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キルライフ  作者: 沼郎
第2章 嘘を吐いた自己正義達
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第二章 88 嘘を吐いた自己正義達 9


「取り引きだと…?つくづく…吐き気がするよ、お前には。」


「冗談じゃない。僕はいつだって本気だ。」


「聞く価値もない」


「ジョニーも僕もお前も亜人達も王都自体も、全て救われるハッピーエンドがあるとしても…聞く価値がないと思うか?」


 アースは一瞬その言葉に躊躇して撃ちそうになった銃口を下へ向けて弾丸を一発地面へとめり込ませる。文字通りに半信半疑の目でオールディを睨んだ。


「そんなハッピーエンドがあるのなら何故最初から選ぼうとしない」


「これは最終地点の妥協案だからだよアース。」


「妥協案だと?」


「きっとこれ以上お前が時を戻し続けても僕は常に成長を続ける。だからいつかは僕が勝ち続ける日が来るだろう。だがそれが叶うのはお前が時を戻すことが条件だ。お前は逆に如何に時間遡行を少なくして僕を殺し全てを救いに行くのかを試行錯誤しなければならない。誤算だったのだろう、今回は。」


「それのどこが妥協案なんだ。俺にこれ以上繰り返してもこれ程正解の未来はない。最善でなくともだ。」


「まず、聴いてくれ、それだけじゃない。僕だってジョニーには死んでほしくなかった。それは君も同じだろう。でも僕も未来の為に譲る事のできないものはある。今までやって来た全ての過程がそれだ。けど…それでも僕自身がいなければそれは達成されないんだ。だから僕はやり方を変えることにした。」


「…」


「だから時を戻してほしいんだ。時間は最低昨日以上、それ以上であればどのくらいでも構わない。きっと限度はあるのだろうが。僕らが互いを許し、手を取り合えばボルボロスも迎撃が容易くなるし亜人達の安全もジョニーの安全も保障する。」


「たとえ俺が時を戻したとして、どうやってお前がその事実を知るつもりなんだ」


「時を戻して僕に出会ったら『メイデイを知っている』と言えばいい。僕はその言葉でお前を信用し、お前の話を鵜呑みにする。そこの話の内容は嘘を吐かないと僕は君を信用しているから…どうだ。」


 暫く沈黙は続き、アースは一度ため息を吐いたあとにオールディに命令する。


「…お前の持っている銃を捨てろ…弾も一つ残らず捨てろ」


 アースはそう指示するとオールディは静かに銃口の方を掴んで取り出し、アースの足元に投げる。


「元から空だ。よし、取り引き成立だな…再生薬を僕の元まで持ってきてくれ…僕はもう数十分しか持たない」


「…もう一つ、その血に触れてみろ…それで全ての取引は完了する。」


 アースはジョニーの腹部から溢れ窪みに溜まった血液を指さしてそう言い放った。


「頼むアース…こんな事をやっている時間は無いんだよ…」


「お前がその血に触れた瞬間に契約は成立する。そうして信用は完璧なものとなる。だからこそ、その血に触ってみろ…マイ・オールディ!!」


「…」


「…」


 オールディはその血を眺め、ゆっくりと指を近づける。アースはその様子を眺め続ける。そして触れる直前で腕の動きは止まり、アースの方を見て顔面に斑点模様を浮き出させたオールディは静かに語る。


「…目的を達成する過程の行動は、誰がなんと言おうが僕の正義だ。」


 血に触れようとして下を向いている最中に顔面から弾丸を装填していたのだ。だからゆっくりと、悟られないように時間を掛けていた。そしてその顔面の斑点模様から放たれる弾丸6発はすべてアースの身体に命中する。


「ぐッ…!!」


「僕は知っているぞッ!!愚かな道を選んだなアース…!!」


 そしてそれを予見していたかの如く、ほぼ同時にアースは反射的にオールディの心臓に弾丸を精密に命中させる。何処か勝ち誇ったような表情で目を見開き、両腕を広げて天を仰ぎ、オールディは派手に血の池に倒れ込む。


「死を受け入れるのか」


 あれ程生への執着を抱いていた彼にとっては意外な結末とも言える。呆気ないとも。だが、だからこそアースの思っていた想定はより確信へと近づいた。


「一つ勘違いをしているな、オールディ…いやメイデイ。」


「…勘違いだと?」


「俺は一度も取引に応じるなんて言った覚えはないし、時を戻すつもりもない。ここが、これが、この世界線が、俺の正解だ、これ以上素晴らしい結末は訪れない。」


「……」


 その言葉を聞いてから明らかに表情は強張る。


「メイデイ、お前は自分以外の人間がそう言う狡猾で下衆な生き物だと思っているのだろう。だから俺が『メイデイを知っている』という言葉を聞いた上で自分だけそれ上手く利用するのだろうと考えているんだろ?」


「…」


「お前には俺がそういう人間にしか見えないんだろ。嘘塗れだぜお前。お前の心が真実を語ったのはジョニーへの想いだけだったな。それだけは本当だと信じてやる。そんなお前はきっと鏡を見てもそれが自分には見えないだろうな。心から信用する人間以外、お前にとっちゃ()()()()()()()()()()()()()のだからな。だからこそお前は『俺がジョニーが生存する未来が来るまで過去を遡り続ける』と勘違いして、『きっとこの男は過去に遡ってジョニーを救う為に僕に「メイデイ」の名を告げに来るだろう』そのうえ『上手く利用してオールディを貶めてやるか』なんて…そうすると思っていたんだろう。だが、そうはならない。そんな事はしないんだ。」


「…………………」


「ここが頂きだ、到達点だ。…オールディ、お前の正義は叶わないんだよ。」


 オールディは何も言葉を発さずに両目を両手で覆い、唸り声を上げながら蹲る。そんなアルコール交じりの血だまりにアースは火のついたライターを投げ入れる。すると炎は彼の全身を包み、肉の焼ける音が辺り一面にたち込める。唸り声は次第に叫びのようなものへと変わったが、それから数秒も経たぬうちに声も発さずに血だまりの真ん中で座り込んだまま動かなくなった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 …そう、ひだまりに溶けた夢を見ていたんだ。丘の上で夜は明ける。辺りを見渡してもささくれ立った荒野が続くばかりだった。どんな想いで其処に座っていたのかはわからない。けれどここが見渡す限り最も太陽から近い場所だからかもしれない。


 薄くなった月がまだ在るのに太陽は地平線から顔を出す。表面上は燃える様に暑かった。だけど内面は氷点下よりも冷たくて…あまりの寒さに体中が震え出す。そんな太陽から僕を隠す様に目の前に立ち塞がる者がいる。分からない、分からないよ。お前の表情が見えないんだ。


 何者かはそのまま僕を抱きしめる。


 やめてくれ。僕に触らないでくれ。そうやって力なく拒絶はするものの何処かそれが心地良かったのだ。オールディは涙を流しながら強く抱き締め返す。「もう子供じゃないんだから」と口では拒絶して。


 震えた声で涙を流しながら二人は太陽に照らされながら抱き締めあう。生まれてこの方こんなふうに甘えた事なんてなかった。目まぐるしく僕の人生は進んでいったから、そんな事をする前に大人になってしまった。


 だけど、これが答えなのかもしれない。僕はこうやって誰かに抱きしめて欲しかったのかもしれない。いつだって未来と称し望んでいたのは過去のあの映像だけだった。もう戻れはしないけど、大人になってしまったけど、僕はこの時間がとても心地良かった。冷え切った心が溶かされていくみたいで。


「こんな思いをする為に生まれた訳じゃなかった」


 その言葉を始めにオールディは何者かに秘めた想いを打ち明ける。募り募っていた想いを全て。オールディはその最中も決してその者の顔を見ようとはしなかった。彼を知る人だったら恥ずかしいからなのだろうか。それはオールディの生涯最後のプライドが邪魔した…意地なのかもしれない。

**********************************


 アースはそんな涙を流すオールディの亡骸を抱きしめていた。彼は死亡後の世界で一体どんな夢を見ているのだろうか。彼は絶望のような最期だったはずなのにオールディは何故か安らかな表情のままこの世を去っていった。


「ジョニーは優しすぎる。自分がこれから死ぬかもしれないって時にお前の事を考えて、俺にこのライターと想いを託したんだ。今、抱きしめているのは俺じゃない、ジョニーその者なんだよ、オールディ」


 もうなにも聞こえないオールディに対してそんな事を呟いた。


 

■体内異物侵入時私物化  4(4)

所有者 マイ・オールディ

●体外に触れた、体内に入った物が私物化され、有害は無害化される。

・ただし自分の触れる面積より相手が触れる面積が小さい事が条件となる。

・上記の計算方法は触れた部分から大凡の平面に渦巻き状に面積を加算する計算で面積を測る。

・↑この計算は瞬間なのであまり支障はない。

・最終的に計算した合計面積が自分の方が相手の面積を上回った場合にのみ私物化が可能になる。

私物化失敗 投げられた机を掌で受け止めた

私物化成功 投げられた机の角に当たるように角の面積を上回る部位で受け止めた

●無害化までの時間はおおよそ10秒~50秒である。

●固形無機物は入った瞬間私物化。

・ただし特殊な効果を持っている物は上の様に無害化に時間がかかる。(弾丸の熱やアルコール)

・固形物は逆に外へ排出する事もできる。固形物を体内で変形する事は出来ない。衝撃によって体外で形を変える事は可能。

・小さければ小さいほど排出のスピードは速く(最小の固形物が弾丸)、大きければ大きいほど遅い。

・毒や炎等の無固形物(一定以下の物質)は無害化されて排出する事はできない。

・自分の体を超える膨大な衝撃や他人の血は私物化できない。自分の物理的なサイズより小さい攻撃は全て私物化される。

・他人の血が自身の身体に入った時はいままで受けたダメージの総数を体験する。

●手榴弾や炸裂弾等を喰らうと普通に死ぬ。だがしかしオールディは深淵化と相まってほぼ無敵になれている。


排出速度 秒速換算面倒だったので時速で勘弁。

・弾丸辺り=秒速180m 時速432km

↓3分の1スピード

・3x3cm~5x5=秒速60m 時速216km

↓3分の1スピード

・6x6cm~9x9cm=秒速20m 時速72km

↓3分の1スピード

・10x10cm~15x15cm=秒速約6m 時速約21km


■アルコール 2(2)

所有者 ジョニー・ハープ

・体外からエタノール(飲酒)を取り込み、様々なアルコールへと体内で変換できる能力。

・体内でアルコールを作りだす事は不可能。

・外(口や皮膚)から各種アルコールを取り入れ、体内で濃度を上げる事が可能。皮膚で触れている箇所で細かく濃度設定できるのでここらへんは便利。

・吸収したアルコールは本体にとっては無害。

・吸収できるアルコールの限界は10L

・ただ本人アルコールの種類についての知識が乏しかった為にメタノールくらいにしか変換することはなかった。


■世界不干渉 1(?)

所有者 アース・キルライフ

・外部時間で30秒間、体感最大300秒間白い部屋に実態まるごと移動する事が出来る。

・白い部屋に移動している間は現実世界の所有者は非存在となる。

・意識が戻る場所は本人の無意識により移動する。危険があると判断した場合は安全な場所(少なくとも命の危険性がない)に強制移動させられる。

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