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1-28 再会

 

 コン コン コン


 部屋のドアがノックされる音に目を覚ます。

 もう少し瞼を見つめていたいというのになんだと言うのか。

 と、悪態をつくのも束の間。

 そんなこと言っていられない、俺はここに泊まらせてもらっている身なのだ。

 こんな朝早くに尋ねてくるのなんてマリーアさんか最近来たうるさいガキくらいしかいない。

 どちらにせよ出なくては。


「はいはい。今出ますよっと」


 硬い床から来る背の痛みに顔をしかめながら、ドアを開けた。

 そして、そのドアの前にいたのは……。


「よう。メッタ」

「……は?」


 目を擦って、もう一度その姿を視界に収めた。


「……は?」

「久しぶりだな」

「久し、ぶり、って。え?」


 いつかの知り合い。

 あの憎き事件の元凶。

 なんの申し訳なさもない表情で。

 マサムネ・トキタがそこには立っていた。


 〜〜〜〜〜〜


「どうしたのでしょうか、マサムネ様」

「さあ。私らに分からない事情があるんじゃない?」

 

 ザワつく街並み。

 夜とは違い人々が行き交う街の中をノルンとメネの2人はフード姿で歩いていた。


「隣の部屋のメッタ様、でしたっけ?マサムネ様が言うには“村”の頃のご友人だったとか」

「友人程度なら大丈夫よ。話するだけよ」

「それにしては思い詰めた表情をなされてました……とても友人に会う時の表情とは思えませんでしたよ」

「詮索して欲しくなさそうだったし、アイツならアイツなりになんとかするって。気にしすぎよ」

「……心配です」


 物憂げに息をつくノルンを気にかけながら、メネは辺りの様子を伺っていた。

 船の燃料、またはその代わりとなる物。

 それを探しに2人は街を堂々と歩いているのだ。


「……はぁ」

「ノルンも探しなさいよ。今回ばっかりは自分達で手に入れないとダメなんだからね」

「それは、分かってますけど」

「じゃあアナタも探し回りなさいな。この島出るには今のとこは……げっ」

「どうしました?」

「ちょっと下がりましょ。分かんないけど……なんかのパレード?やってるみたい」


 突然メインストリートにて、楽器の演奏が始まった。

 楽器を持ち、整えられた隊列が民衆を押し退けるとその中心から煌びやかな馬車が現れる。


「「わああああああああ!!!」」


 民衆が歓声をあげ始めたと思うと、馬車の中から一人の男が顔を出した。

 宝石まみれの王冠を被った小太りの青年だ。

 青年の乗った馬車は一人の大柄な男によって引かれながら、ノロノロと街道を進んで行った。


「うわあ……あからさまに偉そうな人。大嫌い」

「100パーあの人が島主ですよね。えーと名前は確か」

「アノーロ?だったかしら。ほんっとクソ人間の見本みたいなヤツ」

「いやまだ見た目しか分かんないですけど」

「オーラで分かるわよオーラで。ほら今にも亜人を差別しそう」

「なんですかそれ」

「あら?なんか配り始めたわね」


 馬車から体を出したまま、アノーロは何やら手配書を配り出した。

 ノルンはヒラリと落ちてくる紙に思わず反応して、手に取った。


「なに、なんの手配書?」

「えと……コヅエちゃんがでかでかと載ってますよ」

「指名手配ってこと?うーわ!アイツ連れてこなくて良かったわね」


 賞金の額と共に写る少女の沈んだ表情。

 その顔が今は横にいないことに、2人はホッと肩を撫で下ろした。

 ちなみに今コヅエはマリーアと2人で、ハヤに公用語を教えている。

 本人も追われている自覚はあるようなので、そうそう出ようとはしないとメネは考えている。


「竜人族だものね。逃げられたとなれば、そりゃアッチも死にもの狂いで探すかー」

「それにしても凄い額……お城が1つ建っちゃいますよ」

「よっぽど竜人族は逃がしたくないのかしらね。あー気持ち悪い」

「……あれ?この下の方の文字って」

「ん……読めないわね」


 手配書の下方部には見慣れない文字の羅列が並んでいた。

 公用語ではない、となれば竜人族の言語だろう。

 わざわざ書いているということはアチラからコヅエに向けてのメッセージか。

 メネは軽く鼻を鳴らし、紙を懐にしまった。


「どうせ私達じゃ読めないわ。後でコヅエに読ませましょう」

「そうですね。とりあえず今は燃料の方を探しますか」

「そうしたいのも山々だけど、パレードの人集りのせいでロクに動けないわよ」

「そうですね……うぅ!?今ゾクッとしました!これだけ人間が集まってると嫌なこと思い出しちゃいます!」

「……?嫌なこと?なんかあったっけ?」

「もう忘れちゃったんですか?!ほらアレですよアレ!ザッドさん達と会った島で!」

「_______________ああ、あれね。僕も覚えてるよ」


 危惧(きぐ)の念。

 2人のどちらのものでもない、低い男の声が聞こえる。

 その直後、獣に睨まれたかのような感覚が2人に走った。


「あ、あ、あ……」

「アナタは……!!」

「やったね。やぁーっと追いついたよー」


 白銀の鎧に刻まれた1の数字。

 “眼”の1番隊、その頭である男がそこに。

 クルート・ガレンセンは笑みを浮かべて立っている。

 まるでこの日を待ち望んでいたかのように。


「チャオ♪何日と何時間ぶりかな」

「そんなもんいちいち数えてないわよ」

「酷いこと言わないでよ。君たちに会うのずっと楽しみにしてたんだから」

「ぁ……あ、ああ」

「ノルン!しっかりして!」

「だ、だだだって、今、マサムネ様は近くにいないし……」

「あー、聞こえるかな一般兵諸君。やっぱそこにあった船が例のやつだったらしいから。うん、そう。よろしくねー」


 クルートは通信機らしき機杖(ワンド)にそう声をかける。

 会話を察するに、停泊場の船が空警団に抑えられた。

 その事実を理解したメネは戦慄する。

 詰み、限りなくそれに近い事態。


「うん、はーいじゃあねー……っと、さてお嬢さん方」

「ひ、ひぃ……!」

「僕とお話しようか」


 凍りついた表情を味わうように、クルートの口角が緩く上がった。


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