2-16 命中
「じゃマ、どケ!」
振り下ろされる拳。
オレの鼻先を掠めた一撃は鈍い音を鳴らし、容易に地を割った。
「規格外なだけある威力だ。けどな_______________」
「……!!」
巨躯が立ち直るよりも先に、オレの蹴撃が三つ連なって命中した。
「うがァ?!」
「動きが遅せぇよ。当たんなきゃ意味ねぇだろ」
「む、ゥ……じゃまするナ!!」
堪らず振り払われた拳を軽いステップでかわしてみせた。
見たところ物理的な攻撃に効果はない。
やはり先程までの人形とは質が違うのだ。
時間をかければ装甲を潰せる自信があるが、奴の言った“報告”というのが気になる。
「あと何体かいるってことか……?」
「うブ、むだダ。おれのそうこうハ、すででもまじゅつでもつらぬけなイ!」
「かもな。んで?わざわざこんな人気の無いとこで、オレに何の用だよ木偶の坊」
「おまエ、じゃなイ!つのつキ、つかまえル!」
「角、付き……プレアのことか?なんでテメェみたいのがプレアに興味あんのか知らねぇがよ」
右手に意識を込める。
苦手分野だが、物理的に殺れないんなら仕方がない。
集結する力の結晶を、木偶の坊に向けた。
「どこぞの馬の骨に渡せる人材じゃねぇな」
「まりょク、さいだいぼうぎョ_______________?!」
「的がでかいぜ」
基礎攻撃魔術。
単純な魔力を飛ばすだけの、魔術とも言い難い攻撃。
こんなふざけた世界では、こんな攻撃ですら必殺となり得る。
チ ュ ド ッ !!
一瞬の炸裂と爆煙が標的を埋め尽くす。
短いノイズが鳴ったと思うと、人形はゆっくりとその場に倒れ込んだ。
「ガ……ガ、ガ……」
「手加減したつもりなんだが。こうも脆いか」
「……デ、デ……」
「あん?なんだ、何言ってやがる」
「ディ、ア、ヌさマ……ばんざ、イ……」
「あん?誰だそれ? 」
「助けてガルーグーー!!」
人形が止まったのを確認すると、突如後方からSOSが飛んできた。
大方予想していた展開である。
「マ、マスター!どうしよう……!」
「助けてー!」
「ん?そっちかよ」
振り向くとプレアではなくミィンが人形に羽交い締めされていた。
すぐ側には何も出来ず立ち尽くすプレア。
他の人形は予想していたが、何故ミィンを?
「何やってんだよ。プレア、お前も魔力持ちだろ。魔術なりなんなりで退治しろよ」
「い、いや、私もそうしたいのは山々なんだけど」
「ったく、しょうがねぇな。じっとしててくださいよご主人」
「……え、え?なに、アンタどうするつもり?」
「人形の方の頭だけ魔術で撃ち抜く」
「マジ?」
「ちょちょちょ!!それ外したらヤバいよ!ボクが!主に!」
「当たってもちょっと痛いだけっスよ。オレの故郷の連中はそうでしたから」
「それそっちの話だよね?!ボクなら普通に死ぬやつじゃない?!ねぇ!」
「まぁまぁまぁ……」
適当になだめながら、魔力の矛先を人形に定めた。
羽交い締めが解ければいい。
威力を抑え目にすればたとえ外れてもミィンは死なないだろう……。
「……!ガルーグ、後ろ!」
「し、しゃ、しゅツ!!」
「なっ、コイツまだ動いて_______________」
回避は間に合わない。
壊れたはずの人形から小さな何かが発射され、オレに命中。
その何かはオレの身体に取り付いたと思うと、オレの周りに膜のようなモノを展開した。
「……?!んだこりゃ!」
バリア、防御魔術の類か。
何度も蹴り入れてみるが、ビクともしない。
ならば魔術で、と手を向けた所で気づく。
膜との距離が近すぎて撃てないのだ。
これでは魔力の爆発にオレまでも巻き込まれる。
「ガルーグ、大丈夫?!」
「心配すんな!すぐ出れる!喰らっても、オレなら多少の火傷で……!」
カシャン カシャン カシャン カシャン
唐突に森を響く駆動音。
壊れた人形でも、羽交い締めしている人形とも違う。
新手の人形が近づいていた。
そしてそれは。
「目標、確認」
既に攻撃態勢を取っていた。
巨大な砲口はプレアに向いている。
「っ、プレア!逃げろ!!」
「……え」
発射された砲弾は一直線にプレアへと飛んでいった。
茫然と立ち尽くすプレアに、回避など出来るはずもなく……。




