第二章 76 妄想仮想のアンダーワールド 2
多分誤字脱字ないです。保証はしませんが。
「随分帰りが遅かったんだなアース。」
屋敷の扉を開くとステンレスが壁に寄り掛かってアースの帰宅を待っていたようだった。アースは首の関節を鳴らしてから答える。
「作戦を再度打ち合わせしてた。ミーナと警備兵と合わせてな。それよりお前に話しておきたいことがある。」
「…?いつでもいいぞ。サイレントで覆ってある。」
「…俺の変化についてだ」
「変化?」
ステンレスがそう問うとアースは腕に力を入れて握り拳をつくり、手の甲を見せる。力を入れて時間が経つにつれて『1』の数字が浮き出てくる。
「腕がどうかしたのか?」
「なるほど、お前には見えないのか。ここには数字の1が浮き上がっている。気づいたのは東の王都へ向かっている最中だったから何時この文字が浮き上がるようになったのかは定かではないが、恐らく前回俺が時を戻してからだと思う。」
「どうしてそう思う?それが何なのか心当たりがあるのか?」
[もしかしてお前…このことを予測してたから態々自殺を選んだのか…!?]
「いいや、まったくの偶然だよ。個人的にはボルボロスと戦っておけばよかったと思ってる。」
[…そうか。]
「…は?」
「いや、なんでもない。独り言だ。まぁ多分これは俺の能力が発言した印なんだと思う。そしてこの手の甲の数字は使用制限回数。」
「何故そう断言できる。」
「断言できるさ、もっと正確に言えば時を戻している最中だな。俺の時間遡行は激痛が伴うんだが…その激痛に蝕まれている最中にこの手の甲と同じく『1』度だけ、苦痛とは程遠いような真っ白な空間に転移した。その空間にいる間は一切痛みも熱も感じなかった。幻だと思っていたその数分間こそが俺の発現した能力だ。」
「そうか」
「こうして能力を持ってみると謎なんだがお前らはこう…能力を発動する時に何か能力の名前とかは叫ばないのか?それとも名付けてないのか?」
「…あまり戦う機会のない者は名付けているんじゃないか?戦闘中にそんな余裕がないこと位わかりそうなもんだがな。」
「確かにそうだが…叫ばずとも名前くらいはあるんじゃないのか」
「俺は多機能な能力だから一概にこれとは決めてない。能力は能力と呼んでいるしそれ以上何かつけたそうと思ったこともないな。そこまで名前にこだわるのならお前は考えたのだろう?」
「ああ、勿論考えたさ。能力が発動すると俺は世界の理から外れてこの世で起こる全ての現象が俺を蝕もうとすることは出来ず、俺の存在自体を隔離してしまう、そしてその数分間は俺もこの世界に干渉できない、名付けるなら―――――――。」
『―――――世界不干渉、というのが相応しいだろう?』
目を覚ますとアースは白い部屋にただ立っていた。この白い部屋のサイズは何処までも続いていて終わりが無いようにも思える。殆どこの能力については確信があった。ただ本当に幻であった可能性もあるので多少は不安もあったが…。
「それで、お前は誰なんだ?」
前回は間違いなくアース、自分自身だった。だが、今回は全く知らない顔のした男が俯いて椅子に座っている。
「アビス。」
男は誰かを尋ねられ、その言葉につられるようにゆっくりと顔を上げてアースの顔を見て、その一言だけ話すとまた俯いてしまう。
そうか、深淵か。深淵化という現象の人型化か?俺の中に潜む生を望むが故の現象とここでは話すことが出来るのか?
「………セレシア……リリア………」
「セレシア?リリア?それは昔の俺の知り合いか?」
「全部混濁していく…リリア…お前だけは……」
通じていないな。こいつの発現も意味不明で……いいや、俺は知っている。セレシアもアビスという名も…俺は知っているんだ…夢で見た…あの夢はまごうことなき現実なのだ。俺の記憶の奥底に眠る…現実。
「教えてくれ…アビス…」
アースが震えた右腕をアビスに突き出すと世界を包む白い空間は色づいてゆく。全身の傷から血が噴き出る感覚と共にアビスは消滅し、オークション会場の1階のとある部屋に景色は移り変わる。
すっかり煙幕は晴れ、複数人いたティディは消えてその場に存在するのは血を流し、呼吸を荒くするアースと壁の穴の前に這うティディと爆発が起こったであろう部屋の中心に立つ服はボロボロだが無傷のティディの3人だけだった。
「どんなカラクリを使ったら爆心地で無傷に突っ立ってられんだよ…!」
「それは私が聞きたいな、どんな方法でこの爆発から逃れたというのか。」
ティディはアースから距離を離さずその場で拳を叩き込もうとする。だが振った拳は避けられその腕に合わせてアースは顔面にカウンターを入れて這うティディの元に殴り飛ばす。
「なるほど、存在はしているようだな。殴れる、そして手ごたえもある。」
殴り飛ばされてもあのティディは全くの無傷のようだ。ティディはゆっくりと起き上がると同時に這っていたボロボロだったティディも瞬時に全身が回復したようでアースの名前を憎悪に満ちた声で呼ぶと突っ走ろうと足を前に出すが片方のティディがそれを止める。そして耳元で何かを囁くと大人しく壁の穴の奥へ隠れて姿を消す。
その様子を見ていたアースは嘲るように笑った。
「なるほど、手探りか。お前はティディとは全くの別の生物だな。そして同時にこの能力を操る本体でもある訳か。」
「ほう。果たしてお前は暴けるかな?」
「大体は把握しているよ、観察眼は結構いいんだぜ俺はよ」
「果たして、お前は無敵のこの私の猛攻に暴くまでに耐えることが出来るかな?」
「俺の大体ってのはもう9割暴けてるって事だぜ間抜け。」
「間抜けはお前じゃないかね?」
ティディがそういいポケットに両手を突っ込み、ほくそ笑むと自身の後ろから2人、アースを囲む3方向から3人ずつ銃を持ったティディが現れる。
「もう手榴弾は使わない、自らにも危害が及ぶものを使わなければいい。それだけだ」




