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キルライフ  作者: 沼郎
第2章 嘘を吐いた自己正義達
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第二章 89 底知れぬ欲望の災禍


 自らも火炎に焼かれながらオールディを抱きしめた後、血の池から出る。燃え続けるボロボロになった服を脱ぎ、自らの身体に点いた火を鎮火する。アースは酷く火傷を負った腕に爪を立てて傷をつけていく。だが傷が治る兆しが見える事はなかった。


[よかったのか?…取引の事。]


「…アイツは俺が時を戻すことに全てを賭けていたんだよ。俺のジョニーへ対する執着心を利用したんだ。だからジョニーが死亡したところで取引という名の一方通行の欲望が溢れ出た。簡単な話だよ、自分だけに時間遡行とその危機を伝える為の暗号、『メイデイ』のキーワードで次の自分に託したんだ。自分だけその危機を理解し、キーワードをぬけぬけを報告しに来る俺を何らかの方法で無効化しする為にな。」


[…じゃあなんであいつはお前を撃ったんだ]


「…あいつの目から見た世界は白と黒で構築されたシンプルな世界なんだよ。オールディの視界に映るのは醜いケダモノ達だけなのだろう。勿論その一人の内に俺も入っていたんだ。だからあいつは俺が最初に断った時、「『メイデイ』というキーワードを逆手にとってもっと容易に物語を進めてやろう」なんて考えてると思ったんだろうな。だから撃ったんだ。裏切りの可能性を生み出し後腐れなく同レベルに堕ちてより時の遡行をすすめさせる為に。」


[…よくわからないな。理屈じゃない、なんでオールディの視界を何故アースに見えているかがよくわからない。]


「ジョニーの話を聞いていたか。俺もそうだった。俺もあいつにエネルギーで切られたときに漠然としたイメージが体に入って来た。どこまで行っても人間というのは浅ましく欲望塗れで汚らわしい。他者だけではなく、自分自身ですらも汚らしいと。ジョニーのような人間はとても希少なのだと信じ切って。そんな自分の穢れた感情を信じていたからこそ俺も穢れていると確信したんだ。」


[…]


 アースは横目でオールディの腕を見てから語り続ける。


「エネルギーというのはマナなんだろ?時間遡行を通じて記憶の残る者と残らない者を見て気になったこともある。冷静になって振り返れば違和感のある部分も多く存在する。この時間遡行の面白い点は中央王都で二度時を戻しているというのにも関わらず、東の王都に来て、俺と出会ってから記憶の維持が発動したパターンとエリーやルザ、電話越しに時間遡行を指摘してきた謎の人物等の特殊パターン。…まずギレオさんについてだが…記憶を失ってない。前者のパターンだが、その中でもかなり特殊な例だ。」


[…ギレオ?何故そう思う?私には違和感がなかった…矛盾点でもあったのか?]


 瓦礫の上を裸足で歩き、平坦な地面まで歩いてから一呼吸をして返答をする。


「最初は中立だったギレオさんが二度目以降俺の意見にかなり寄せているんだよ。あの時はそれほど気にも留めていなかったが…お前の考察を聞いてから途端におかしく感じる。屋敷襲撃戦の作戦会議中も明らかに俺の意見より優先すべき意見がある筈なのに俺の意見に無条件で賛成していたのも怪しい。」


[ちょっとまてよ…その言い分じゃまるで…]


「だから特殊なんだよ。ステラの様に俺に記憶が残っていると報告しに来るべきだし、そうじゃなくとも一度目と同じような行動はとらないはずなんだ。バッドエンドが分かっていてそんなことをする奴はいない。ましてや女王第一に考える人がそんな行動をするわけがないんだよ。…3つ予想を立てている、手の施しようのない詰みの未来か、更なる地獄を俺に見せる未来か、謎を深める未来か。だがここまでずっと最悪の想定が殆ど的中しているのを考えると…9割この後地獄が待っていると思った方がいい。」


[…]


 アースは再び瓦礫の山へと戻り、ジョニーの亡骸の前に立って強く手を握り締める。


「すぐに戻る。今は悪いが…必ず埋葬する為に戻ってくる。」


 震えた言葉でそう告げてその場から立ち去ろうとした時、瓦礫の山へと登ってくる一人の少女の姿があった。俺を騙し、回数を奪った上に無理矢理この物語を進めさせようとした者が其処にいる。紛うことなく俺が言った地獄はコイツ絡みだ。


 そんな少女は再生薬の瓶を両手で差し出して微笑んだ。アースにはそれがとても不気味に思えたのだ。アースは暫くその場で固まって動き出すことが出来ない。少女は再生薬を受け取らなかったアースに頬を膨らませ、小言を言う。


「ちょっと!何か言いなさいよ!アタシがせっかくアンタの為に持ってきてあげたんだから」


「エリー……何時から…此処にいた」


「馬鹿じゃないの?今来たに決まってるじゃない。アンタが戦ってるって知ったからきっと傷ついているかもって思ったからこれ!持ってきたんだけど!」


 アースは言葉が出なかったが言い訳がましく自分が情けない事を理解しながら込み上げる怒りを吐き出そうとエリーに近づく。その行動が意外だったのかエリーは頬を赤らめてアースから目を逸らす。アースが近づいて目の前で立ち止まると逸らした目を再びアースへと向ける。


「な、なによ」


「自分でも自分を大間抜けだって思ってるよ。一方的にこんな事言うのは筋違いだとは思ってる。でもな、何故あの時嘘を吐いたんだ…!」


 その言葉を聞いた途端エリーは真剣な眼差しをアースへ向けてため息をつく。


「あの時ってもしかして中央王都での一軒の事?それならちゃんと言ったわよね?()()()()()()()調()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って。約束をちゃんと守っていれば時間を戻したってこの世界の何処にも元凶は居なかったはずよ?アンタが殺さなかったから生きていただけでしょ?理解した?」


「…ぁ。」


 その言葉を理解しようとした時、アースの心に黒い影が這い寄ってくる。それは膨大で鈍く心を溶かしていく。そのあまりに重さに耐え切れず…罪の意識が根を張った。

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