第二章 71 死屍累々
誤字脱字あるかも
寂しく一人で風呂に入り、またいつの間にか替えの着替えが用意されており、それを着て自室へ向かう。そしてベッドに横になるとすぐ眠りについてしまった。
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荒れに荒れた荒野の上で男が二人立っている。片方は俺の良く知っている筈の人、もう一人は顔に靄が掛かってよく思い出せない。見渡す限り四方は死体で溢れている、此処が戦場の真ん中で戦争のさなかである事はすぐ感じ取れた。
だが膝を付き、顔のない男を睨みながら叫ぶ声が聞こえることもなく感情だけが伝わってくる。悲しみ、怒り、そして悔しさ。音の無いこの世界で唯一聞こえた声が顔の見えない男だった。
「変えたかったのだろう」
一体その言葉が何を意味するかは到底理解できない。だがその言葉を聞くと片方の男は更に顔をぐちゃぐちゃにして叫ぶ。
「運命とは残酷なものだ。これ以上何度繰り返したって未来は決して変わる事はない」
男からは冷たい感情が零れている。まるで他人事のような台詞を淡々と続けている。
「俺は彼女を救いたかった。でも俺から向ける愛と彼女が俺に向けた愛は釣り合ってなどいなかった。結局のところ想いは一方通行で…空ぶっていただけなんだ。」
顔の見えない男の顔面から液体が滴るのが僅かに分かる。それと共に溢れ出る混沌の感情が液体の正体をあらわしている。
「存在意義だった。だから俺は復讐を誓ったんだ。けどそれも大失敗。グラウズも俺なんだ。笑えるだろう?俺もお前も『キルライフ』に振り回されてんだよ」
男の声が震えているのが俺には伝わってくる。
「もう全てに疲れたんだ。キルライフにも…お前もきっとそうなんだろう?」
男が彼の頭に手を翳すと瞬間世界は暗黒に包まれる。
「地核から上を見上げて彼女は言った、「地獄は此処より上に在る」と。」
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勢いよく瞼を開いて飛び起きた。呼吸音は激しく、ビッシリと全身に汗をかいている。辺りは暗く、時計の針は朝の四時半頃を指していた。あれが夢である事はわかっているのだが心臓の鼓動が収まらない。
俺は…膝を付いて憎悪を声帯に乗せ叫び続けていた男を知っている。そしてもう一人、顔に靄がかかっていた男の声も知っている。俺は二人ともよく知っている。そして男の言う『彼女』も知っているんだ。
「なん…なんだよ…キルライフって…クソッ…」
俺は無意識の過去の自分と向き合うことを恐れていたのかもしれない。俺は何度も自分の過去を知ろうとする努力を怠っていた。知れる機会は沢山あったのに得体の知れなさが怖くて触れられなかった。
アースは再びベッドに横になり、ため息を吐く。
「聞こえてるんだろ、空欄」
[勿論、聞こえてるさ]
「なら、答えて教えてくれ。キルライフってなんなんだ。」
[もうルザがキルライフと名乗っているのは知っているな?]
「ああ」
[そのキルライフは元々ある女が名乗っていた名だ。私も殆ど記憶が抜け落ちていて部分部分でしか話せないが…]
「ある女?」
[キープ・キルライフという女だ。]
空欄からその名前を聞かされるとアースは胸が締め付けられるような感覚に陥った。そしてそのまま頭を締め付けられる感覚に襲われ耳鳴りが発生し、激痛に悶え叫ぶ。そしてその痛みが発生している間、頭の中に声が響いてくる。その間アースは頭を押さえ、壁に打ち続ける。
『ねぇ私を助けてくれたのは…私が約束を引き継いでいたからなの?』
『いいや、君が困っていたから助けたんだよ』
『嘘よ。あなたはあの人しか見てない。カメリア様が居なくなってしまった日からあなたはずっと幻影を追いかけてるのよ!』
『違う、本当に…助けたかったから…助けたんだ。』
『コール、お前に全てを託す。お前がこの物語を続けるんだ、途絶えさせずに終わらせるな。』
『きっと数十年、数百年、数千年先の未来でも…待っていてくださいね…そして忘れないでください俺の名前を…』
『コール・スモール、お前のことは絶対に忘れない』
やがて流れ込んできた会話が止まると激痛は止み、静けさが戻った。だがアースの叫び声に誰も駆け付けないわけがなく、ステラが部屋を乱暴に開けて入ってくる。
「どうしたの!?アース…!?」
アースをぐったりと虚ろな目で壁を見ている。その壁は破壊され、破壊された場所から発生した突起を頭に突き刺して気を失っていた。額から流れる血が布団を赤く染め上げているそんな状況を見てステラは急いでアースに駆け寄っていった。
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静かに瞼を開くと光が入ってくる。あまりの眩しさにアースは目を細める。僅かな痛みを額に感じる。ゆっくりと体を起こすとここは何となく医務室である事が分かる。そして横には座りながら寝ているミラの姿を発見する。
「気を失ってたのか…」
入り口付近の壁に掛かってある時計を覗くと昼の11時を越した辺りであることも分かった。
『キープ・キルライフ』という名前を聞いただけであんなに体がおかしくなったというのに、今は何度その言葉を脳内で繰り返してもなんの感情も抱くことはない。なら何故俺はあんなにも狂乱したのだろう。余りの痛みの激しさで聞こえてきた会話もチグハグだ。
「結局…何一つ真実は知れないのか……いるか?空欄。」
アースは空欄の名前を呼ぶが返事はない。ステンレス何処か遠くへ行っているのだろうか。感知の反応域が半径100mという言葉が本当ならば、少なくとも屋敷の中にはいない。
そうしてキョロキョロしているところに一人のステラが入ってくる。
「アース…。今朝…いったい何があったの?」
今まで『キルライフ』について人に聞くことをしなかったが…聞いてみたいという好奇心がある。だが、同時にまた半狂乱になってしまうのではないかという恐怖心もある。
「ステラ…き、…キルライフって言葉に心当たりがあるか…?」
「Killlife?心当たりは別にないわ」
「そう…か。」
アースは布団から起き上がり、少しほっとしたような表情をした。アースはその一瞬の感情に、何処か違和感を抱いた。




