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1-4 反逆の力

 

 拝啓、まだ無事かもしれない村の皆様。

 俺はこの何も無い島から、世界へ反逆すると決めました。


「さてと、じゃあ2人には協力してもらうからな」

「えぇー、本当にやる気ぃ?」

「マサムネ様に助けてもらったんです。ワタクシは付き合う気満々ですよ」

「マサムネはさっき貸し借りなしだって言ったし……」

「俺が貸し借りなしって言ったのは首輪の件だけだぜ」


 そう言って俺は赤い手形の付いた両頬を指す。

 流石の俺でも2度目のバイオレンスを許す気は無かった。


「っ、ごめんなさい。はい今謝ったからその件もチャラ」

「メネちゃん!」

「……分かってるって。この島にいる以上、捕まる以外はそれしかないんだから」


 口をとがらせながらメネに、俺とノルンは顔を見合せて笑う。

 こうして俺達の意思は1つに固まった。

 この世界に対して、おそらく20にも満たないであろう男女3人が反旗を翻した瞬間である。


「よし……で、どうすればいいんだ」

「言うと思った。本当に思いつきで言ったのね」

「しょうがないだろ。俺何にも知らないんだから」

「何にも知らない以前に私達には目的すらないでしょ。“陸”に逆らうって言っても、どうする気なのよ」

「そりゃ……なあ?なんかこう、あるだろ?如何ともし難い不満が」

「マサムネ様……」

「……はぁ」

「な、なんだ2人のその冷たい目は!やめろ!やめてくれ!」


 言われてみればそうだ。

 理不尽が許せないという曖昧な考えだけ。

 勢いに任せて逆らうなんて豪語したはいいが、その先は何も考えてなかった。


「真剣に何も考えてなかったとはね」

「待て待て待て!今考える!」

「まさか本当にただワタクシ達のことを助けたかったから、助けたんです?」

「いや、いやいや俺だってちゃんと打算があって助けたんだよ。そんな、そこまでお人好しじゃないよ俺は」

「クス……それでもいいのに」

「むむむ、俺の目的_______________」


 それは、割とすぐに浮かんだ。

 村を無茶苦茶にされた恨みとか、理不尽が許せない正義感とか諸々ひっくるめて俺は、陸に淘汰されている人々をーーーーーーーーー。


 ーーーーーーーーー。

 ーーーーーーーーー。

 ーーーーーーーーー。


「……あれ?」


 違う。

 俺は物事を知ることが大好きなんだ!

 “陸”に行こう!陸をこの目で見たい!

 まずは陸を目指すことにしよう!

 そうするべきだ!


「あ、あ……そうだ!陸を目指そう!」

「……マサムネ様?」

「陸を目指す、ね……まあいいんじゃない?とりあえずはそれを目標にしようかしら」

「だろ?俺はまだ何も知らない。まずは直接この目でこの世界の現状を見たいんだ」

「……そうですね。マサムネ様が決めたのなら、そうしましょう」


 何故か、一瞬、ノルンが俺を訝しむような目で見た。

 何故だろう。

 俺は何もおかしいことは言ってないのに。


「よし。なら、最初に私達のすることは決まったも同然ね」

「というと?」

「ズバリ、ここに来る飛行船を奪うことよ」

「武装してくる10人にゃ敵わないって、さっきお前が言ってなかったか?」

「それは戦う気があるのがアナタ1人だけだったから。今は違うわ」

「ワタクシとメネちゃんがいます」

「そ、し、て!さっきので分かったことが1つ」


 ビシッとメネはドヤ顔で俺を指さした。


「マサムネ、アナタ魔力持ちよね?」

「魔力?あ、ああ……って、皆そうだろ?」

「ハッハーン!アナタさては世間知らずねー!」

「……ノルン、こいつムカつくんだけど」

「へへ、許してあげてください。テンション上がってるんですよ」

「いい?魔力持ちってのは超レアなの。亜人の中じゃまずいないし、人間でも3桁いかない人数だわ」

「村じゃ全員魔力持ってたけど」

「シャラーップ!そんな化け物村の話もう聞き飽きたわ!」


 メネはハイテンションを維持したまま、木の棒で地面に絵を描き始めた。


「亜人を捕まえに来る部隊。通称“爪”は10人くらいで飛行船に乗ってくるわ。その全員が武装してくるの」

「これ……人描いてるんだよな」

「この下っ端はみんな魔力なし!故に、機杖(ワンド)に頼りきった戦いで私らを襲いに来るわ」

「なんか棒持ってますね……?これ機杖(ワンド)描いてるんです?」

「武器は麻痺なり催眠なりを付与した魔力の塊を飛ばすモノ。つまり、飛び道具で遠距離から攻撃してくるわけ」

「ぐにゃぐにゃの生き物が、棒を持って、何かの生地をこねてる図……?」

「ふぅ……力作ね。どう?分かった?今のアナタがどれだけ重要な役割なのか」

「いや全く」


 そうキッパリ言うと、メネはわざとらしく肩をすくめた。

 はぁこれだから、と口パクで言っている。


「魔術使えるアンタがウチの要になるってこと」

「メネちゃん、最初から口だけで説明してください」

「……そうか。大体理解した。俺が頑張ればいいってことだな」

「それはそうなんだけど、ここで問題点が1つあんのよ」


 そう言ってメネは集落の外、木の群れを指さした。

 葉がほとんど無い、細い枯れ木が一帯には広がっていた。


「この島、集落除いたらあと全部がこんな感じなの」

「昔はもっと木の実がなってたりしたんですけど……」

「見晴らしが良すぎる上に、隠れる遮蔽物もない。こんなの十人がかりで飛び道具ぶっぱなされたら逃げ場なしよ」

「その機杖(ワンド)ってのは、どれくらいの威力なんだ?」

「まあちょっとした拳銃程度よ。ちゃんとした木がここに立ってれば、全然大丈夫なのに」

「そうか_______________」


 俺は地面に触れ、そこら一帯の木全ての存在を感じ取った。

 消え入りそうな生命、乾ききった命。

 俺はその全てに力を吹き込む。


「え、何?」

「はぁっ!!」


 一瞬、光り輝いたと思うと、そこら中にあった枯れ木達は余すことなく動き始めた。

 幹は太く、葉は無数にかつ、青々と。

 あっという間にその場に森が復活した。


「「……!!」」

「_______________ふぅ、上手くいったな」

「う、う、上手くいったなじゃないわよ!何?なんなのこれ!」

「そのまま、生い茂ってた頃と同じです……!」

「力を送ったんだ。流れを読んで」

「流れを読んでって、は?アナタの村皆こんなこと出来るの?」

「いや?これは多分俺だけかな」


 結晶から力を得た時から感じ取れるようになった、力の流れ。

 魔物だけじゃなく植物からも感じ取れるとは思わなかった。

 こうも上手くいくとは。


「いける……いけるわよ!これなら!」

「ははは!よっし、もう全部俺に任せとけよ」

「あ、いや。アナタだけじゃ無理よ。今回のは」

「なんでだよ?!」


 精霊の言う“宝”の力。

 これさえあれば何だって出来る気がする。

 何だって……陸にたどり着くことだって、わけないだろう。


「_______________う、ふふ」


 無意識のうちに、変な笑みが俺の口から漏れ出た。


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