにいた…!」

「ちょっと、ゆっちゃん…!?」

「ゆっちゃん」と呼ばれる女子生徒はユズに抱きついた。

だが、抱きつかれた当人はオロオロとしている。

 すると「ゆっちゃん」という女子生徒は俺を視認するとジロリと睨む。

 俺何かしたか、と思うが初対面なため、もちろん心当たりなどない。

 「ゆっちゃん」はユズから離れて、肩を掴むと厳しい目で訴える。

「こんな知らない人と屋上なんて行っちゃダメでしょ」

「お、お母さんみたいな叱り方はやめて下さい……それと、この人はそんな人じゃない……と、思い…ます………」

「最後のしぼむ声は何!?やっぱりそうじゃん!」

ユズはシュンとなるが、俺が安全な人だという保証をしてほしい。

だが、さっきまでの会話からそんな空気にはなれない気もする。

 「で、誰?」

再び睨んで聞いてくるので、思わずため息をしてから話す。 

「稲垣ユキト。てか、そっちこそ誰」

「ユキトくん、この子は私の親友の柴田アユちゃんです。愛称はゆっちゃんですよ」

「いや、そこは普通あっちゃんだろ」

ユズが代わって丁寧に紹介してくれた。

が、向こうからの敵意が激しいので仲良くなれる気はしない。

「ねぇユズ。本当にこの人大丈夫なの?近付くなオーラもすごいんだけど」

「えっ、そうですか?……んー…そんな気もしなくもない……ですね」

 二人は俺の事で話しているが、どうにかアユには警戒を解いて欲しい。

もし、俺が危険な人物と見なされてアユがユズに付きっきりになったら暗殺のチャンスは格段に減る。

どうにか乗り切らなければ。

「言っとくけど、俺はただの転校生」

「そういう言い方の人が一番怪しいもんなの!」

「アホか。アニメの見過ぎだろ」

全く引かない様子のアユ。

 すると、ユズは俺とアユの間に入ってくる。

「二人とも、仲良くして下さい。お互い、悪い人じゃありません。私が保証します」

そう言って微笑む。

俺は別に喧嘩をしようという意気はなかったのたが。

するとアユは葛藤していたがユズの願いに負けたのか、「はぁぁ」ため息をついてから俺の背中をバシバシ叩いた。

「ユズが言うなら、まぁいいか。この子、案外ちゃんと見極める方だもんね」

アユはそれだけ言うとスタスタ扉の方へと戻っていく。

 「……ユキトくん」

ふと、ユズの声がして見る。

「ごめんなさい、あっちゃんって私の事をすごく心配してくれるんです」

「そういう友達は良いもんなんだろ」

「…はい!」

 ユズは笑うと、アユに続いて屋上から出ていく。

扉から出る寸前、再び俺の方へと振り返った。

「会ったばかりの私が言える事じゃないと思いますけど、少なくともユキトくんは完全な悪人じゃないと思います。何か事情があるなら、手伝わせて下さいね」

そう言い残すと、パタンと扉がしまった。

 屋上には俺1人となった。

ユズの友達と言う柴田アユはひとまず中立関係くらいの仲となれた……気がする。

ユズ本人は、何やら考えがあっていつまで経っても俺を信じるつもりらしい。

「……暗殺者だっての」

思わずそう呟くが、聞く人など誰もいない。

俺は屋上の端にひっそりと立て掛けてあった縦長のケースを取る。

ユズ達と話している最中、右手からポケットへと隠し持っていたダガーを中へと放り込む。

ケースを右肩に下げ、銃やらの武器の重みを感じる。

一応と思って武装類を持ってきたが、全く出番はなかった。

余計な荷物だったかと思うが、ないよりは準備をしておくに越したことはない。


「………っし。決めた」


1つ決心して、俺は屋上から出た。







 「──早野ユズは殺す」


拠点に着いて早々、俺は宣言した。

今、部屋に集まっているのは滝澤さん、リユ、アオイ、俺を含めて全員だ。

全員が揃っていてくれたのはちょうど良かった。

 だが、三人は、俺が宣言した瞬間に固まった。

俺も何も言わないという状況。

すると、その沈黙を破ったのはアオイ。

「ユキト、本気?あんなに悩んどいて殺すって……その子、絶対何かあると思うよ」

それに続いてリユも椅子に座ったまま身を乗り出してきた。

「アオイっちから話は聞いたけど、ユズちゃん……だっけ?依頼人から企みプンプンなんでしょ?そんなのに言われた通り仕事したところで罠にでもハマったらヤバいって!」

もっともだった。

リユの言うことは一理ある。

だが、俺にも考えがあるのだ。

「もちろんそれも考えた。けど、ユズは他のターゲットと変わりない」

「ユキト君……」

 滝澤さんは心配そうに見てくるが、俺は円形のテーブルの上でノートパソコンを開く。

真っ黒な画面に俺の目的のメモが映る。

「滝澤さん達も、もっとこっち来て下さい」

俺が手招きすると、三人は首を傾げながらも寄ってきた。

そこで俺は画面を三人に向けて見せる。

「今回の仕事は、皆にも協力して貰いたい」

「ユキっちが〝協力〟って言った!?」

「うるせぇ」

確かに普段は言わない言葉だが、リユを手刀でチョップする。

すると、その間にパソコン画面を覗いた滝澤さんとアオイが目を見開いた。

リユもチョップを食らった額を抑えていたが、間に入ってくると「ええ!?」と声をあげる。

「ここに書いてある事が事実だと思う」

「ユ、ユキト君、どうするんだい」

 流石のプロの滝澤さんでもこの展開は予想外なのだろう。

俺でも、自分で決めた結論に行き着いた時は衝撃を受けた。

だが、これしかないのだ。

 滝澤さんが訊いてくると、俺はパソコン画面を右にスライド。

2ページ目の画面を三人に見せる。



「この作戦で行く。今回の依頼は『トゥルース』総力戦で行かないと……死ぬ」



4人全員に緊張感が走った。






ーーーーーーーーーーーーーー






 「ユキトくん……」

私は下校道、スクールバックを持ち、歩きながらそう呟いた。

気になる事が多すぎた。

何故、彼は私に殺される心当たりがあるのかを聞くのか。

死にたくないのか──と聞くのか。

 人通りの少ない住宅街をチマチマ歩いていた時だった。

大事な考え事をしてるにも関わらず、私の前に人影が見えた。

だが、私は気付かずに正面からぶつかってしまう。

「わ、ご…ごめんなさい」

謝りながら、私よりも身長の高い男性を見上げる。

すると、顔は予想以上に物騒で今にも喧嘩をふっかけてきそうだった。

服装は真っ黒なスーツで威厳が増している。

漫画のボディーガードの1人かと思ってしまうほどだ。

思わず後退りしてしまったが、失礼だと思ってそこで踏み留まる。

「……早野ユズか」

「えっ…」

巨漢は私の名前を呼んだので、思わずコクリと頷く。

 すると、突然だった。

大きな手が私の肩を掴もうとしてきた──ところで、後ろにステップして回避した。

「チッ。逃げんな!」

 男はそう言って再び追い駆けてくる。

だが、私は左に避けてからその場で高く跳ぶ。

そのせいで、スクールバックが地面に落ちたが気にしている暇などない。

長身の男よりも少しだけ上の高さに位置した時。

「ごめん……なさいねッ!!」

右手の拳でおもいっきり後頭部を殴る。

ガァンといういかにもヤバい音がした気がする。

左足から着地して、男が息をしているのを確認する。

うっかり危ないところを殴って死んでしまうなんて事がなくて良かった。

 だが、こういう時のために格闘技などの体術系を身に付けてきたのだ。


「本当に……これってお父さんのせい、なのでしょうか…」


思わずそう呟く。

だが、この場にもういない父親の事を考えてもわかるわけがない。

こうして狙われるのは「自分のせいだ」とお父さんは言っていた。

だが、私にはわかった。

本当は違う。

それも、私の嫌なほど心を見抜ける体質のせい。

そしてまた、このせいでユキトくんの秘密をほじくり返してしまう。


「けど、ユキトくんは悪い人じゃない……」


自分で口にして、改めてそう決める。

 そこでやっと落としていたスクールバックを拾う。

「あっ……警察に連絡しないとですね」

私は思い出してスマホを手に取った。


だが、複雑な思いは渦巻くままだった。

2日に1回か、3日に1回くらいのペースであげていきます!

事情により、何日か更新しない日もありますが……ぜひ、お気に召したら呼んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ