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1-33 衝撃


 獣臭漂う薄暗い部屋。

 鉄のケージがいくつも立ち並んでいる中を俺は歩いていた。


「本当にここにいるのか」

「いるぞ。クーシーがくれた図にも印があるし、コヅエが捕まってたのもここだからな」

「そういえばお前もつい最近まで居たんだったか」


 官邸のとある一室。

 俺とコヅエの2人はそのとある部屋で人探しをしていた。

 ノルン達は別の部屋、島主がいる部屋へと向かっている。

 戦力としてはあちらの面々が心配だが、時間帯もあってか警備も手薄だし、何より相手にするのは島主1人だ。

 3人もいるなら十分だろう。


「コヅエの親友だからな。しっかり探せよ」

「特徴だけ聞いて、見たことも無い人を見つけられるかよ」

「半亜人の可愛い女の子がいたらソイツだ!ちゃんと探せ!」

「……こんな部屋で無茶言うなよ」


 積まれているケージは部屋の隅全体を覆い尽くしており、暗がりもあってかケージの生き物は見えずらい。


「半亜人、まさかな」


 つまるところ人間の奴隷。

 人間となればメッタのような知り合いが出てきてもおかしくはない。

 だがやはり見知った顔が酷い目にあっているのは心苦しいものだ。


「む。なんかボーッとしてないかお前ぇ!ちゃんと探せ」

「してないって。ほらあそこ見ろ」

「……?」

「可愛い猫ちゃんが」

「ちゃんと探せぇ!」


 言われるがまま、ため息混じりに目をこらす。

 四足の獣や鳥、それらに紛れて亜人が数人か分かるくらいだ。

 ほとんどが寝静まってる中、目を開けているのがわずか。

 だが、そんなヤツでさえ鳴き声の1つも上げていなかった。


「生き物の気配は大量にあるのに……こんだけ静かだと逆に不気味だな」

「騒いだら聞きつけた警備が黙らせに来るからな。皆ずっと静かにしてるぞ」

「呼びかけたら答えてくれるんじゃないか?少し呼んでみたらどうだ」

「そうだな……おーい、コヅエが助けに来たぞー」


 コヅエは潜めた声で呼びかけて見せた。

 だが、返る声は聞こえない。


「おかしいな。寝てるのか?」

「夜だからありえる。だがこれは……」

「なんだ」

「いや、なんでもない忘れてくれ」

「むー!なんだよーっ!」


 言いかけた言葉を抑えた。

 コヅエの友人が衰弱しきっているか、既に死んでいるという可能性。

 いずれ分かるだろうが、見つかるまで伝えるには。


「あ、見つけ_______________!!」


 突然、コヅエがあるケージを見てその場に膝を折った。

 やはりか、と思いながらすぐに駆け寄る。


「どうした」

「見つけたんだ、コヅエの友達。でも、でも……!」


 コヅエはすすり泣き、えずきながらも言葉を紡いだ。

 こちらとしては連れる人数が減る分、少し好都合になるのだが。


「……死んでるのか」

「う、うううう……なんで、なんでなんだよぉ……」

「ま、まあ落ち着け。とりあえずはここから離れた方が」


 泣きじゃくるコヅエ。

 掛けてやる言葉が見当たらない。

 これではここから動けないまま


「_______________え?」


 気の抜けた声。

 それは俺からのものだった。


 正直なところ高を括っていた。

 それはない、と安心しきっていた。


 この世界の水準は“村”に比べて随分と低い。

 魔力を持っているだけでもてはやされるのなら、“村”の連中なんぞ貴族のようなものだろう。

 例え奴隷になってしまったとしても、悪くは扱われない。

 メッタのように逃げ出すことだって出来る。


 “村”の誰かの死に直面することはない。

 俺が精神的に苦しむことなんてないと思い、安心しきっていた。

 そう、心のどこかで余裕ぶっていた。


「なんで」


 今こんなところで直面するなんて、予想もしなかったのだ。


「フミカ。お前、なのか?」


 傷だらけで目をつぶったその姿に声をかけた。


『おかえり、お兄』


 亡き姿となった妹。

 いつかの彼女と今の彼女を虚ろに重ね合わせた。

 どこからどう見てもフミカに違いなかった。


「フミカ……!なあ、返事しろよ!おかしいだろ!なんでお前が!」

「_______________!!後ろ!」


 ゴ ッ !!


 頭をド突く鈍い痛み。

 インパクトと同時に俺の世界は回り、ケージの山へと突っ込んでいった。


「あ?痛……あ?」


 ケージにぶつかった身体と2つのショックで揺れた頭が、上手く働かない。

 フミカの死体……そんで俺、殴られた?

 夢?だとしたらどこからだ?

 頭が熱い。

 俺はまだ、もしかして“村”にいるんじゃないのか。

 今見ている全てはただの夢なんじゃないのか。


「屋敷に入り込んだネズミが。何を堂々と嗅ぎ回っている」

「おいお前、逃げるぞ。ヤバい人に見つかった!」

「逃げ、ん?お前、誰だ」

「コヅエだぞ!」


 小さな影が俺を担いでいる。

 目の前には大きな影、どうも俺を見てご立腹ーーーーーーーーー。

 ーーーーーー。


「う、あ」

「しっかりしろ!いいか、逃げるぞ!」

「逃がすわけがあるか。ネズミはネズミらしく、ここで野垂れ死んでもらう!」


 “陸”に行け。

 それまでは死ぬな。


「_______________“尖鋭火弾(フレイムバレット)”」

「む……!ぬあ!貴様ぁ!!」

「よし!よくやったぞ!」


 火に退く巨影。小さい影に連れられ、俺はどこかへと行く。

 どこへ行く?俺はどこに向かってるんだ?

 分からない、もう、何も。


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