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暗殺者は世界に恐怖を知らしめる  作者: 永山ぴの
2章『殺し屋と暗殺組織』
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2章8話

8話~情報源~




 拠点から離れ、隣接市のとある山中。

 何メートルもある木が生え、葉の隙間から日光が微かに差している。

狭い道には木は生えていなく、ある程度陽が当たって明るいが、草が生い茂っている。

雑草を避けながら進めば普通に歩けるが、あまり人通りはない様子だ。


「本当にこんなところに住んでるんですか……?」


 俺の目の前に映るユズが大木に手を添えて葉のトンネルを見上げる。

 結構な傾斜にも関わらず、疲れた様子もなく登っているのを見ると、改めて彼女の身体能力の高さが実感される。

 俺も体力をつけたくて、アオトを無理矢理引きずってダッシュで山登りをした事がある。

その成果もあるのか俺自身も息が切れる事もなく進めている。

 それに、これから会う人物に地図も既にもらっているため迷う事はない。

だが、ユズの方は道が本当にあっているのか不安なのか、来た道を振り返って気にしている。


「大丈夫。アイツがこの山だって言ったんだから、そうなんだろ」


 そう言い、小道を左へ曲がって急傾斜を登る。

 木の根本に怪しげなキノコが生えているのが少し気になったが、無視して手にしている地図の通りに進んでいく。

 曲がりくねった道を歩き、小さな階段を登り、草をかき分けて少し大きな道を行く。

先程よりも木の高さが低くなり、少しずつだが陽も当たりやすい場所へ出てきた。

 すると、緑の景色の中に木製の建物──ログハウスらしきものが見えてくる。


「あっ。ユキトくん」


「ああ、アレだ」


 ユズは小走りで進み、ログハウスの目の前で立ち止まり、見上げる。

その後について行き、俺も改めてログハウスを見るとその作りに圧倒される。

 木製のログハウス──いや、別荘だろう。

別荘は作られている木が新しく、目立った汚れもない。

おそらく新しく建てたのだろう。

 ベランダには小さな机と揺り椅子が備えられていて、その隣に扉がある。

あそこが玄関だろう。

 俺は玄関まで寄り、インターホンもないので扉を二度ノックする。

コンコンと音がするが、それだけで誰も出てこない。


「いないんでしょうか……?」


「あんまりここから出入りはしないと思うけどな」


 俺はもう一度扉を叩く。

が、またしても返事なし。

 試しにドアノブを動かしてみようかと手を動かしたところで──


「名乗りなさいッ!」


扉がおもいきり引かれ、玄関には同い年ほどの人物が。

 ショートカットの髪型にクールな印象の面持ちを持っており、今日は私服。

目の前の──裏としての一員である瀬川アカネは俺達に銃口を向けている。


「俺。暗殺者さんだ」


「………あら」


 俺達を視認すると、銃を降ろして目をパチクリさせる。

アカネはホッとしたように息を吐くと、玄関の壁掛けに銃を置く。


「来るならなんか言ってくれないと困るんだけど」


「めんどくせぇ」


「その辺はしっかりしなさいよ」


 俺の受け答えに「素っ気ないわね……」と呟いたかと思うと、俺の後ろに目線を向け、黙り込む。

振り向くと、ユズが申し訳なさそうに俺の後ろに隠れる。

 それもそうだろう。

元々、アカネはユズを殺したくて俺に依頼してきたのだ。

 俺はユズへ接触し、アカネとも顔を合わせて計画を練ったがアカネの企みを感じ取った。

そのため、彼女がユズや殺し屋組織である『トゥルース』を根絶やしにしようとしていることを察し、『トゥルース』総動員でアカネに対抗した。

最終的にはなんとかアカネを押さえ込み、部下──いや、裏の一員として引き入れる事に成功した。

 が、ユズとアカネの仲が変わるわけがない。

 それにも関わらず、ユズは今こうしてついてきた。

何か考えていることがあるのだろう。

 すると、アカネはユズから視線をずらして別荘の中へと誘導する。


「ま、何か話があるのよね。入ってちょうだい」


 俺はそのまま玄関内へと入る。

その後ろへユズも入ってくるのかと思ったが──


「えっと……早野、何してるの?」


アカネの困惑の声が聞こえ、俺も振り返るとユズはその場から動こうとしない。


「あ、いや……私が入ったら殺虫剤でも撒かれるんじゃないかと」


「そんな事しな……前ならやりそうね」


「もはやただのいじめじゃねぇか」


 呆れていると、アカネはユズの後ろに回って背中をバシバシ叩く。

ユズは戸惑ったまま、押されて玄関内へと入る。


「話進まないから早くして!ほら、さっさとソファーまで行って!」


「ええっ。は、はい……」


 ユズは嫌そうな顔をしたアカネに誘導され、リビングへと進む。

俺もその後に続き、リビングへと入ると──


「いや、広すぎ……」


中は見た目よりも広く、お洒落に飾られていた。

 ソファーとローテーブルが備えられており、その手前にキッチンが設置されている。

観葉植物なんかも置かれていて、旅行時にでも泊まるような別荘だ。

 アカネの家はわりと金持ちだし、当然と言えば当然なのかもしれないが。


「何突っ立ってるのよ」


 いつの間にか紅茶を淹れたアカネがティーカップをおぼんに乗せてキッチンから出てくる。

 3人分のティーカップをローテーブルに置き、座れと促してくるのでユズと顔を見合わせ、ソファーへ座る。

アカネが奥へと座り、俺とユズは広いソファーに二人で座る。

 予想はしていたが、このソファーも高級品な気がする。

柔らかく、座り心地がとてもなく良い。

 マトモな人生を生きて来なかった俺にとってはこんな別荘にお邪魔する事なんてそうそうないだろう。


「すごいとこ住んでるな……てか、隠れるならもっと地味でも良かったんじゃないか?」


「これがうちが持ってるなかで一番地味なやつよ」


「金持ちアピールうぜぇ」


「ま、まぁまぁ……」


 そう、瀬川アカネは俺達と敵対し、交戦後にこの騒動がバレないようにとこうして山の中に隠れているのだ。

高校で激しく争ったため、こんなのが警察にバレたら大変な事になる。

本来なら、きっと高級住宅なんかで暮らしているのだろうが。

 ふと見ると、アカネはティーカップを持ち上げ、紅茶を飲む。

その姿は、まるでどこかの貴族かのような上品さ。

背筋を伸ばし、ティーカップを持つ一つ一つの動作が丁寧。

 これじゃあ、俺やユズとはまるで違う育ちというのが実感させられる──と思い、ユズの方へと視線をずらした。

が、違った。

育ちが違うのは俺だけだ。

 ユズも足を揃え、音も出さずに紅茶を飲む。

こちらもまたマナーが良すぎるほどだ。

 よくよく考えれば、ユズは現在完璧主義の母親の元で暮らしている。

なら、当然テーブルマナーだって教えられただろう。

 それに比べたら俺は、両親から必要とされずに勉強して適当に飯を食って難癖つけられて生きて、その親から解放されたが現在は暗殺者──どこにもテーブルマナーなど学ぶ要素がない。


「……………」


 二人が同時に紅茶を啜り、上品さを見せつけてくる度に俺が居づらくなっていく気がする。

俺が場違いと言うか……


「あの、ユキトくん?どうしてそんなに端っこにいるんですか?」


「いや、俺が来るのはやっぱやめとくべきだったと思ってる」


「それじゃ話できないじゃない。ふざけてないで、早く話しなさいよ」


 アカネに呆れられたので、俺はソファーの隅から元の位置へ戻り、紅茶を一口飲んでから切り替え、口を開く。


「じゃ、本題に入らせてもらうか……簡単に言えば、ちょっと調べてほしい事がある」


「……どうしてわざわざ私に?」


「そりゃ、お前に頼んだ方が早いからな。それに、こっちも調べることがあるんだ」


 俺が言うと、アカネは考えるようにしてから再び顔を上げる。


「で、どんな内容なの?」


「殺し屋組織『ライフ』ってやつだ。ソイツらの素性とか、怪しい事があれば底まで調べまくれ」


「随分と大雑把ね」


「こっちも知らないことが多いんだ。俺も俺で調べるから。この書類に全部書いてある。これ頼む」


「……契約みたいなものだものね。仕方ないわ」


 アカネはため息を吐いてから、俺が差し出した書類を受け取る。

どうやら、頼みは受けてくれるらしい。

 アカネという情報源があれば、こうやって調べる事も迅速に行える。

これだけで依頼を受けた時、暗殺もすぐ終わるだろう。

 なんとも有力な情報源。

瀬川アカネは手離すわけにはいかないだろう。


「……ちなみに、どうして早野は来たの?」


 アカネはユズの方へと視線をずらし、真剣な表情で訊く。

 ユズは一瞬だけ狼狽えたが、すぐに顔を上げる。

だが、制服のスカートをキュッと握っている。


「あの……無茶、というか………バカな事言ってるのはわかってるんですけど…………瀬川さんと仲良くなりたいんです……」


 俺達は目を見開いた。

 ユズから出た言葉は、まさかの「仲良くなりたい」。

 何故、そんな事を思っているのか。

ユズの父親である滝澤さんはアカネの母親を殺し、滝澤さんを止められるはずだったユズまで責められていたというのに。


「あ、あなたね……何を思って、そんな………」


「本当は昔からそう思ってたんです。でも、私が声をかけるよりも先に……瀬川さんのお母さんが………」


「だからって……」


 アカネは戸惑ったようにしているが、ユズと仲良くなるような感じはしない。

 当然だろう。

殺そうとするまで憎んだ相手だ。


「私はね……今も本当は早野を殺したくてたまらないのよ。そんなお花畑みたいな思考はやめて……」


 アカネはキッと睨み、ユズを追い払おうとする。

が、ユズは何かを察したような顔でアカネを見つめ返す。



「嘘ですよね、それ」



ユズの口から出た言葉は、再び俺達を驚愕させた。

 アカネが言う〝ユズを殺したい〟という意志は嘘だと、彼女はそう言った。

だが、俺に依頼をしてまでアカネはユズを消そうとしていた。

なのに、それが嘘ということなど……


「な、何を言ってるの……そんなわけないでしょう!」


 アカネは耐えかね、ローテーブルを叩き立ち上がる。

勢いで叫んだのにハッとして、口元を押さえたが、言ってしまったものは言ってしまったのだ。

 すると、ユズが再び口を開く。


「本当はずっと疑問だったんです。瀬川さんからはちゃんと殺気も感じるのに……なのに何で、私に〝殺す〟と言う時だけ申し訳ないような……〝殺したいのに殺したくない〟とでも言いたげな意思があるんですか?」


「……な………」


 ユズは基本的に他人の心を感じ取れる。

嘘だって、なんだって。

 それで気付いたのだろう。

アカネが〝殺したいのに殺したくない〟と言いたい事も。

 だが、それは俺は気付かなかった。

ユズと同じレベルまで他人の思考は読めない。

できることは、せいぜい嘘を見破ることや気配で企みを察する事くらいだ。

 それを考えれば、ユズの方が相手の心を見透かすのには向いている。

そんな彼女が言うことなのだから、きっと合っているだろう。


「瀬川さんのお母さんが死んでから、瀬川さん自身も辛かったんですよね。きっと、それで心に思ってないことまで……」


「ちょ、ちょっともう黙って!!」


 ユズの言葉を止め、頭を押さえる。

アカネはそのまま微動だにしなかったが、やがてゆっくりと座り直す。


「……言わないわ」


「え……?」


 掠れた声で言い、ゆっくりと顔をあげると、アカネは真っ直ぐにユズを見た。


「本音は、言わない。仲良くなろうって言うのも保留にしといてちょうだい」


「そ、そうですよね……ごめんなさい、詰め寄るような形になっちゃって。あ、けど……」


 ユズは何やらポケットを探っている。

そこから出てきたのは、手の平サイズの可愛らしい豚人形。

 それをアカネへと差し出す。


「せめて、これは受け取ってくれないかなぁと……」


「……………」


 渡された本人は戸惑い気味で人形を見つめていたが──


「ぷふっ……何よこれ」


吹き出すと、笑い始める。

 予想外な反応に、ユズや俺は思わずアカネを見つめていたが、その視線に気付いて本人は笑いを止める。


「こ、こんなダサいの、どこで売ってたの。まったく」


「それ、アカネと敵対した時に騒動で誰かが廊下に落としてたやつじゃねぇか」


 俺が記憶を掘り起こし、口にするとユズが慌てる。


「あっ、いや別に拾い物じゃ……ああ、けど拾い物ではあるんですけど!その、二人で争った思い出と言うかなんと言うか……!」


「あれってそんなに素敵な思い出じゃないわよ……」


「で、でも!あの争いあったからこうして話せてるじゃないですか!」


 ユズが言うと、アカネはハッとして俺の方を見る。

おそらく、その争いを終わらせたのが俺だからだろう。

 ユズが仲良くなりたいだの、変な人形を渡してきたのは予想外だが、彼女もそこまで拒否はしていない。

いいんじゃないか、という意思を乗せて頷くとアカネは迷ったようにしてから人形を握る。


「とりあえず、貰っとくわ……けど、仲良くはなれないわよ」


「わかってます。殺し屋の娘ですから」


 ユズは苦笑する。

 が、前よりは話せるようになったんじゃないか。

どこか雰囲気が変わった気がする。

 俺的には人の心が欠如しているし、理解しがたい部分もあったが、二人がそれでいいのなら構わないだろう。

 だが、ユズは出会った当初に比べて自分の気持ちを伝えられるようになってきている。

それを考えると、彼女がアカネとの仲を良くしたいというのも応援してもいいのかもしれない。


「ユズ」


「?」


 俺が呼ぶと、ユズはこちらを見上げる。

なんとなく、ユズの頭に手を置いてから口を開く。



「お前なりに頑張れ」



「はい……!」


 こちらの意思を感じ取ったのか、笑顔で頷いた。

 ここに来て、一番の笑顔かもしれない。

それをアカネ相手にできるようになればいいのだが。



「そんなんなら、さっさとくっつけばいいのよ……」


アカネは頬杖をついて何か呟いたが、俺には聞こえなかった。

最近は3日に1回のペースであげてます。

よろしくお願いします!


頑張って書いていくので、ぜひこれからも読んで下さい!

次は9話、頑張ります。

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