表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31の花言葉  作者: 夏川 流美
5/32

5.デンファレ

 たくさんの友人と、育ててきてくれた家族に見守られて。ステンドガラスの美しい光を受けて。無垢で清楚な眩しい空間にて、彼女らは、誓いのキスを交わした。



 大粒の涙が、ぼろ、と左目から落ちていく。夢に見ていた結婚式。憧れていた、素敵な結婚式。



「ねぇ、泣いてんの?」



 隣に座っていた友人が、茶化すように囁いてきた。私はわざとらしく怒った表情を作ると、友人の膝を軽く叩き、


「感動してんの!」


 と言い返した。そんな理由じゃないのに、なんて心には、無視をして。




 美しさ、可愛らしさの際立つ、ウェディングドレス。ここに居るだけで、胸の高鳴るこの空間。


 私だけじゃない、女性が一度は羨ましく思うことだろう。私だって、羨ましい。



 隣に立つのが私だったら良かった。


 誓いのキスを交わすのが、私だったら良かった。


 みんなに見守られて、良かったねって。

 祝ってもらえるのも、私が良かった。



 こんなこと、何度考えても、何度悔やんでも、何を恨んでも、変わりはしない事実。2人が幸せなら、それでいいんだ。そうやって蓋をした筈の心が、叫び出す。



 出番がやってきて、席を立った。彼女・理香の親友として、光栄ながら花束の贈呈を任せて貰えたのだ。



「えー噓! こんな綺麗なの、貰っていいの!」


「理香のために私が用意したんだよ」


「さぁやのセンス、最高すぎる……。ありがとうーー……!」


「いえいえ。この先も幸せになってね」


「ねぇ、泣いちゃうってば……ほんとにありがとう……」



 目に涙を浮かべる理香。お互いに微笑みを見せると、私は席へと戻る。



 デンファレと言うランの仲間を、花束のメインにした。紅紫色と白色で、華やかに可愛らしく作ってもらった。


 デンファレには『お似合いの二人』といった花言葉がある。幸せになってほしい願いを込めて、知った瞬間に即決だった。それに、本当にお似合いだと思うから。



 理香と相手の真斗は、幼馴染だった。一緒に遊んだことが何回もある。


 真斗は優しく朗らかで、細かいところに気がきくから陰で支えてくれて、任せられた役目は責任持ってやり遂げてくれるから、みんなに信頼されていた。


 理香はいつもみんなを引っ張ってくれる盛り上げ役で、ちょっと大雑把だけど最後まで絶対に諦めない心の持ち主で、ころころと表情の変わる素直さがみんなに愛されていた。



 そんな2人だから、いつか両思いになるってわかってても、想いを伝えられなくて。私の片想いの期間は、およそ10年にもなった。2人が付き合いだして、結婚を決めてからも、ずっとずっと気持ちが捨てられないままだった。


 恐らくこの先も、伝えることはなく、叶うこともない。下唇を強く噛み締め、しっかりと2人を見据える。



 これから2人の未来には、子どもができて、明るい家庭を築いていく。私はそれを見て、聞いて、恋がいよいよ終わったことを実感するのだろう。




 約10年間。心の底から、大好きだったよ。


















 ……私が真斗だったら、私に恋をしてくれたのかな。







デンファレ

『お似合いのふたり』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ