第二章 80 嘘を吐いた自己正義達 1
誤字脱字あったらすみません
ジョニーはそのままアサルトライフルをムーンディーズの喉元に押し付けて気絶させようと試みる。だがムーンディーズは銃に触れ、それを液状化させるとジョニーの顔面に掌底を打つ。
「テメェーのそういうとこが嫌いなんだよ!ジョニィィ!!」
だがジョニーの馬鹿力から解放されることはなく、そのまま腕で首を絞められる。体は宙に浮き、ディーズの抵抗も弱まって次第に意識は薄れていく。
「俺もテメェ等みてェなやり方が一番大っ嫌いなんだよォ」
ジョニーは泡を吹いたムーンディーズを床に寝かせて二階へ上る。この騒ぎを聞きつけてオールディが避難した亜人達と先に出会わぬように。だがジョニーの予想とは裏腹に二階の定位置で外を眺めていた。ジョニーにとってはそれが全く意味不明であると同時に腹立たしく思えた。
「オールディ…!」
ジョニーは怒りを込めてその名を呼んだ。オールディはジョニーが拘束から解かれている事に疑問も持たず、落ち着いた口調で話す。
「久しく忘れていた顔をふと思い出した。」
昨日までは血眼になって集めていた亜人を今は追おうともせず焦りもしない。
「お前の正義は狂気だよ。気持ち悪ィぜ」
ジョニーはだから憤慨する。何も亜人を連れ戻すことを願っているわけじゃない。その亜人を拉致する為に葬った命の数々を想うと怒りが収まらない。彼の言う正義は身勝手な都合のいい理由なのだ。こいつには道徳がない、畜生以下のクズ野郎だ。
「―――――――全てを知っている者がいる。時を戻している者が存在する。」
耳元まで表情が笑みに攣られているような気持ち悪い笑みを浮かべて核心を突いた言葉を吐く。唐突に言われた衝撃の言葉にジョニーは唖然とした。
「…あ?」
「考えてもみろよこの状況。余りにも出来過ぎている。昨日の夕方辺りから僕は神に愛され『覇者の証』を手に入れた。それだけじゃない、その時間から僕は頻繁に過去を回想するようにもなった。僕はお前が裏切るんじゃないかと思っていた。そんな決心がつく頃が今日じゃないかと思えた。なんの前触れもなくこの王都ではボルボロスの到来を知っているかの様に迎撃準備を始めている。同時に我々の存在を認知されているんだ。察知された形跡も思い当たる節もないのに…おまけにここ数日亜人を拉致すらできてないってのにまるで全てを知られているかの様に此処も強襲され、為す術もなく亜人は解放されていく。すべてが確信のある行動だ。僕はお前が今日、裏切らなかったらここを離れるつもりだった。僕の予定が狂ったのは裏切りがあったからだ。だがそれすら予定調和になのだろう。でもそんな裏切る心の内を知っているのは僕だけの筈なのに。これら全て説明するのに辻褄が合うのは時間遡行だけだ。あり得た筈のパラレルワールドを生み出し、何度も特異点に戻る事の出来る時間遡行の持ち主だけが知り得ることが出来る。」
「…」
「ここまで徹底的に追い詰められたらイヤでも理解できる。ほぼほぼ完璧だからこそ見えた存在だ。」
「…それがテメェの冷静さを説明する理由かよ?尚更冷静でいられる理由がねェだろ?お前が知って抗った所で時間遡行の主は最善にたどりつく為に何度でも繰り返す。それともお前、諦観してンのか?」
「馬鹿を言え、これはいわば僕の勝利と言える。だが勝つのはこれから進む現在の僕じゃあない。もう一度時間を戻して全てを知るマイ・オールディだ。戻った後の僕が完封する。…どうだジョニー、僕と一緒に悪と戦う気はないか?」
ジョニーは無言のままオールディを睨む。答えは沈黙だがオールディにはその意図が見え見えだった。
「分かりやすいなジョニー。あれ程怒り心頭だった君がここまで僕に攻撃を仕掛けてこないのは時間遡行者を待っているんだろ?それか亜人達の避難が完了するまでの時間稼ぎ。君は僕に勝てないこと位理解しているようだからな…それなのに君は…100%僕に靡かないってことぐらい…僕が一番知っているからな」
オールディは腰から銃を取り出してジョニーの額に標準を合わせる。躊躇いなく銃弾は空中を飛び、ジョニーの身体に突き刺さる。そんな事にものともせず大きく拳を振り上げて地底へ沈める勢いでその鉄拳を頭蓋にめり込ませる。だが、めり込んだ拳に手ごたえはなく、これが能力によって体に取り込まれただけである事はわかっている。
「全く君は学習しないなジョニー!僕に銃弾も炎も通じないって分かっているなら拳だって効かないことぐらいわかるもんだろ?」
ジョニーはオールディの持つ銃を叩き落とすことには成功したがそれと引き換えに受けた銃弾による傷口は余りにも釣り合っていない。オールディは一旦距離を取り、まるで空気を握るかのように拳の中に空間をつくり、力を加えている。
「テメェに弱点がある事は分かってンだ。」
「なら突けばいいだろ?やれよジョニー」
ジョニーは人差し指をオールディに向けて追いつめる様にゆっくりと距離を詰める。そして目の前に立ち、懲りずに大きく腕を振りかぶる。だがその腕がオールディの顔面に落ちてくることはなく、天井の僅かな突起にジョニーは掴まる。2mの巨体は腕力だけで宙に浮き、体を縮める。
これから行う攻撃を理解する間もなくジョニーは勢いよくオールディの顔面に足が乗り、首がぶっ飛ぶ勢いで奥の壁に叩きつけられる。本来ならば私物化されて威力は無に還る筈だった。だがそれが出来なかったのは、オールディが取り込めない理由があったからだ。
「あの時投げた椅子をよォ…必死に避ける理由が分からなかったぜェ。銃弾も火炎も私物化して無力化出来るっつゥのによォ…あんな下らねェ攻撃を避ける理由が謎だった。だが簡単な事だった…避けたのはそれが弱点だから…もしくは弱点に暴かれるって事に繋がる危険な攻撃だったからだ。だがよォォ!!テメェーが必死に避けて秘密にしようとした弱点を!!違和感に暴かれてんだぜオールディ!!!」
顔面を抉られ頬が破けたオールディは崩れた壁から唸りながら出て来る。
「勝った気になるのは気が早いぜジョニィィ…知ったところでお前が立ったのはようやくスタートラインだ…だが!お前がそれ以上進むことはない!」
皮一枚つながっている垂れ揺れる頬を千切り、まるで見せつけるかのように頬を触る。すると歯茎が見える程抉れた穴を覆うように皮膚は伸び、傷は修復される。
「忘れたのか?僕が『深淵化』を持っている事に加え…『覇者の証』も所持している事をな!」




