表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キルライフ  作者: 沼郎
第2章 嘘を吐いた自己正義達
93/168

第二章 84 嘘を吐いた自己正義達 5


 爆発は止むことなく、アースの身体を四方に散らしていく。これほどまでにやられているというのに苦痛の声一つ上げやしない。煙幕に巻かれている間にオールディは床から木の板を外し、それを更に補足して不細工な木刀をつくる。


「僕が何故お前に攻撃を仕掛けなかったか分かるか?…まぁ応えられる余裕もないか。僕は確かめたかったんだ。お前が僕の推察通り、『血』による攻撃を行ってくるかをね。そういう攻撃を試みるって事はね、その時の僕はまだ現状のこの覚悟にたどり着いていない、そんな僕と交えて見えた唯一の弱点なんだ。決定づけられる言葉もお前の口から聞けたことだし。条件は満たしたんだ、僕がお前を負かす条件を。」


 もう爆発は止んではいるが、煙幕は晴れていない。両足が完全に負傷して立っていられないって状況であればこう、攻撃してこないこの状況にも納得はいく。連鎖的かつ集中砲火の爆発を受けて戦い続けられる状態じゃない方が普通だ。だが、僕には油断と言う文字はもうない。


 下顎を摩りながらゆっくりとアースの居る方向に足を踏み出す。その左脚を地面から生えた血塗れの腕に引っ張られ、顔を下に向ける。そこには顔の面積比上、私物化できない程大きな足の裏がオールディの首を吹き飛ばそうとしている。だが、オールディはそれを予見していたように躱した。明らかに蹴りを認知するよりも先にだ。


「ははは、やると思ったよアース。深淵化の殺し方の行き着く先はこれなんだ。頭を吹き飛ばせば死ぬなんて思ってる。そしてお前は僕に『血』の攻撃を行う為に弾丸を一発撃ち込んだことを覚えているかい?」


 躱すと同時に天井から滴り落ちる液体が、呆ける顔に降りかかる。オールディは憎たらしい笑みを浮かべながら体から取り出したライターを液体の柱に近づけると火は瞬く間にアースの全身を包んでいく。そのまま集積されたゴミの山へと落ちていく。


「あははは!僕のエネルギーに似た彗星色だ!」


 そう笑ってから自身と重なる呼吸音が聞こえる事に瞬時に気付き、手に持つ木刀を振ろうとする。だが地面から飛んできた弾丸が木刀を吹き飛ばし、天井へと突き刺さってしまった。


「約束果たしに来たぜオールディィーーッ!!」


 ジョニーは既に巨大な拳を目一杯振り上げていた。あの巨漢から繰り出される鉄拳を私物化なしに喰らえばひとたまりもない。だが咄嗟に背中を向けて拳を私物化することに成功した。オールディは即座に天井に突き刺さった木刀を抜き取り、アルコール塗れのそれにエネルギーを纏わせる。そしてどうあがいても抜けようがない腕を焼き切られ、上半身を斜めに切り裂かれる。


 幸い、すぐに避けたため、傷は浅く済んだものの裂傷は目に見える程範囲が広く、予想以上に血液は流れ出す。


「惜しかったなジョニー、息を殺していれば成功したかもしれないのに。」


「………テメェーはよォ…俺のアルコールを…勘違いしてンだろ?」


「ははは、だからどうした?試すんじゃあなかったのかジョニー?果たしに来たんだろう?約束を」


「…分かってないな。()()()()()()()()()()()オールディ。」


 刹那オールディの身体は急激に膨らみ、皮膚の薄いところから破れていき、内臓全て弾き飛ばす勢いで腹から破裂する。今までにないくらい程肉片は細かく分解されて、かろうじて人間の形をとどめていたのは頭とそれにつながる右腕だけだった。他全ての肉片はこの部屋を覆いつくす形に広がっている。


 そしてダストシュートから這い出てきたアースは殆ど火傷を負っていなかった。


「テメェーは上手く利用したつもりだったンだろうがなァオールディ。幾ら使い物にならなさそうな能力だからって油断したんだろ?俺の能力はアルコールの保持と濃度変化だ。それも全部一気にじゃあねェ。俺が想った箇所だけだ。俺に触れて繋がってるだけで細かく変化できる。テメェ身をもって体験したじゃァねェかよ」


 驚くことにまだ生きて居る。口を必死に動かしてはいるが声が出ることも呼吸が発生することもない。なのになぜか体は修復を始め、生への執着を忘れない。


「おぞましいな」


 そう呟くとアースは死体を処理するかの様に機械的に床下へと捨てる。念の為に、もしかしたら皮膚呼吸をしているあいつから酸素を奪う為に、まだ修復し続ける細胞を燃やしつくす為に。そのためにジョニーの血を介して下にアルコールを溜めた。


 そして火を点火したまま床下へと投げ入れる。勢いよく燃え上がり、肉片を焦がし、ゴミへと火が移り、そしてこの建物すら燃やそうと勢いを強める。最後の言葉すらなく、あいつは燃え尽きる。


 そして会場の時計から金がなると同時に通信機からノイズが走る。そして一言『終わった』と。その言葉を聞いて疲労感がどっと押し寄せる。過剰なまでに戦力をボルボロスへ向けておいてよかった。俺の判断は正しかったのだ。


 聞きたいことは山ほどある。けれど先に言わなきゃならないと思って少しの沈黙のあと、『感謝』の言葉を伝えようと思った。けれど言葉を発する前に床下から飛んできた銃弾が通信機ごとアースの顎を撃ち抜いた。だが撃ってきたのは一発でそれ以上銃声はならなかった、引き金を何度も引いてはいたが虚しくシリンダーが回り続けるだけだった。


 全て抜いたつもりではあったが床に落としてしまったのだろうか。多少あった不安が少し取り除かれる。あいつがしてきた最後の抵抗が深淵化には殆どダメージのない銃撃である事に余裕がないと感じ取れたからだ。


「ジョニー、隣の部屋に移ろう」


 無言のままオールディを見下ろすジョニーの肩を叩いてそう告げる。ジョニーは何も喋らずに頷いた。肉の焦げる臭いと火薬に塗れたこの部屋から二人は立ち去った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ